私は男爵令嬢ですよ?

だましだまし

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続・図書館にて

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積まれていた本は二つの山に分けられていた。

一人ひと山かと思ったがどうやら内容別らしい。
一つは私が調べようと思っていた物語の乙女のモデルになった女性関係。
もう一つは神聖力の事についての資料や専門書だった。

「君は多分自分の力について知らなすぎるからさ。ちょっと勉強した方がいい。その間に僕がこっちの内容をまとめておくよ」
どうせ就職したら詳しく知れるだろうし必要かと眉をしかめると「そんなもん、と思っても知ると知らぬじゃ違うからさ。流し読みで良いから知るべきだよ」とニッコリ圧をかけられた。
えーファルス先輩ってこんな強い圧出せたりするんだーなんてちょっと現実逃避しちゃうような有無を言わせない圧に、こちらもニッコリ頷くしかない。


仕方なくパラパラ読み出すと中々に興味深かった。

魔法と精神に深い繋がりがあるのは知っていたが神聖力は特に影響を受けること。
他国の話だが、その有用性から幽閉され力を失った者がいること。
比較的善良な思考をした者に宿る事が多いと記した本もあり嬉しいような照れくさいようなでこれは特にサラッと流し読みで済ませてしまった。

そして光魔法の本もあったのだが、この属性は思った以上に日常使いには半端だった。
魔物にはとにかく強いが他の使い道が微妙過ぎるのだ。

神聖力ほどではないが唯一属性魔法として癒し効果の魔法があり、疲労感などを払拭出来るらしいが怪我の治癒となるとキレイに治るのは擦り傷程度なのではないかと思わせる書き方。
対魔物以外への攻撃力は、他属性が少しでも使えると光線のように放て、それなりに強そうだが単独ならば目潰しくらい。

…魔物のいない世の中だったらポンコツ属性じゃないか!

ふと疲労感を感じ視線を上げるとファルス先輩が笑いを堪えている様子だった。
「表情が賑やかだね」
「え…どうも…」
この人、人畜無害な顔してる癖にスッパスパ失礼な事ぶっこむな。

ジトッと見ると私が読んでいる山よりも沢山あった本が数冊に絞られ付箋までされているのが視界に入った。
全部流し読みだとしても目を通したのなら凄まじい速さである。
本当に全部読んだのか半信半疑だったが
「当時の背景が分かりやすい部分に付箋を付けておいたよ。直接彼女について書いてなくてもね。あとこっちは書き出したもの。」
と当たり前のように今作ったと思われる走り書きの文字だが資料まで差し出してきた。

「!? 早すぎません?」
「うん!特技って言える位に早いよ」
ニコニコと返される。

そっかぁ~特技かぁ~…えー…ファルス先輩、何気に有能?
「チンタラしてたらうるさい奴がずっと側に居たからね」
ニコニコとまたどえらい事を言う。
絶対ルドウィック・マーレイの事だ。


だが…今更だがあんな事があって、住み込みで仕えてるという彼は大丈夫だったのだろうか?
学校内では本音は筆談にするほど彼について否定的な事を言葉にしてなかったのに…。

聞きたいけど突っ込んだ事を聞きすぎだと思われるかな。
どうしようかモゴモゴしてしまっていると少し首を傾げニコリと「気になる事があるなら口にして?」と言われてしまった。
「あの…ふと、あのあと大丈夫だったのかな…と…」
何でもないと言ったところで嘘を見抜かれるだろうし、散々失礼な物言いをされているから少しくらい失礼でもいいやという気持ちから素直に聞いてみる。

ファルス先輩は私の質問に一瞬困ったような笑顔を浮かべ、手を顎に当てて何か少し考える仕草をみせた。
やはり聞いて良いことでは無かったのかもしれないと不安になって俯いてしまう。

「お腹、空いてない?」

気不味い思いで居心地悪くなった私の顔を上げさせたのは質問と全然関係ない明るい声の問いかけだった。
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