30 / 35
30
しおりを挟む
パーティはとても楽しかった。
バルム様はそのまま一泊して帰り、私達もバルム様が帰った翌日には王都へと帰還した。
あの日の翌日、バルム様が帰る前に予定されていたジグスさんがシル様の執事となる任命は先延ばしになってしまったが、まぁ今はマリアの言う通りの「執事」にするのは良くないと判断されたのだろうと皆口にはしないが思っていたので仕方ない。
そして、休暇が明ける前々日。
翌日のお兄様の登城に私も付いてくるように、と命令が下された。
お誘いや呼び出しでなく、命令。
なんで堅苦しい命令を…まさかマリアが何か言って私も罪に問われるとか…?
正直シル様を通じて、そして保養地で共に過ごした事でシグルス様ともそれなりの信頼関係が築けていたと、友人というとおこがましいかもしれないが近い関係になれたと思っていただけに一抹の寂しさを感じてしまう。
シル様からも特に何も聞いていないのが辛い。
保養地で粗相をやらかしたとか?
無礼講のパーティもあったし心当たりならいっぱいあるけどお兄様も分からないと少し難しい顔をしている。
何はともあれ行けば分かる!
腹を括るしかない…。
そうしていつもより畏まった服装で、念のためとお父様も同伴する事になり馬車は緊張に包まれたまま登城した。
「やぁ、来たね」
緊張した私たちと違い、いつものにこやかなシグルス様が片手を軽く上げて軽やかに挨拶してくる。
若干拍子抜けする私達に背筋を伸ばせとお父様が軽く小突いてくる。
「あれ?騎士団長も一緒に?」
「シグルス殿下におかれましてはご機嫌麗しく何よりで御座います。本日は愚女が登城の命を受けたと聞き及びまして、親にも果たせる責任があるかと馳せ参じた次第で御座います」
「ははっ相変わらず堅苦しいですね。それにディディは優秀ですよ。咎める為に呼んだのではないのですからそんな言い方しなくて大丈夫ですよ」
「はっ…恐れ入ります。では…何故普通のお呼び出しでなく娘まで登城のご命令を?」
「え?命令?…あー…なんかごめんね。絶対来てくれるように頼んでって伝えたせいかも…そんな強制的な強い呼び出しのつもりじゃなかったんです」
「…もしやレゴス殿にご指示を…?」
「御名答…指示の出し方と相手が悪かったな…」
このレゴスという文官、融通が利かないと城では有名だそうだ。
「まぁ…あとでどちみち確認しようと思ってた内容もあるから丁度いいかもしれない。ブレビリー騎士団長、次世代のお遊戯のような任命式ですが参加頂けますか?」
「殿下のお望みとあらば喜んで参加させて頂きましょう」
このやり取りで私達はピンときた。
以前行い損ねたジグスさんの執事への任命をわざわざ私達を呼んでやり直そうとしているのだと。
意外と律儀というか何と言うか…お兄様と顔を見合わせると『お騒がせだな』と顔に書いてあった。
そうこうしているとバルム様、シル様の他にも魔法師団長子息レイムス・フェン・フェロガスら他数人の側近候補たち、壇上の中央から外れた所には第二王子キュレイ様までいらっしゃった。
なるほど、次世代の有力者候補達だ。
一人世代の違うお父様は見守るように広間の隅へと移動していった。
「さて、そろそろ皆が集まったな」
そう声を上げシル様をエスコートしながら壇上中央へシグルス様が移動する。
壇上へ出入りするのに続く扉が隠されたカーテンの脇にはシル様に続いて入ってきたのかジグスさんが控えていた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。我々の世代における貴重な聖魔法使いの一人となるはずだったマリア・ローデンについてだ」
シグルス様の声に皆が姿勢を正し耳を傾ける。
聖魔法使いはその希少さから一定以上の強さがあれば庶民であっても王家や教会で保護され大事に守られるというのは授業で習った。
そしてマリアの聖魔法の強さは覚醒前でも珍しい強さだったのだ。
マリアの名に魔法師団長子息がピクリと反応を示す。
学園でマリアに明らかに好感を抱いてるメンバーのうち、ここにいる唯一の人だ。
「彼女は目に余る数々の不敬を繰り返し、我が妃となるリュシルファにとって危険を及ぼす思考を持っていることが判明した」
「!」
皆が耳を傾ける中、何か言いたそうな魔法師団長子息レイムス様。
しかしシグルス様はそのまま続けた。
「しかし先にも言った通り聖属性の使い手は希少。よって処刑するのではなく身分剥奪の上で学園を辞めてもらい、王家と教会の監視下に置くこととなった。具体的には基本は修道女として魔物が活発な地の一番大きな教会にて暮らしてもらい、聖属性の者が持つ魔物の活動を鈍らせる効果を発揮してもらう予定だ。心を入れかえ国のために尽力する姿が認められれば従来の聖魔法使いと同様王都にて保護することとなる。この処遇に異論のある者はいるか?」
「はい!」
目に強い怒りをたたえ手を上げたのは案の定レイムス・フェロガス様だった。
バルム様はそのまま一泊して帰り、私達もバルム様が帰った翌日には王都へと帰還した。
あの日の翌日、バルム様が帰る前に予定されていたジグスさんがシル様の執事となる任命は先延ばしになってしまったが、まぁ今はマリアの言う通りの「執事」にするのは良くないと判断されたのだろうと皆口にはしないが思っていたので仕方ない。
そして、休暇が明ける前々日。
翌日のお兄様の登城に私も付いてくるように、と命令が下された。
お誘いや呼び出しでなく、命令。
なんで堅苦しい命令を…まさかマリアが何か言って私も罪に問われるとか…?
