私は男爵令嬢ですよ?

だましだまし

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図書館で会った人

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図書館に戻り、午前にファルス先輩がまとめてくれた資料と本の内容を一緒に確認していく。

物語のヒロインがどんな女性だったのか大体把握出来たところで飲み物を飲みに休憩所へ移動することになった。

「セド?」

私たちの後ろから先輩に声を掛けてきた人を見て驚く。
副担任、ナルファス・マルドー先生だ。
ってセド!?愛称?

「ナル兄さ…マルドー先生、こんにちは」

ナル兄…兄さん?兄様?兄!?

声をかけてきた人そのものにもだが、その声かけの内容にも驚きを隠せない。

いつもおくれ毛をそのままに後ろで一つに束ねているが今日は下ろしているので長身でなければ女性のようにも見えたのではないだろうか。
いや、男性の装いをした女性に見えるわ。
相変わらずキレイで色っぽい華奢な先生である。

「レリックさんも一緒でしたか。つい名前で呼んでしまった、ははっ」
色っぽいイケメンがテヘペロしてる…。
ポカンとしてるとファルス先輩が実は父親同士が学園時代からの友人なのだと説明してくれた。

「しかもファルスさんの父親は私の少年期に先生として色々教えて下さっていたんですよ。なので実は家族ぐるみでお付き合いがあるのです。」

昔からファルス家はマーレイ家の仕事も請け負っていたが始めから住み込みではなかった。
住み込みになったキッカケはファルス先輩が生まれた頃にマーレイ家に誘拐予告があったかららしい。

当時、貴族の屋敷の宝を盗む泥棒が世間を騒がせていた。
中々子に恵まれなかったマーレイ公爵家待望の長男はまさに家の宝。
今まで人が拐われたことはないが宝として盗もうというのかとマーレイ家の人々は気が気でなかったらしい。
そして同じ頃に生まれた赤子を影武者として育てようという案が飛び出すまで話がぶっ飛んだ。
しかし似た髪色の赤子が見つからなかったのだ。
ファルス先輩を除いて…。

今でこそ緑と藍色だが小さい頃は二人とも髪色がもっと濃く、黒に近かったのでしっかり明るい所で見れば違えど室内ではよく似た色味だったらしい。

先代のマーレイ公爵は孫のためにファルス子爵家へ圧力をかけた。
いくら有能とて子爵家が公爵家相手に太刀打ち出来ない。
たちまち没落するか息子を渡すかといったところまで追い込まれた。

その時に間に立ち「家を潰して息子を奪う」から「家族住み込みの雇用にして息子を影武者として雇う」に変えさせたのがマルドー伯爵家、先生の父親らしい。

「で、結果的に流石に陰で色々言われつつある状態だった事を丸く納めたと公爵も喜んだらしくてね、褒賞に父が求めたのがファルスさんの父親が私の先生をする事だったんです。様々な分野で優秀な方ですからね~。うちに通う必要があればマーレイ公爵家が約束を違えるのも難しくなるだろう…といった裏もあったそうで互いに利があったとか無かったとかってね」

その後、他家が盗みに入られることはあれど怪しい侵入者が訪れることはなく、ほんの数年で誘拐予告は狂言かイタズラだったのだろうと判断されたのだそうだ。

公爵が代替わりしたのと二人の髪色の違いが成長とともにハッキリしてきたのも大きかったのだろう。

「学園では気を付けていたんだけど弟みたいなもんなんだよね~」
そんなこと言いつつアハハと笑っている。

話していて思ったのだがこの先生、思っていたよりずいぶん軽い性格をしているようだ。
アンニュイな雰囲気どこいった!?ってなくらい喋るし表情もコロコロ変わる。
ついでに口調も砕けていっている。

「先生…素が出てます…」

ファルス先輩が若干呆れたように言う。
「今お忍びのオフだからね~。本当はレリックさんを口説かなきゃいけないんだけど…面倒なんだよ~」

先生に口説かれるのは困るがしょぼんと面倒がられるのも胸中複雑だ。

「口説かなきゃ…で口説くものではないのでは…?あと本人の前で言っちゃうんですね、それ」
つい心の声が漏れる。

「あー、そうだねってセドから聞いて知ってるのかな?実は今ね、君を恋人に出来るかで賭けをしてる人たちがいるのですよ。」

どーん。

なんでも喋るな、この先生。
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