14 / 35
14
しおりを挟む
席で本を読んでいたシル様に声をかけ、例のお茶の缶を渡す。
「シグルス様からですよ」
と伝えるとほんのりと白磁の肌が色付く。
おや?もしかして…まんざらでもない?
「お礼は手紙でも良いかしら?今伝えるのはちょっと…その…」
困ったように視線が少し下を見つめ彷徨う。
恥ずかしいんですね、うん可愛い。
「シル様、少しつっこんだ事を聞いてもいいですか?」
「何でも聞いてくれていいわよ?」
「シル様はシグルス様の事がお好きなんですか?」
「!?」
シル様の美しい赤い目が僅かに見開かれ頬が更に染まる。
どうやら図星らしい。
「シル様が婚約者候補として最有力だっていうのは私でも知ってます。お気持ちがあるなら何故候補のままなんですか?」
さっきのシグルスの言い方、婚約するのに前向きっぽかった。
多分拒んでいるのはシル様の方だ。
「だって私なんかが…お父様も私より妹の方が相応しいと仰っているもの…」
…ん?
「シル様の妹様って…5つ程お年が下でしたよね…?」
「えぇ…王家にも妹ならシグルス様より弟のキュレイ様の婚約者に据えたいと返事がありまして…」
「せっかく長女でいらっしゃるシル様に婚約の話が来てるのにご両親は妹様を推されたと…?」
「妹は美しく愛らしく賢いの。私とは比べ物にならないのよ…」
シル様がこんな大人しいのって…自己肯定感がめちゃくちゃ低いからなのでは…?
「ご両親はシル様の事はどうおっしゃられてるのですか?」
「どう…えと…昔は王太子妃に選ばれるよう努力しろと言われたけど…今は人形の様で不気味だから出来るだけ表に出るなと言われてるわ」
相変わらずの無表情で淡々と言うけど、親が言ってるのよね?酷すぎない?
「シル様?ご自分が人形姫と噂されているのはご存知ですよね?」
「えぇ、私、無感情だし表情が乏しいから…」
「まぁ確かに人形って部分は表情があまり変わらないって揶揄もあるんですけどね。でも美しいからですよ?」
「え?」
「人形のように、作り物のように美しいから『人形姫』って言われてるんです。お姫様の人形って可愛らしくて美しい物のイメージないですか?」
「…まさか」
「シグルス様とシル様、とても絵になるお二人でお似合いですよ?」
「そ…そんな…私なんて…」
ぽぽぽっと色付くシル様。
ちょっとオロオロあせあせ日頃淡々としたシル様にしては珍しく照れてる!うわぁ~…尊い…!
同性の私でもこんなキュンキュンしちゃう可愛らしさのにシル様のご両親の目は節穴!?
ガタッ!という音に目をやればシグルスが片手を胸に当てこっちを見ている。
その顔は少し赤らみお目々キラキラ…視線の先はシル様だ。
そうよね!動揺してるシル様可愛いですよね!
やっぱりこの2人、両想いじゃない!
もう何ルート選ぶ気なのか分からないマリアに配慮なんかしてられない。
私はお兄様の元へ行き協力を仰いだ。
お兄様、話が途中なのにシグルス様の背中をグイグイと押していく。
(小声)「お兄様!?あとで2人で話させようって意味ですよ!?」
「ディディ?こういうのは早いほうが良い」
シグルス様とお兄様が近付く事で冷静になったのかいつもの『スンッ』とした感じに戻っちゃったシル様。
「ブレビリー殿、王太子殿下の背を押してまで何か御用ですか?」
美人がこの素っ気ない言い方をすると半端なく威圧感が出るのを私はシル様で知った。
「いえ、王太子殿下が少し怖気付いていたので私は背を押して差し上げているのです」
うん、お兄様、物理的に押してますわ。
「私が何に怖気付いていると「ディディに頼りすぎですから!」
被せるなんて不敬ですわよお兄様。
「ディディ…」
あしらうよう私に指示したと思われがちなシル様の冷たく見える視線。
仲良くなった私には分かる。
あれば不安でビビりまくって頼って縋ってきてる時の目と声だ。
「シル様だいじょグエッ」
シグルスをシル様の目の前に押しやったお兄様に今度は私がズルズルと引きづられていく。
「ごめんねディディ。流石にこの狭い所でサッと抱き上げるのは無理だ」
うん、太ましい妹でごめんネお兄様…じゃなくて!
