7 / 11
7
しおりを挟む
ただならぬレリアンの様子に思わず立ち止まる。
戸惑いを隠しきれていないセドナーがレリアンに話しかけているが耳に入っていない様にディーダが警戒を強めた。
低い声だったのでルフィナとシエルナード王子には聞こえていなかったのだろう。
私たちの様子に先に気付き、レリアンの存在と様子に気付いた時には遅かった。
「ひどいわっ!ルフィナ、ひどい!」
掴みかかる勢いでルフィナに攻め寄る。
「あなたにはセドナーがいるじゃない!私がシェル様を慕っているのを知っていたのに!シェル様も私に優しくしてくれていたのを知っていたのに!財力を盾に婚約者になるなんて酷すぎるわ!」
名指しされたセドナーが思わずといった調子で「えぇ!?」と情けない声を上げる。
「なんで私の大切なモノをいつも奪うの!?ひどいわっ!!!」
今日は涙をポロポロと零しながらルフィナを攻め立てている。
いつも以上の剣幕にいつも死んだ目でやり過ごすルフィナも戸惑いを隠せない。
「何度も言うけど私とセドナーはただの従兄妹よ?それに私とシェルは互いの希望で婚約したの」
珍しくルフィナが公衆の面前で大きな声を出し反論するがレリアンは聞いちゃいない。
流石のセドナーも今日ばかりはレリアンに引かせようと宥めている。
その喚きに苛立った声を上げたのはシエルナード王子だった。
「レリアン嬢!私が妃に望むのはルフィナだ!メロウェイ家の財力も、血縁関係も関係ない!やっと婚約出来たのに水を差さないでくれ!」
シェルだった頃いつも温厚で優しく、声を荒げて怒ったところなど見たことがない。
それは抑えていたとかでなく、本当に穏やかな性格だからというのは親しかった私達には分かる。
そんな初めてみるはずの怒りの声にレリアンは庇護欲を誘う見た目を全力で活かして悲劇のヒロイン宜しくシエルナード王子によろけつつしなだれるよう抱きつきにいった。
空気を読めない…いや、読まないでの行動にしてもメンタルすごいな!
「可哀想なシェル様…そう言えと伯爵家になったメロウェイ家に圧力をかけられているのね…」
ウルウルとした垂れ目からホロホロと流れる涙は、レリアンだけを見れば儚くキレイで、可哀想な悲恋のヒロインそのものだ。
しかしシエルナード王子の表情は怒り一色。
肩にある手はどう解釈しようにも抱き止めるというより拒否で掴んでるようにしか見えない。
「そもそも私は君に優しくした覚えはない」
怒りを抑えているからか絞り出すようにシエルナード王子がレリアンを睨みながら言い渡した。
が、それを聞いてあろうことかレリアンはシエルナード王子に抱きついたのだ。
「そんな苦しそうな声で…あぁ…シェル…」
レリアンの返しにシエルナード王子の表情が引き攣ったその瞬間、横にいたディーダが動いた。
「婚約者が発表されたばかりの殿下に勝手に抱きつくなど充分に不敬罪が成立するな!」
レリアンをシエルナード王子から引き剥がし、腕を後ろ手に捻り跪かせるまであっという間だった。
「遅いよディーダ…」
「いやいや、肩掴んで待ったをかけるとか思わねーだろー」
やれやれといった表情になったシエルナード王子が「ふう」と息をつく。
「だってこれくらい明白じゃ無いと一応伯爵令嬢だから言い逃れされたら困るだろ?ちゃんと捕まえられるようにしないとさっ」
ニカッと笑うディーダの言葉遣いは4人で遊びに出掛けていた頃のままだ。
なんだか少しホッとした気持ちを甲高い声がかき消す。
「なんで!?どうしてなの?ルフィナの差し金ね!ひどいわ!ルフィナ、ひど過ぎる!」
そうルフィナに矛先を変えたレリアンの前に、静かにルフィナが進み出た。
戸惑いを隠しきれていないセドナーがレリアンに話しかけているが耳に入っていない様にディーダが警戒を強めた。
低い声だったのでルフィナとシエルナード王子には聞こえていなかったのだろう。
私たちの様子に先に気付き、レリアンの存在と様子に気付いた時には遅かった。
「ひどいわっ!ルフィナ、ひどい!」
掴みかかる勢いでルフィナに攻め寄る。
「あなたにはセドナーがいるじゃない!私がシェル様を慕っているのを知っていたのに!シェル様も私に優しくしてくれていたのを知っていたのに!財力を盾に婚約者になるなんて酷すぎるわ!」
名指しされたセドナーが思わずといった調子で「えぇ!?」と情けない声を上げる。
「なんで私の大切なモノをいつも奪うの!?ひどいわっ!!!」
今日は涙をポロポロと零しながらルフィナを攻め立てている。
いつも以上の剣幕にいつも死んだ目でやり過ごすルフィナも戸惑いを隠せない。
「何度も言うけど私とセドナーはただの従兄妹よ?それに私とシェルは互いの希望で婚約したの」
珍しくルフィナが公衆の面前で大きな声を出し反論するがレリアンは聞いちゃいない。
流石のセドナーも今日ばかりはレリアンに引かせようと宥めている。
その喚きに苛立った声を上げたのはシエルナード王子だった。
「レリアン嬢!私が妃に望むのはルフィナだ!メロウェイ家の財力も、血縁関係も関係ない!やっと婚約出来たのに水を差さないでくれ!」
シェルだった頃いつも温厚で優しく、声を荒げて怒ったところなど見たことがない。
それは抑えていたとかでなく、本当に穏やかな性格だからというのは親しかった私達には分かる。
そんな初めてみるはずの怒りの声にレリアンは庇護欲を誘う見た目を全力で活かして悲劇のヒロイン宜しくシエルナード王子によろけつつしなだれるよう抱きつきにいった。
空気を読めない…いや、読まないでの行動にしてもメンタルすごいな!
「可哀想なシェル様…そう言えと伯爵家になったメロウェイ家に圧力をかけられているのね…」
ウルウルとした垂れ目からホロホロと流れる涙は、レリアンだけを見れば儚くキレイで、可哀想な悲恋のヒロインそのものだ。
しかしシエルナード王子の表情は怒り一色。
肩にある手はどう解釈しようにも抱き止めるというより拒否で掴んでるようにしか見えない。
「そもそも私は君に優しくした覚えはない」
怒りを抑えているからか絞り出すようにシエルナード王子がレリアンを睨みながら言い渡した。
が、それを聞いてあろうことかレリアンはシエルナード王子に抱きついたのだ。
「そんな苦しそうな声で…あぁ…シェル…」
レリアンの返しにシエルナード王子の表情が引き攣ったその瞬間、横にいたディーダが動いた。
「婚約者が発表されたばかりの殿下に勝手に抱きつくなど充分に不敬罪が成立するな!」
レリアンをシエルナード王子から引き剥がし、腕を後ろ手に捻り跪かせるまであっという間だった。
「遅いよディーダ…」
「いやいや、肩掴んで待ったをかけるとか思わねーだろー」
やれやれといった表情になったシエルナード王子が「ふう」と息をつく。
「だってこれくらい明白じゃ無いと一応伯爵令嬢だから言い逃れされたら困るだろ?ちゃんと捕まえられるようにしないとさっ」
ニカッと笑うディーダの言葉遣いは4人で遊びに出掛けていた頃のままだ。
なんだか少しホッとした気持ちを甲高い声がかき消す。
「なんで!?どうしてなの?ルフィナの差し金ね!ひどいわ!ルフィナ、ひど過ぎる!」
そうルフィナに矛先を変えたレリアンの前に、静かにルフィナが進み出た。
111
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

