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可愛い彼女と夏祭り

27話

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 もうすぐ終わっちゃう。
 凄く短い時間。一時間がこんなに短いって感じたのは今日が初めて。
 なんでこんな早く時間が経っちゃうの? まだ終わってほしくないよ。
 そんな事を思っても、願っても時間は今も過ぎていく。
 ラストを飾る無数の花火が打ち上げられた。
 勿論その無数の花火も一瞬で咲いて散った。
 
「終わっちゃったね」

 私の口から出たその言葉は凄く弱々しかった。
 これでこの特別な日は終わっちゃう。
 それが嫌だって気持ちが声に表れちゃった。
 
「終わっちゃったね」

 さっきまで花火の咲く音が響いていたのに、今は虫の鳴き声だけが聞こえる。

「よし! 行こうか」

 蒼汰は立ち上がって私に手を差し出してきた。
 私は「うん」と言って蒼汰の手を握った。
 男の子の手だってわかる蒼汰の手が好き。
 
「あ……」

 私が付けていた花の形をした髪飾りがアスファルトに落ちてしまった。
 
「ごめんね、ちょっと待って」

 私は蒼汰と繋いでいた手を離し、しゃがんで髪飾りを拾った。
 
「え?」

 髪飾りを拾って立ち上がると蒼汰の姿が無かった。
 
「ッ~~~~~~~~~」

 後ろから誰かに私の肩を触られて、私は力が抜けてその場で崩れた。
 本当に力が入らない。体がびくびくしていう事を聞いてくれない。
 もう蒼汰のせいってことは分かる。
 後ろを振り返るとやはり蒼汰が居た。

「ご、ごめん。少し驚かせようと思っただけなんだけど……」
「そ、蒼汰のばか」

 蒼汰はさっきみたいに私に手を差し出してきた。
 
「本当にごめん」
「私がこういうの苦手って知ってるでしょ!」

 蒼汰は私が暗いのとホラーと驚かされるのが苦手ってことは絶対知ってる。
 この三つが本当に涙が出るほど苦手だ。
 たった今も泣きそう。

「ごめん。ここまでだとは思ってなくて……」

 蒼汰は私から髪飾りを取り、私の髪につけながら言った。
 
「歩ける?」
「まだ歩けない。蒼汰のせいだからね!」

 私は涙でで生まれた小鹿のように震える足で立ち上がる。
 勿論蒼汰の手を借りて。
 
「ねぇ、お詫びとして今日は私の家に泊まって」
「…………え?」
「だってそうでしょ⁉ 蒼汰のせいで私がこんな風になっちゃったんだから」
「わ、わかりました」

 怖い思いをしたのは嫌だったけど、今日一日ずっと蒼汰と居れるならさっきの事は許してあげることにした。
 今日は一日蒼汰と一緒に居たい。それと一人でこんな暗い外を歩きたくない。怖いもん!だから私は蒼汰を家に誘った。
 
「い、行こう」

 私の脚はまだ震えてる状態だけど、蒼汰の腕にしがみ付きながらならなんとか歩ける。
 これ以上遅く帰るわけにはいかない。
 
「ねぇ、蒼汰。次さっきみたいな事したら怒るからね」
「は、はい……」
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