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何故両陛下がこんなにも必死なのか、どうしても分からない。
(誰なら分かるかしら?)
キョロキョロと見回すと後ろで「相変わらずお優しい…」と感動している大神官様がいたので聞いてみることにした。
「あぁ、過去に聖女を怒らせて滅んだ国があるからですよ」
とサラッと言ったけど中々の理由が飛び出す。
「え!?滅んだ、ですか?!」
「一番最近なのは精霊姫様の話ですよ。その時は滅ぶまでは行きませんでしたけど…もう今の若い子は知らないんですねぇ」
「!? むしろ若い子は知らないって言えるくらい最近なんですか!?」
聞けば、50年近く前に精霊姫と自国の王子の結婚を目論んだ王様が精霊姫の恋人を襲撃したのだそうだ。
恋人は一命は取り止めたものの大怪我を負い、当然精霊姫は大激怒。
結果、国単位で精霊の加護が消え、国民たちは皆魔法を使えなくなってしまい大変な不便を強いられたという。
困った国民たちによって主犯と判明した王様と王太子が処刑され、やっと精霊の怒りが消えたのか元に戻ったそうだ。
ちなみに妖精の加護が無くなった国は作物が実らなくなり、神の加護が無くなった国はとにかく天災に見舞われ滅んだという…。
聖女、怖っ!!!
しかし逆に聖女が幸福を感じて暮らしていると加護が増し恩恵が受けられるのだそうだ。
妖精は五穀豊穣、精霊は魔力の増力、神は平穏繁栄。
だから聖女はどの国も大切に扱い、なるべく滞在して貰おうとするらしい。
特に神の聖女、巫女姫は恩恵が大きい。
その逆も然り、ではあるが…。
「では…ロレアル国の収穫高でお母様の存在が分からなかったのですか?」
「それが…ロレアル国は一度大きく収穫量が減った年がありましたがその後は大きく減らなかったのです。なのでたまたま不作だったのだろうと教会関係者も思ってしまいました…。妖精の力なら不作が続きますから…」
申し訳なさそうに大神官様は俯かれた。
が、私と目が合うとフッと微笑まれ
「心配そうなお顔は母君にそっくりですね」
と言われてしまった。
嬉しいけど少し恥ずかしい。
「シャナファ様もそうですが…聖女の力を持つ方はその力に相応しい人格者が多いのです。拐われた事から始まった結婚だったようですが大切にされ怒りや悲しみが消えていたのですね」
「いえ、母は愛人の立場で物凄く父を嫌っていますよ」
「なんと…」
「物凄くポジティブというか…メンタルの強い人なので悲観してなかっただけだと思います…」
「あぁ…シャナファ様ですからね…」
お母様だから、と言われるくらいにはやはり母のメンタルは強いらしい。
いや、何も考えてないだけかもだけど。
ただ、私は不作の力に心当たりがあった。
侯爵領は近年不毛の地と言われていたからだ。
後継者教育で学んだ領地の収穫高を思い出す。
元々大した収穫量じゃなかったので更に土地が痩せてしまったのだろうとか、工業が主な産業だから川が汚染されたとか言われていたけど…穀倉地帯とかだったらお母様は見つけて貰えてたのかもしれない。
しかも昔から耕作地が少ない領だったのに17年前の国全体の大不作を期に農家を止めてしまった家も沢山あったのだ。
そりゃ影響も少なかっただろう…。
大神官様にそのことを伝えると頭を抱えてしまった。
「そんな小規模で…ロレアル国王に後ほど確認します…」
侯爵領だからそこそこ広いけど国全体に大きな影響を及ぼせる力を思えば小規模な影響だったのだろう。
少し申し訳ない気さえしてきた。
「シェリー!ちょっと相談のって欲しいー」
お母様に呼ばれたので私は大神官様にお礼を伝えお母様の元へと戻る。
そんな私を縋るように見るのは両陛下だ。
お母様…両陛下に何を言って私を呼んだのよ。
「あのね、シェリーはお父様が罰せられるのどう思う?」
「自業自得だと思う」
考えるまでもなく答える。
うーん、と少し考えてお母様が更に聞いてきた。
「悲しくなったり辛く思ったりとかない?」
「全くないわ。何故私が悲しむと思ったの?」
「一応父親だし…それなりに交流もあったでしょ?」
「部屋の鍵なんか扉や壁を壊せばどうとでも出来る、平民の母親が大事なら言うことを聞けって言う父親を慕えるほど私は心が広くないわ」
「まっ…(怒)」
明らかに怒りをあらわにしたお母様の様子に「ひいっ」と小さな悲鳴が聞こえる。
声のした先には顔面蒼白な両陛下…少しお可哀想だ。
「シャナファ様はどの様なお暮らしだったかお伺いしても宜しいですか?」
怒るお母様に声をかけたのは先程まで私と話していた大神官様だった。
(誰なら分かるかしら?)