正直シル様を通じて、そして保養地で共に過ごした事でシグルス様ともそれなりの信頼関係が築けていたと、友人というとおこがましいかもしれないが近い関係になれたと思っていただけに一抹の寂しさを感じてしまう。
シル様からも特に何も聞いていないのが辛い。
保養地で粗相をやらかしたとか?
無礼講のパーティもあったし心当たりならいっぱいあるけどお兄様も分からないと少し難しい顔をしている。
何はともあれ行けば分かる!
腹を括るしかない…。
そうしていつもより畏まった服装で、念のためとお父様も同伴する事になり馬車は緊張に包まれたまま登城した。
「やぁ、来たね」
緊張した私たちと違い、いつものにこやかなシグルス様が片手を軽く上げて軽やかに挨拶してくる。
若干拍子抜けする私達に背筋を伸ばせとお父様が軽く小突いてくる。
「あれ?騎士団長も一緒に?」
「シグルス殿下におかれましてはご機嫌麗しく何よりで御座います。本日は愚女が登城の命を受けたと聞き及びまして、親にも果たせる責任があるかと馳せ参じた次第で御座います」
「ははっ相変わらず堅苦しいですね。それにディディは優秀ですよ。咎める為に呼んだのではないのですからそんな言い方しなくて大丈夫ですよ」
「はっ…恐れ入ります。では…何故普通のお呼び出しでなく娘まで登城のご命令を?」
「え?命令?…あー…なんかごめんね。絶対来てくれるように頼んでって伝えたせいかも…そんな強制的な強い呼び出しのつもりじゃなかったんです」
「…もしやレゴス殿にご指示を…?」
「御名答…指示の出し方と相手が悪かったな…」
このレゴスという文官、融通が利かないと城では有名だそうだ。
「まぁ…あとでどちみち確認しようと思ってた内容もあるから丁度いいかもしれない。ブレビリー騎士団長、次世代のお遊戯のような任命式ですが参加頂けますか?」
「殿下のお望みとあらば喜んで参加させて頂きましょう」
このやり取りで私達はピンときた。
以前行い損ねたジグスさんの執事への任命をわざわざ私達を呼んでやり直そうとしているのだと。
意外と律儀というか何と言うか…お兄様と顔を見合わせると『お騒がせだな』と顔に書いてあった。
そうこうしているとバルム様、シル様の他にも魔法師団長子息レイムス・フェン・フェロガスら他数人の側近候補たち、壇上の中央から外れた所には第二王子キュレイ様までいらっしゃった。
なるほど、次世代の有力者候補達だ。
一人世代の違うお父様は見守るように広間の隅へと移動していった。
「さて、そろそろ皆が集まったな」
そう声を上げシル様をエスコートしながら壇上中央へシグルス様が移動する。
壇上へ出入りするのに続く扉が隠されたカーテンの脇にはシル様に続いて入ってきたのかジグスさんが控えていた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。我々の世代における貴重な聖魔法使いの一人となるはずだったマリア・ローデンについてだ」
シグルス様の声に皆が姿勢を正し耳を傾ける。
聖魔法使いはその希少さから一定以上の強さがあれば庶民であっても王家や教会で保護され大事に守られるというのは授業で習った。
そしてマリアの聖魔法の強さは覚醒前でも珍しい強さだったのだ。
マリアの名に魔法師団長子息がピクリと反応を示す。
学園でマリアに明らかに好感を抱いてるメンバーのうち、ここにいる唯一の人だ。
「彼女は目に余る数々の不敬を繰り返し、我が妃となるリュシルファにとって危険を及ぼす思考を持っていることが判明した」
「!」
皆が耳を傾ける中、何か言いたそうな魔法師団長子息レイムス様。
しかしシグルス様はそのまま続けた。
「しかし先にも言った通り聖属性の使い手は希少。よって処刑するのではなく身分剥奪の上で学園を辞めてもらい、王家と教会の監視下に置くこととなった。具体的には基本は修道女として魔物が活発な地の一番大きな教会にて暮らしてもらい、聖属性の者が持つ魔物の活動を鈍らせる効果を発揮してもらう予定だ。心を入れかえ国のために尽力する姿が認められれば従来の聖魔法使いと同様王都にて保護することとなる。この処遇に異論のある者はいるか?」
「はい!」
目に強い怒りをたたえ手を上げたのは案の定レイムス・フェロガス様だった。
25
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
はじまりは初恋の終わりから~
秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。
心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。
生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。
三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。
そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。
「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」
「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」
三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる