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今日は初めての2クラス合同演習の日だ。
しかもいつもの制服でなくドレスを着ての登校が許されている。
理由は学園のホールでダンスをするためだ。
もちろん普段の練習は制服のまま各クラス単位で練習している。
しかし実際に社交の場でダンスを踊る時、女性はドレスにヒールだし、男性は何組もの人が踊る場に合わせてエスコートすることになる。
どちらも慣れてないと中々に難しいので定期的に合同演習を行い慣れていくのだ。
夏の終わりに入学し、もうすっかり秋。冬の長期休暇前には学園全体での交流パーティという名の社交の練習があるのでまずは交流パーティで踊れる程度に慣れるのが目標だ。
「では、男性は女性をパートナーに誘うところから、女性は良いと思える男性以外を断るところから始めましょう。婚約者のいる方は練習で声かけしても最後は婚約者とペアになってね」
先生の声かけで皆が若干浮足立つ。
誰を誘うか、誰に誘われたいか皆がお互いを見回し移動を始めた。
私は…近くにいたからか声をかけてくれた人を断ってディーダを待つ。
よく見れば彼はたしか婚約者がいる。
ディーダとの婚約話が出てる私だから声をかけたのだろう。
ディーダの姿は近くにない。
でも…まだ婚約予定だけどきっと来てくれる…よね?
ルフィナは…熱心に誘われまくっているが誰を選ぶのだろう。
主に子爵家や男爵家の次男以降の者たちが次々に声をかけては撃沈していく。
ルフィナには弟がいるので家は継げないがメロウェイ家がしている事業で役職に就ければ将来が安泰だからだろう。
ペア組から社交の練習は始まっているのだ。
「すみません、遅れました」
色々な思惑と不慣れな交流が交錯するホールに2人の男性が入ってきた。
ディーダとシェルだ。
2人は先生から説明を受け、真っ直ぐこちらへ進んできた。
「ライラ、あなたのパートナーを務める幸福を俺…じゃなくて私に与えてくれませんか?」
ハニカミながら正装のディーダが手を差し出してくれる。
照れる!素敵!ディーダってこんなにカッコ良かったの!?
脳内で軽くアワアワしながら「喜んで!」と笑顔で手を重ねると
「あー!パートナー決まる前に来れて良かったぁ~」
とさっきまであんなにカッコ良かったのに早々いつものディーダに戻ってしまった。と思ったら
「ドレス姿、めっちゃ可愛い。婚約式の楽しみが増した」
そんな不意打ち囁くなんてズルい。
ついつい二人の世界を満喫してしまっていた時だった。
「酷いわルフィナ!」
ホールにいつもの声が響く。
目をやるとまたルフィナがレリアンに絡まれていた。
その傍にはシェル、そしてセドナーだ。
てっきりレリアンはセドナーとペアになると思っていたのだが今度は何にケチをつけているのだろう。
「ルフィナ、先生の話を聞いてなかったのか?婚約者がいる場合はその相手とペアを組めと言われただろう?」
ん?ルフィナに婚約者はいないのだがセドナーは何を言ってるのだろうかと皆が困惑している。
そんな話が出ていたら多分ルフィナは私に話してくれるはずだ。
「セドナー…私、あなたと婚約なんてしてないわ。何度もお断りしてるじゃない。お父様も受ける事は有り得ないって話していたわ」
どうやらルフィナがシェルとペアを組もうとしたところにセドナーとレリアンが割って入っているらしい。
「だが叔父上の事業は本家筋の俺が継ぐべきだろう!その為には俺達は結婚するしかないじゃないか!だから俺達はいずれ婚約する立場なんだよ!」
いやいやルフィナには弟がいるんだから家業も弟が継ぐでしょうよ!セドナー何言ってんの!?
「ルフィナ酷いわ!セドナー様がいるのにシェル様とペアを組もうとするなんて…シェル様、私がパートナーを務めますから安心なさって?」
セドナーがいるからかシェル「様」になってるーなんて脳内ツッコミを入れて現実逃避してしまうくらいカオスだ…。
なんせシェルを見るレリアンの視線がヤバい。
完全に獲物を見る目になっている。
遅れて来たシェルの服装はシンプルで簡素な風に見せているがとても上質で気品溢れていた。
それを制服でも美しいシェルが着ているのだ。
王子様と言われても通るほどの佇まいと溢れる気品に皆が釘付けになる。
ブラフ子爵家なんてシェルに会うまで聞いたこと無かったがどうやらお金持ちの子爵家らしい。
そんなシェルをレリアンが逃すはずがない。
「私はルフィナに受け入れてもらい既にペアとなっています。レリアン嬢の気遣いは無用です」
微笑みながらハッキリ断るシェルに何人かの女生徒が頬を染める。
美しいってスゴい、なんてシェルを見慣れてる私も思う。
そんな惚けた気持ちを吹っ飛ばすセドナー…。
ルフィナに向かって偉そうにほざき続けている。
「俺だって婚約者縛りが無ければレリアン嬢と組みたかったが仕方ないだろう。そもそも侯爵家の打診を子爵家ごときが断ること自体がおかしいと気付けよ」
普通ならそうだがセドナー父とルフィナ父は兄弟。
嫌なら断れる関係だと思う。
拗れていく状態に先生はこのままだと騒ぎが収まらないと判断したのだろう。
「婚約の可能性が僅かでもあるならセドナー・ラドムスとルフィナ・メロウェイがペアに、レリアン・シャーメはシェル・ブラフと組みなさい。しかしレリアン・シャーメ、今回の女性は男性からの誘いを流す練習だ。自身から誘うのははしたなく捉えられる事もあるということを忘れないように」
こうして初めての合同演習のペアが組まれてしまった。
そして、この出来事のせいとセドナーの振る舞いから、いつしかセドナーとルフィナは婚約者なのだと多くの者が勘違いするようになっていった。
しかもいつもの制服でなくドレスを着ての登校が許されている。
理由は学園のホールでダンスをするためだ。
もちろん普段の練習は制服のまま各クラス単位で練習している。
しかし実際に社交の場でダンスを踊る時、女性はドレスにヒールだし、男性は何組もの人が踊る場に合わせてエスコートすることになる。
どちらも慣れてないと中々に難しいので定期的に合同演習を行い慣れていくのだ。
夏の終わりに入学し、もうすっかり秋。冬の長期休暇前には学園全体での交流パーティという名の社交の練習があるのでまずは交流パーティで踊れる程度に慣れるのが目標だ。
「では、男性は女性をパートナーに誘うところから、女性は良いと思える男性以外を断るところから始めましょう。婚約者のいる方は練習で声かけしても最後は婚約者とペアになってね」
先生の声かけで皆が若干浮足立つ。
誰を誘うか、誰に誘われたいか皆がお互いを見回し移動を始めた。
私は…近くにいたからか声をかけてくれた人を断ってディーダを待つ。
よく見れば彼はたしか婚約者がいる。
ディーダとの婚約話が出てる私だから声をかけたのだろう。
ディーダの姿は近くにない。
でも…まだ婚約予定だけどきっと来てくれる…よね?
ルフィナは…熱心に誘われまくっているが誰を選ぶのだろう。
主に子爵家や男爵家の次男以降の者たちが次々に声をかけては撃沈していく。
ルフィナには弟がいるので家は継げないがメロウェイ家がしている事業で役職に就ければ将来が安泰だからだろう。
ペア組から社交の練習は始まっているのだ。
「すみません、遅れました」
色々な思惑と不慣れな交流が交錯するホールに2人の男性が入ってきた。
ディーダとシェルだ。
2人は先生から説明を受け、真っ直ぐこちらへ進んできた。
「ライラ、あなたのパートナーを務める幸福を俺…じゃなくて私に与えてくれませんか?」
ハニカミながら正装のディーダが手を差し出してくれる。
照れる!素敵!ディーダってこんなにカッコ良かったの!?
脳内で軽くアワアワしながら「喜んで!」と笑顔で手を重ねると
「あー!パートナー決まる前に来れて良かったぁ~」
とさっきまであんなにカッコ良かったのに早々いつものディーダに戻ってしまった。と思ったら
「ドレス姿、めっちゃ可愛い。婚約式の楽しみが増した」
そんな不意打ち囁くなんてズルい。
ついつい二人の世界を満喫してしまっていた時だった。
「酷いわルフィナ!」
ホールにいつもの声が響く。
目をやるとまたルフィナがレリアンに絡まれていた。
その傍にはシェル、そしてセドナーだ。
てっきりレリアンはセドナーとペアになると思っていたのだが今度は何にケチをつけているのだろう。
「ルフィナ、先生の話を聞いてなかったのか?婚約者がいる場合はその相手とペアを組めと言われただろう?」
ん?ルフィナに婚約者はいないのだがセドナーは何を言ってるのだろうかと皆が困惑している。
そんな話が出ていたら多分ルフィナは私に話してくれるはずだ。
「セドナー…私、あなたと婚約なんてしてないわ。何度もお断りしてるじゃない。お父様も受ける事は有り得ないって話していたわ」
どうやらルフィナがシェルとペアを組もうとしたところにセドナーとレリアンが割って入っているらしい。
「だが叔父上の事業は本家筋の俺が継ぐべきだろう!その為には俺達は結婚するしかないじゃないか!だから俺達はいずれ婚約する立場なんだよ!」
いやいやルフィナには弟がいるんだから家業も弟が継ぐでしょうよ!セドナー何言ってんの!?
「ルフィナ酷いわ!セドナー様がいるのにシェル様とペアを組もうとするなんて…シェル様、私がパートナーを務めますから安心なさって?」
セドナーがいるからかシェル「様」になってるーなんて脳内ツッコミを入れて現実逃避してしまうくらいカオスだ…。
なんせシェルを見るレリアンの視線がヤバい。
完全に獲物を見る目になっている。
遅れて来たシェルの服装はシンプルで簡素な風に見せているがとても上質で気品溢れていた。
それを制服でも美しいシェルが着ているのだ。
王子様と言われても通るほどの佇まいと溢れる気品に皆が釘付けになる。
ブラフ子爵家なんてシェルに会うまで聞いたこと無かったがどうやらお金持ちの子爵家らしい。
そんなシェルをレリアンが逃すはずがない。
「私はルフィナに受け入れてもらい既にペアとなっています。レリアン嬢の気遣いは無用です」
微笑みながらハッキリ断るシェルに何人かの女生徒が頬を染める。
美しいってスゴい、なんてシェルを見慣れてる私も思う。
そんな惚けた気持ちを吹っ飛ばすセドナー…。
ルフィナに向かって偉そうにほざき続けている。
「俺だって婚約者縛りが無ければレリアン嬢と組みたかったが仕方ないだろう。そもそも侯爵家の打診を子爵家ごときが断ること自体がおかしいと気付けよ」
普通ならそうだがセドナー父とルフィナ父は兄弟。
嫌なら断れる関係だと思う。
拗れていく状態に先生はこのままだと騒ぎが収まらないと判断したのだろう。
「婚約の可能性が僅かでもあるならセドナー・ラドムスとルフィナ・メロウェイがペアに、レリアン・シャーメはシェル・ブラフと組みなさい。しかしレリアン・シャーメ、今回の女性は男性からの誘いを流す練習だ。自身から誘うのははしたなく捉えられる事もあるということを忘れないように」
こうして初めての合同演習のペアが組まれてしまった。
そして、この出来事のせいとセドナーの振る舞いから、いつしかセドナーとルフィナは婚約者なのだと多くの者が勘違いするようになっていった。
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