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図書館にて
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お待ちかねのお休みの日!
お父様に用意してもらった貴族だと証明する書類、
お財布にメモ帳、ペン。
忘れ物もない。
ファルス先輩とは図書館で直接待ち合わせる約束だ。
お気に入りの銀の蝶の髪飾りはブローチの様に服に付けている。
なんとなく…ちょっとオシャレをしたかったから、それだけ。
王都を歩くんだから引っ越し前にいた所と同じ感覚ってわけにはいかないよね!
使用人の一人に付き添ってもらい寄り合い馬車を使って図書館に行くとファルス先輩は既に到着していた。
無事合流出来たので使用人の彼には帰ってもらう。
私に1日中付き合えるほど我が家の使用人は多くない。
それでは、と帰りかける彼にファルス先輩が声をかけた。
「帰りは僕が送りますから迎えは大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。助かります」
二つ返事で主人の娘を男に託すってどうなの?と思いつつ、移動したらまた待ち合わせ場の図書館に戻らねばならないのが面倒だと思っていたので何も言わず手をふっておいた。
「調べ物でしょう?小声にはなるけど会話が出来るように個室スペースを借りておいたよ」
そんなのあるんだ!抜かりない。助かる。
案内された個室は半個室といった感じの、本当にこじんまりとしたもので向かい合って二人座ればいっぱいだった。
既に数冊の本が積まれている。
「そういえば手紙の件、ありがたかったですけど万が一あの人に読まれてたらどうしたんですか?」
ずっと引っかかっていた。
仕えている主の性格くらい分かっているだろうに読まれてしまったらどうするつもりだったのか。
自分の為の行動でクビにされたり彼の親まで咎を受けたかもしれなかったと考えると、サラッと聞けたと思うが内心少し緊張してしまう。
が、「あぁ、あれ?」と事も無げだった。
「ぶっちゃけ読まれても言いくるめられる自信があったからだよ。あの人、頭は悪くないけど単純で短絡的な性格でもあるから扱いは難しくないんだよね。面倒臭い人だけど」
人当たりの良さそうな顔して腹は黒いのかもしれない。
「これは僕の保身の為変えたんだけど、手紙の内容まんま事実ってわけじゃないんだよ。ちょっと端折ったりオーバーにしてある。言い訳する時にしやすいようにね。でも充分理由は伝わったでしょ?」
少し探るような笑顔でこちらをジッと見られ思わずドキリと心臓が鳴る。
それに気付かれたのかいないのか、フッと優しい笑顔を向けられなんだか戸惑ってしまった。
少しくすぐったいような気持ちにさっきの鼓動はトキメキだったのかと脳内を乙女な思考が駆け巡る。
「どっちにしても君は彼らを好きにならないでしょ?おっちょこちょいっぽいけど冷めた性格なのか現実的なのかお年頃っぽさはないものね」
トキメキ撤回。花の乙女に失礼な。
「正真正銘、恋に恋する乙女ですけど?どういうことです?」
正に今、お年頃っぽさ全開だったのに萎んでしまったとまでは言えない。
ただ、私の苛つきを察しているのかいないのかいたずらっぽい笑顔を向けられてしまった。
「恋に恋する乙女なら彼らと会話できるだけで浮ついたり色めき立ったりしないかい?好みはそれぞれだけど女の子にとって好ましい容姿をしている方々だし身分も高い。実際周りに嫉妬で嫌煙されてる自覚あるだろう?」
「た…たしかに…」
言われてみればそうなのかもしれない。
王子様をはじめ、私に絡んでくる方々は皆それぞれ婚約者がいても人気が高い。
私はそれ故にいらぬ諍いの元となると嫌悪していたけれど女子生徒たちに嫌われることを差し引きしても何かしらのチャンスと思う人もいるかも…いや、いるか?
そもそも身分差が有りすぎて婚約者の座を奪うとか家的に無理だし…愛人としてとか私は嫌だけど世の女子は…えー…いやいや。
一瞬納得しかけたものの首をかしげ考え込む様が面白かったらしい。笑われた。
「普通見目麗しい方々にチヤホヤされたら舞い上がるよ。どうこうなりたいとかでなくね。特にアルフレッド王子殿下とか身分が特別過ぎて…舞台で輝く役者と交流する感覚に近いんじゃないかな」
「え?」
「要するに考えすぎ。表情に全部出てたよ」
図書館なのを考慮してかクックっと声を押し殺しているが音が漏れる程笑われた。悔しい。
「そういう色々考え過ぎてしまうところがお年頃の乙女っぽくないと思ったんだ。よほど自分を制してる高位貴族の淑女ならばともかくさ。全部顔に出ちゃう様な子なのに舞い上がる素振りなかったんだもん」
「えー…そんなもん、ですかねぇ…?」
「そんなもん、なんだよ」
まだ笑っている…。
なんだか聞きたかった答えは聞けなかった気はするけどファルス先輩が観察力に優れているっぽいということは分かった。
お父様に用意してもらった貴族だと証明する書類、
お財布にメモ帳、ペン。
忘れ物もない。
ファルス先輩とは図書館で直接待ち合わせる約束だ。
お気に入りの銀の蝶の髪飾りはブローチの様に服に付けている。
なんとなく…ちょっとオシャレをしたかったから、それだけ。
王都を歩くんだから引っ越し前にいた所と同じ感覚ってわけにはいかないよね!