全部、支払っていただきますわ
あくの
恋愛
第三王子エルネストに婚約破棄を宣言された伯爵令嬢リタ。王家から衆人環視の中での婚約破棄宣言や一方的な断罪に対して相応の慰謝料が払われた。
一息ついたリタは第三王子と共に自分を断罪した男爵令嬢ロミーにも慰謝料を請求する…
※設定ゆるふわです。雰囲気です。
義妹からの嫌がらせで悪役令嬢に仕立て上げられそうになった挙句、旦那からモラハラ受けたのでブチギレます。~姫鬼神の夫婦改善&王国再建記~
しろいるか
恋愛
隣国との関係性を高めるために結婚した私と旦那。最初はうまくいってたけど、義妹の身を弁えない異常な金遣いの荒さとワガママのせいで、王国が存亡の危機に瀕してしまう。なんとかしようと諌めようとすると、それをよしとしない義妹の嫌がらせがはじまり、私は悪人に。そしてとうとう、旦那までモラハラしてくるようになってしまった。
精神的に追い詰められていた私に、また旦那のモラハラが始まる。もう、我慢の限界!
「旦那様。今から殴ります」
私はそう宣言した――!
これは、夫婦の絆を力で取り戻すと同時に、傾いた王国をたてなおすやり直しの痛快物語である。

何故恋愛結婚だけが幸せだと思うのか理解できませんわ
章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のファラーシャは男爵家庶子のラーケサに婚約者カティーブとの婚約を解消するように迫られる。
理由はカティーブとラーケサは愛し合っており、愛し合っている二人が結ばれるのは当然で、カティーブとラーケサが結婚しラーケサが侯爵夫人となるのが正しいことだからとのこと。
しかし、ファラーシャにはその主張が全く理解できなかった。ついでにカティーブもラーケサの主張が理解できなかった。
結婚とは一種の事業であると考える高位貴族と、結婚は恋愛の終着点と考える平民との認識の相違のお話。
拙作『法律の多い魔導王国』と同じカヌーン魔導王国の話。法律関係何でもアリなカヌーン王国便利で使い勝手がいい(笑)。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。


【完結】運命の愛を見つけたから婚約破棄するというけれど、それは平民の振りした私ですから
里海慧
恋愛
「俺は運命の愛を知った。だからお前とは婚約破棄する」
侯爵家の跡取りとして日々研鑽を積むフィオーナは三ヶ月ぶりに会った婚約者から婚約破棄を告げられる。
しかしその運命の相手とは、平民イオナに扮したフィオーナ自身だった。
呆れて何も言えないまま、婚約破棄を了承したフィオーナは後継教育に力を入れる。
実地訓練として侯爵家が運営する高級レストランや宝石店で従業員イオナとして働き、店舗は右肩上がりに売り上げが伸びていく。
ところがイオナに元婚約者が詰め寄り、営業妨害で叩き出そうとした時に助けてくれたのはお客様としてレストランにきていた男性、フェリスだった。
今度は宝石店でフェリスから想い人に贈る指輪のオーダーを頼まれて、痛む心に戸惑うフィオーナ。
ところがその指輪は、フィオーナに贈られ求婚される。
元婚約者はイオナのために婚約破棄したのに相手にされず、墓穴を掘っていくのだった。
※全7話で完結です。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる