ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!?

だましだまし

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席で本を読んでいたシル様に声をかけ、例のお茶の缶を渡す。
「シグルス様からですよ」
と伝えるとほんのりと白磁の肌が色付く。

おや?もしかして…まんざらでもない?

「お礼は手紙でも良いかしら?今伝えるのはちょっと…その…」
困ったように視線が少し下を見つめ彷徨う。
恥ずかしいんですね、うん可愛い。

「シル様、少しつっこんだ事を聞いてもいいですか?」
「何でも聞いてくれていいわよ?」
「シル様はシグルス様の事がお好きなんですか?」
「!?」

シル様の美しい赤い目が僅かに見開かれ頬が更に染まる。
どうやら図星らしい。

「シル様が婚約者候補として最有力だっていうのは私でも知ってます。お気持ちがあるなら何故候補のままなんですか?」
さっきのシグルスの言い方、婚約するのに前向きっぽかった。
多分拒んでいるのはシル様の方だ。

「だって私なんかが…お父様も私より妹の方が相応しいと仰っているもの…」

…ん?

「シル様の妹様って…5つ程お年が下でしたよね…?」
「えぇ…王家にも妹ならシグルス様より弟のキュレイ様の婚約者に据えたいと返事がありまして…」
「せっかく長女でいらっしゃるシル様に婚約の話が来てるのにご両親は妹様を推されたと…?」
「妹は美しく愛らしく賢いの。私とは比べ物にならないのよ…」

シル様がこんな大人しいのって…自己肯定感がめちゃくちゃ低いからなのでは…?

「ご両親はシル様の事はどうおっしゃられてるのですか?」
「どう…えと…昔は王太子妃に選ばれるよう努力しろと言われたけど…今は人形の様で不気味だから出来るだけ表に出るなと言われてるわ」

相変わらずの無表情で淡々と言うけど、親が言ってるのよね?酷すぎない?

「シル様?ご自分が人形姫と噂されているのはご存知ですよね?」
「えぇ、私、無感情だし表情が乏しいから…」
「まぁ確かに人形って部分は表情があまり変わらないって揶揄もあるんですけどね。でも美しいからですよ?」
「え?」
「人形のように、作り物のように美しいから『人形姫』って言われてるんです。お姫様の人形って可愛らしくて美しい物のイメージないですか?」
「…まさか」
「シグルス様とシル様、とても絵になるお二人でお似合いですよ?」
「そ…そんな…私なんて…」
ぽぽぽっと色付くシル様。
ちょっとオロオロあせあせ日頃淡々としたシル様にしては珍しく照れてる!うわぁ~…尊い…!
同性の私でもこんなキュンキュンしちゃう可愛らしさのにシル様のご両親の目は節穴!?

ガタッ!という音に目をやればシグルスが片手を胸に当てこっちを見ている。
その顔は少し赤らみお目々キラキラ…視線の先はシル様だ。

そうよね!動揺してるシル様可愛いですよね!
やっぱりこの2人、両想いじゃない!
もう何ルート選ぶ気なのか分からないマリアに配慮なんかしてられない。
私はお兄様の元へ行き協力を仰いだ。
お兄様、話が途中なのにシグルス様の背中をグイグイと押していく。

(小声)「お兄様!?あとで2人で話させようって意味ですよ!?」
「ディディ?こういうのは早いほうが良い」

シグルス様とお兄様が近付く事で冷静になったのかいつもの『スンッ』とした感じに戻っちゃったシル様。
「ブレビリー殿、王太子殿下の背を押してまで何か御用ですか?」
美人がこの素っ気ない言い方をすると半端なく威圧感が出るのを私はシル様で知った。
「いえ、王太子殿下が少し怖気付いていたので私は背を押して差し上げているのです」
うん、お兄様、物理的に押してますわ。
「私が何に怖気付いていると「ディディに頼りすぎですから!」
被せるなんて不敬ですわよお兄様。
「ディディ…」
あしらうよう私に指示したと思われがちなシル様の冷たく見える視線。
仲良くなった私には分かる。
あれば不安でビビりまくって頼って縋ってきてる時の目と声だ。
「シル様だいじょグエッ」
シグルスをシル様の目の前に押しやったお兄様に今度は私がズルズルと引きづられていく。
「ごめんねディディ。流石にこの狭い所でサッと抱き上げるのは無理だ」
うん、太ましい妹でごめんネお兄様…じゃなくて!
「お兄様?シル様が不安げです!」
「だからってお前がいたら2人が進展しないだろ」

引きづられて行った先には笑いながら親指を立ててるバルム様。
何やらお二人共通で思うところがある様子に離れたお兄様の席から「シル様頑張れ!」と私は視線と念を送ったのだった。
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