使用人の一人に付き添ってもらい寄り合い馬車を使って図書館に行くとファルス先輩は既に到着していた。
無事合流出来たので使用人の彼には帰ってもらう。
私に1日中付き合えるほど我が家の使用人は多くない。
それでは、と帰りかける彼にファルス先輩が声をかけた。
「帰りは僕が送りますから迎えは大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。助かります」
二つ返事で主人の娘を男に託すってどうなの?と思いつつ、移動したらまた待ち合わせ場の図書館に戻らねばならないのが面倒だと思っていたので何も言わず手をふっておいた。
「調べ物でしょう?小声にはなるけど会話が出来るように個室スペースを借りておいたよ」
そんなのあるんだ!抜かりない。助かる。
案内された個室は半個室といった感じの、本当にこじんまりとしたもので向かい合って二人座ればいっぱいだった。
既に数冊の本が積まれている。
「そういえば手紙の件、ありがたかったですけど万が一あの人に読まれてたらどうしたんですか?」
ずっと引っかかっていた。
仕えている主の性格くらい分かっているだろうに読まれてしまったらどうするつもりだったのか。
自分の為の行動でクビにされたり彼の親まで咎を受けたかもしれなかったと考えると、サラッと聞けたと思うが内心少し緊張してしまう。
が、「あぁ、あれ?」と事も無げだった。
「ぶっちゃけ読まれても言いくるめられる自信があったからだよ。あの人、頭は悪くないけど単純で短絡的な性格でもあるから扱いは難しくないんだよね。面倒臭い人だけど」
人当たりの良さそうな顔して腹は黒いのかもしれない。
「これは僕の保身の為変えたんだけど、手紙の内容まんま事実ってわけじゃないんだよ。ちょっと端折ったりオーバーにしてある。言い訳する時にしやすいようにね。でも充分理由は伝わったでしょ?」
少し探るような笑顔でこちらをジッと見られ思わずドキリと心臓が鳴る。
それに気付かれたのかいないのか、フッと優しい笑顔を向けられなんだか戸惑ってしまった。
少しくすぐったいような気持ちにさっきの鼓動はトキメキだったのかと脳内を乙女な思考が駆け巡る。
「どっちにしても君は彼らを好きにならないでしょ?おっちょこちょいっぽいけど冷めた性格なのか現実的なのかお年頃っぽさはないものね」
トキメキ撤回。花の乙女に失礼な。
「正真正銘、恋に恋する乙女ですけど?どういうことです?」
正に今、お年頃っぽさ全開だったのに萎んでしまったとまでは言えない。
ただ、私の苛つきを察しているのかいないのかいたずらっぽい笑顔を向けられてしまった。
「恋に恋する乙女なら彼らと会話できるだけで浮ついたり色めき立ったりしないかい?好みはそれぞれだけど女の子にとって好ましい容姿をしている方々だし身分も高い。実際周りに嫉妬で嫌煙されてる自覚あるだろう?」
「た…たしかに…」
言われてみればそうなのかもしれない。
王子様をはじめ、私に絡んでくる方々は皆それぞれ婚約者がいても人気が高い。
私はそれ故にいらぬ諍いの元となると嫌悪していたけれど女子生徒たちに嫌われることを差し引きしても何かしらのチャンスと思う人もいるかも…いや、いるか?
そもそも身分差が有りすぎて婚約者の座を奪うとか家的に無理だし…愛人としてとか私は嫌だけど世の女子は…えー…いやいや。
一瞬納得しかけたものの首をかしげ考え込む様が面白かったらしい。笑われた。
「普通見目麗しい方々にチヤホヤされたら舞い上がるよ。どうこうなりたいとかでなくね。特にアルフレッド王子殿下とか身分が特別過ぎて…舞台で輝く役者と交流する感覚に近いんじゃないかな」
「え?」
「要するに考えすぎ。表情に全部出てたよ」
図書館なのを考慮してかクックっと声を押し殺しているが音が漏れる程笑われた。悔しい。
「そういう色々考え過ぎてしまうところがお年頃の乙女っぽくないと思ったんだ。よほど自分を制してる高位貴族の淑女ならばともかくさ。全部顔に出ちゃう様な子なのに舞い上がる素振りなかったんだもん」
「えー…そんなもん、ですかねぇ…?」
「そんなもん、なんだよ」
まだ笑っている…。
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