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パーティはとても楽しかった。
バルム様はそのまま一泊して帰り、私達もバルム様が帰った翌日には王都へと帰還した。

あの日の翌日、バルム様が帰る前に予定されていたジグスさんがシル様の執事となる任命は先延ばしになってしまったが、まぁ今はマリアの言う通りの「執事」にするのは良くないと判断されたのだろうと皆口にはしないが思っていたので仕方ない。


そして、休暇が明ける前々日。
翌日のお兄様の登城に私も付いてくるように、と命令が下された。
お誘いや呼び出しでなく、命令。
なんで堅苦しい命令を…まさかマリアが何か言って私も罪に問われるとか…?
正直シル様を通じて、そして保養地で共に過ごした事でシグルス様ともそれなりの信頼関係が築けていたと、友人というとおこがましいかもしれないが近い関係になれたと思っていただけに一抹の寂しさを感じてしまう。
シル様からも特に何も聞いていないのが辛い。
保養地で粗相をやらかしたとか?
無礼講のパーティもあったし心当たりならいっぱいあるけどお兄様も分からないと少し難しい顔をしている。
何はともあれ行けば分かる!
腹を括るしかない…。

そうしていつもより畏まった服装で、念のためとお父様も同伴する事になり馬車は緊張に包まれたまま登城した。
「やぁ、来たね」
緊張した私たちと違い、いつものにこやかなシグルス様が片手を軽く上げて軽やかに挨拶してくる。
若干拍子抜けする私達に背筋を伸ばせとお父様が軽く小突いてくる。
「あれ?騎士団長も一緒に?」
「シグルス殿下におかれましてはご機嫌麗しく何よりで御座います。本日は愚女が登城の命を受けたと聞き及びまして、親にも果たせる責任があるかと馳せ参じた次第で御座います」
「ははっ相変わらず堅苦しいですね。それにディディは優秀ですよ。咎める為に呼んだのではないのですからそんな言い方しなくて大丈夫ですよ」
「はっ…恐れ入ります。では…何故普通のお呼び出しでなく娘まで登城のご命令を?」
「え?命令?…あー…なんかごめんね。絶対来てくれるように頼んでって伝えたせいかも…そんな強制的な強い呼び出しのつもりじゃなかったんです」
「…もしやレゴス殿にご指示を…?」
「御名答…指示の出し方と相手が悪かったな…」
このレゴスという文官、融通が利かないと城では有名だそうだ。

「まぁ…あとでどちみち確認しようと思ってた内容もあるから丁度いいかもしれない。ブレビリー騎士団長、次世代のお遊戯のような任命式ですが参加頂けますか?」
「殿下のお望みとあらば喜んで参加させて頂きましょう」
このやり取りで私達はピンときた。
以前行い損ねたジグスさんの執事への任命をわざわざ私達を呼んでやり直そうとしているのだと。
意外と律儀というか何と言うか…お兄様と顔を見合わせると『お騒がせだな』と顔に書いてあった。
そうこうしているとバルム様、シル様の他にも魔法師団長子息レイムス・フェン・フェロガスら他数人の側近候補たち、壇上の中央から外れた所には第二王子キュレイ様までいらっしゃった。
なるほど、次世代の有力者候補達だ。
一人世代の違うお父様は見守るように広間の隅へと移動していった。

「さて、そろそろ皆が集まったな」
そう声を上げシル様をエスコートしながら壇上中央へシグルス様が移動する。
壇上へ出入りするのに続く扉が隠されたカーテンの脇にはシル様に続いて入ってきたのかジグスさんが控えていた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。我々の世代における貴重な聖魔法使いの一人となるはずだったマリア・ローデンについてだ」
シグルス様の声に皆が姿勢を正し耳を傾ける。
聖魔法使いはその希少さから一定以上の強さがあれば庶民であっても王家や教会で保護され大事に守られるというのは授業で習った。
そしてマリアの聖魔法の強さは覚醒前でも珍しい強さだったのだ。
マリアの名に魔法師団長子息がピクリと反応を示す。
学園でマリアに明らかに好感を抱いてるメンバーのうち、ここにいる唯一の人だ。
「彼女は目に余る数々の不敬を繰り返し、我が妃となるリュシルファにとって危険を及ぼす思考を持っていることが判明した」
「!」
皆が耳を傾ける中、何か言いたそうな魔法師団長子息レイムス様。
しかしシグルス様はそのまま続けた。
「しかし先にも言った通り聖属性の使い手は希少。よって処刑するのではなく身分剥奪の上で学園を辞めてもらい、王家と教会の監視下に置くこととなった。具体的には基本は修道女として魔物が活発な地の一番大きな教会にて暮らしてもらい、聖属性の者が持つ魔物の活動を鈍らせる効果を発揮してもらう予定だ。心を入れかえ国のために尽力する姿が認められれば従来の聖魔法使いと同様王都にて保護することとなる。この処遇に異論のある者はいるか?」
「はい!」

目に強い怒りをたたえ手を上げたのは案の定レイムス・フェロガス様だった。
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