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皆がやれやれ帰ろうか、そんな空気を出し始めた時だった。
「ではこれより任命式を行う」
バルム様とシル様、第二王子のキュレイ様以外が一斉にシグルス様に注視した。
そして私はお父様とシグルス様の会話を思い出す。
『次世代のお遊戯のような任命式ですが参加頂けますか?』
言ってたー!任命式ってシグルス様言ってたわ!
完全にスルーしてたけどジグスさんの執事の任命式よね?
…マリアの事が大きすぎて若干皆を集めてする必要があるのかとは思うけども。
そう戸惑っていると資料だと冊子が配られた。
お父様も手渡されている。
「さて、ここには次代の重要職に就く予定の者たちが集まっている。そんな諸君に是非側仕えさせて欲しい者たちを紹介しよう」
シグルス様の声に合わせジグスさんが奥の扉を開くと毛先がオレンジの、目にも鮮やかな赤髪の男性が6人、老婆が2人、少年が3人入ってきた。
「彼らはこの王都で不当に扱われていたトロル族の中でも所有権を王城に譲って貰えた者、または庶子として日陰者とされていた者たちだ」
皆、ワケが分からず顔を見合せている。
私もジグスさんの任命式だと思っていただけに頭の中はハテナでいっぱいだ。
ただお父様は興味深げに壇上を見つめていた。
戸惑い全開な自分たちの未熟さを感じる…!
「その亜人たちが何かに任命されるのですか?」
側近候補の一人が尋ねる。
一人だと人にしか見えないが、同じ種族で揃うとジグスさん含め彼らは亜人としての存在感を放っていた。
人ならざる者たち、そんな威圧感さえ感じさせる。
壇上のトロル族たちも、それを見上げる私達もどこか居心地の悪さが隠せていない。
「任命式の前に彼らを紹介したくてね。実は彼らは新しい職場を探している。手元の冊子を開いてくれ」
冊子をめくるとプロフィール紹介だった。
壇上のトロル族たちの似顔絵に年齢や名前、経歴などが記されている。
「君たちには是非とも彼らの雇い主になってもらいたくてね。」
そういう皆の前に運び込まれたワゴンにはワインと水とオレンジジュースのピッチャー、紅茶ポットとお湯の入ったケトル、数種類の薬瓶に草花、複数のグラスとティーカップが3組乗っていた。
私の前にも運ばれてきている。
トリカブトをはじめとした毒草、有名な毒薬のラベルが貼られた薬瓶…もの凄く物騒だ。
「彼らは特別な力があってね、それぞれ好きな飲み物を注いで自由に毒を盛ってくれ。ただし1つ以上無毒な物も作るようにね」
なるほど、トロル族の能力を見せつけるのね。
私は早速ティーカップに毒草を入れ、お茶を注いだ。
1つは見た目が少し変わってしまったし、1つは香りが悪くなったが1つは見た目や香りじゃ分からない。
あとはオレンジジュースとワインに適当な薬瓶からポタポタ毒を盛った。
無毒は端っこのワインだ。
他の人達も戸惑いながら毒を盛っていく。
その間壇上のトロル族たちは目隠しをされ、後ろを向かされていた。
私とお兄様の間にいつの間にかお父様が立っている。
「シグルス様は何やら物騒な実験をするなぁ」
等と言ってるがどこかしら楽しそうだ。
カチャカチャとグラスや薬瓶を触る音が止むとトロル族たちの目隠しは外された。
「では…好きなトロル族を指名し無毒の物を飲めば雇う、というゲームを始めようか」
私達以外の顔色がサッと変わった。
「流石に非人道的ではありませんか!?」
こう叫んだのはフェロガスだ。
「私の解毒魔法でも後遺症が残らない保証はありません!口にするなんて思わず大量に入れた物もあります!」
確かにお父様以外に若手しか居ないこの中で一番魔法に秀でているのは時期魔法団長と名高い彼だろう。
他の人達も分かりやすくドン引きしているし、先程戸惑いを見せなかったお父様も険しい表情になっていた。
が。
「では私から…そこの髪を束ねてる若い…えと…ミロ?無毒の物を選んで下さい」
躊躇う事無く冊子をパラパラと巡り一人の青年を呼んだのはバルム様だ。
「は…はい…」
壇上から下りた若干小柄なトロル族の青年ミロはオドオドした様子はあれど迷いなく水を取り、飲み干す。
そうしてオレンジジュースも手に取り
「こちらも無毒ですね、飲むべきでしょうか?」
そう確認した。
「ではこれより任命式を行う」
バルム様とシル様、第二王子のキュレイ様以外が一斉にシグルス様に注視した。
そして私はお父様とシグルス様の会話を思い出す。
『次世代のお遊戯のような任命式ですが参加頂けますか?』
言ってたー!任命式ってシグルス様言ってたわ!
完全にスルーしてたけどジグスさんの執事の任命式よね?
…マリアの事が大きすぎて若干皆を集めてする必要があるのかとは思うけども。
そう戸惑っていると資料だと冊子が配られた。
お父様も手渡されている。
「さて、ここには次代の重要職に就く予定の者たちが集まっている。そんな諸君に是非側仕えさせて欲しい者たちを紹介しよう」
シグルス様の声に合わせジグスさんが奥の扉を開くと毛先がオレンジの、目にも鮮やかな赤髪の男性が6人、老婆が2人、少年が3人入ってきた。
「彼らはこの王都で不当に扱われていたトロル族の中でも所有権を王城に譲って貰えた者、または庶子として日陰者とされていた者たちだ」
皆、ワケが分からず顔を見合せている。
私もジグスさんの任命式だと思っていただけに頭の中はハテナでいっぱいだ。
ただお父様は興味深げに壇上を見つめていた。
戸惑い全開な自分たちの未熟さを感じる…!
「その亜人たちが何かに任命されるのですか?」
側近候補の一人が尋ねる。
一人だと人にしか見えないが、同じ種族で揃うとジグスさん含め彼らは亜人としての存在感を放っていた。
人ならざる者たち、そんな威圧感さえ感じさせる。
壇上のトロル族たちも、それを見上げる私達もどこか居心地の悪さが隠せていない。
「任命式の前に彼らを紹介したくてね。実は彼らは新しい職場を探している。手元の冊子を開いてくれ」
冊子をめくるとプロフィール紹介だった。
壇上のトロル族たちの似顔絵に年齢や名前、経歴などが記されている。
「君たちには是非とも彼らの雇い主になってもらいたくてね。」
そういう皆の前に運び込まれたワゴンにはワインと水とオレンジジュースのピッチャー、紅茶ポットとお湯の入ったケトル、数種類の薬瓶に草花、複数のグラスとティーカップが3組乗っていた。
私の前にも運ばれてきている。
トリカブトをはじめとした毒草、有名な毒薬のラベルが貼られた薬瓶…もの凄く物騒だ。
「彼らは特別な力があってね、それぞれ好きな飲み物を注いで自由に毒を盛ってくれ。ただし1つ以上無毒な物も作るようにね」
なるほど、トロル族の能力を見せつけるのね。
私は早速ティーカップに毒草を入れ、お茶を注いだ。
1つは見た目が少し変わってしまったし、1つは香りが悪くなったが1つは見た目や香りじゃ分からない。
あとはオレンジジュースとワインに適当な薬瓶からポタポタ毒を盛った。
無毒は端っこのワインだ。
他の人達も戸惑いながら毒を盛っていく。
その間壇上のトロル族たちは目隠しをされ、後ろを向かされていた。
私とお兄様の間にいつの間にかお父様が立っている。
「シグルス様は何やら物騒な実験をするなぁ」
等と言ってるがどこかしら楽しそうだ。
カチャカチャとグラスや薬瓶を触る音が止むとトロル族たちの目隠しは外された。
「では…好きなトロル族を指名し無毒の物を飲めば雇う、というゲームを始めようか」
私達以外の顔色がサッと変わった。
「流石に非人道的ではありませんか!?」
こう叫んだのはフェロガスだ。
「私の解毒魔法でも後遺症が残らない保証はありません!口にするなんて思わず大量に入れた物もあります!」
確かにお父様以外に若手しか居ないこの中で一番魔法に秀でているのは時期魔法団長と名高い彼だろう。
他の人達も分かりやすくドン引きしているし、先程戸惑いを見せなかったお父様も険しい表情になっていた。
が。
「では私から…そこの髪を束ねてる若い…えと…ミロ?無毒の物を選んで下さい」
躊躇う事無く冊子をパラパラと巡り一人の青年を呼んだのはバルム様だ。
「は…はい…」
壇上から下りた若干小柄なトロル族の青年ミロはオドオドした様子はあれど迷いなく水を取り、飲み干す。
そうしてオレンジジュースも手に取り
「こちらも無毒ですね、飲むべきでしょうか?」
そう確認した。
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