キョロキョロと見回すと後ろで「相変わらずお優しい…」と感動している大神官様がいたので聞いてみることにした。
「あぁ、過去に聖女を怒らせて滅んだ国があるからですよ」
とサラッと言ったけど中々の理由が飛び出す。
「え!?滅んだ、ですか?!」
「一番最近なのは精霊姫様の話ですよ。その時は滅ぶまでは行きませんでしたけど…もう今の若い子は知らないんですねぇ」
「!? むしろ若い子は知らないって言えるくらい最近なんですか!?」
聞けば、50年近く前に精霊姫と自国の王子の結婚を目論んだ王様が精霊姫の恋人を襲撃したのだそうだ。
恋人は一命は取り止めたものの大怪我を負い、当然精霊姫は大激怒。
結果、国単位で精霊の加護が消え、国民たちは皆魔法を使えなくなってしまい大変な不便を強いられたという。
困った国民たちによって主犯と判明した王様と王太子が処刑され、やっと精霊の怒りが消えたのか元に戻ったそうだ。
ちなみに妖精の加護が無くなった国は作物が実らなくなり、神の加護が無くなった国はとにかく天災に見舞われ滅んだという…。
聖女、怖っ!!!
しかし逆に聖女が幸福を感じて暮らしていると加護が増し恩恵が受けられるのだそうだ。
妖精は五穀豊穣、精霊は魔力の増力、神は平穏繁栄。
だから聖女はどの国も大切に扱い、なるべく滞在して貰おうとするらしい。
特に神の聖女、巫女姫は恩恵が大きい。
その逆も然り、ではあるが…。
「では…ロレアル国の収穫高でお母様の存在が分からなかったのですか?」
「それが…ロレアル国は一度大きく収穫量が減った年がありましたがその後は大きく減らなかったのです。なのでたまたま不作だったのだろうと教会関係者も思ってしまいました…。妖精の力なら不作が続きますから…」
申し訳なさそうに大神官様は俯かれた。
が、私と目が合うとフッと微笑まれ
「心配そうなお顔は母君にそっくりですね」
と言われてしまった。
嬉しいけど少し恥ずかしい。
「シャナファ様もそうですが…聖女の力を持つ方はその力に相応しい人格者が多いのです。拐われた事から始まった結婚だったようですが大切にされ怒りや悲しみが消えていたのですね」
「いえ、母は愛人の立場で物凄く父を嫌っていますよ」
「なんと…」
「物凄くポジティブというか…メンタルの強い人なので悲観してなかっただけだと思います…」
「あぁ…シャナファ様ですからね…」
お母様だから、と言われるくらいにはやはり母のメンタルは強いらしい。
いや、何も考えてないだけかもだけど。
ただ、私は不作の力に心当たりがあった。
侯爵領は近年不毛の地と言われていたからだ。
後継者教育で学んだ領地の収穫高を思い出す。
元々大した収穫量じゃなかったので更に土地が痩せてしまったのだろうとか、工業が主な産業だから川が汚染されたとか言われていたけど…穀倉地帯とかだったらお母様は見つけて貰えてたのかもしれない。
しかも昔から耕作地が少ない領だったのに17年前の国全体の大不作を期に農家を止めてしまった家も沢山あったのだ。
そりゃ影響も少なかっただろう…。
大神官様にそのことを伝えると頭を抱えてしまった。
「そんな小規模で…ロレアル国王に後ほど確認します…」
侯爵領だからそこそこ広いけど国全体に大きな影響を及ぼせる力を思えば小規模な影響だったのだろう。
少し申し訳ない気さえしてきた。
「シェリー!ちょっと相談のって欲しいー」
お母様に呼ばれたので私は大神官様にお礼を伝えお母様の元へと戻る。
そんな私を縋るように見るのは両陛下だ。
お母様…両陛下に何を言って私を呼んだのよ。
「あのね、シェリーはお父様が罰せられるのどう思う?」
「自業自得だと思う」
考えるまでもなく答える。
うーん、と少し考えてお母様が更に聞いてきた。
「悲しくなったり辛く思ったりとかない?」
「全くないわ。何故私が悲しむと思ったの?」
「一応父親だし…それなりに交流もあったでしょ?」
「部屋の鍵なんか扉や壁を壊せばどうとでも出来る、平民の母親が大事なら言うことを聞けって言う父親を慕えるほど私は心が広くないわ」
「まっ…(怒)」
明らかに怒りをあらわにしたお母様の様子に「ひいっ」と小さな悲鳴が聞こえる。
声のした先には顔面蒼白な両陛下…少しお可哀想だ。
「シャナファ様はどの様なお暮らしだったかお伺いしても宜しいですか?」
怒るお母様に声をかけたのは先程まで私と話していた大神官様だった。
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