「お兄様?シル様が不安げです!」
「だからってお前がいたら2人が進展しないだろ」
引きづられて行った先には笑いながら親指を立ててるバルム様。
何やらお二人共通で思うところがある様子に離れたお兄様の席から「シル様頑張れ!」と私は視線と念を送ったのだった。
「シグルス様からですよ」
と伝えるとほんのりと白磁の肌が色付く。
おや?もしかして…まんざらでもない?
「お礼は手紙でも良いかしら?今伝えるのはちょっと…その…」
困ったように視線が少し下を見つめ彷徨う。
恥ずかしいんですね、うん可愛い。
「シル様、少しつっこんだ事を聞いてもいいですか?」
「何でも聞いてくれていいわよ?」
「シル様はシグルス様の事がお好きなんですか?」
「!?」
シル様の美しい赤い目が僅かに見開かれ頬が更に染まる。
どうやら図星らしい。
「シル様が婚約者候補として最有力だっていうのは私でも知ってます。お気持ちがあるなら何故候補のままなんですか?」
さっきのシグルスの言い方、婚約するのに前向きっぽかった。
多分拒んでいるのはシル様の方だ。
「だって私なんかが…お父様も私より妹の方が相応しいと仰っているもの…」
…ん?
「シル様の妹様って…5つ程お年が下でしたよね…?」
「えぇ…王家にも妹ならシグルス様より弟のキュレイ様の婚約者に据えたいと返事がありまして…」
「せっかく長女でいらっしゃるシル様に婚約の話が来てるのにご両親は妹様を推されたと…?」
「妹は美しく愛らしく賢いの。私とは比べ物にならないのよ…」
シル様がこんな大人しいのって…自己肯定感がめちゃくちゃ低いからなのでは…?
「ご両親はシル様の事はどうおっしゃられてるのですか?」
「どう…えと…昔は王太子妃に選ばれるよう努力しろと言われたけど…今は人形の様で不気味だから出来るだけ表に出るなと言われてるわ」
相変わらずの無表情で淡々と言うけど、親が言ってるのよね?酷すぎない?
「シル様?ご自分が人形姫と噂されているのはご存知ですよね?」
「えぇ、私、無感情だし表情が乏しいから…」
「まぁ確かに人形って部分は表情があまり変わらないって揶揄もあるんですけどね。でも美しいからですよ?」
「え?」
「人形のように、作り物のように美しいから『人形姫』って言われてるんです。お姫様の人形って可愛らしくて美しい物のイメージないですか?」
「…まさか」
「シグルス様とシル様、とても絵になるお二人でお似合いですよ?」
「そ…そんな…私なんて…」
ぽぽぽっと色付くシル様。
ちょっとオロオロあせあせ日頃淡々としたシル様にしては珍しく照れてる!うわぁ~…尊い…!
同性の私でもこんなキュンキュンしちゃう可愛らしさのにシル様のご両親の目は節穴!?
ガタッ!という音に目をやればシグルスが片手を胸に当てこっちを見ている。
その顔は少し赤らみお目々キラキラ…視線の先はシル様だ。
そうよね!動揺してるシル様可愛いですよね!
やっぱりこの2人、両想いじゃない!
もう何ルート選ぶ気なのか分からないマリアに配慮なんかしてられない。
私はお兄様の元へ行き協力を仰いだ。
お兄様、話が途中なのにシグルス様の背中をグイグイと押していく。
(小声)「お兄様!?あとで2人で話させようって意味ですよ!?」
「ディディ?こういうのは早いほうが良い」
シグルス様とお兄様が近付く事で冷静になったのかいつもの『スンッ』とした感じに戻っちゃったシル様。
「ブレビリー殿、王太子殿下の背を押してまで何か御用ですか?」
美人がこの素っ気ない言い方をすると半端なく威圧感が出るのを私はシル様で知った。
「いえ、王太子殿下が少し怖気付いていたので私は背を押して差し上げているのです」
うん、お兄様、物理的に押してますわ。
「私が何に怖気付いていると「ディディに頼りすぎですから!」
被せるなんて不敬ですわよお兄様。
「ディディ…」
あしらうよう私に指示したと思われがちなシル様の冷たく見える視線。
仲良くなった私には分かる。
あれば不安でビビりまくって頼って縋ってきてる時の目と声だ。
「シル様だいじょグエッ」
シグルスをシル様の目の前に押しやったお兄様に今度は私がズルズルと引きづられていく。
「ごめんねディディ。流石にこの狭い所でサッと抱き上げるのは無理だ」
うん、太ましい妹でごめんネお兄様…じゃなくて!
「お兄様?シル様が不安げです!」
「だからってお前がいたら2人が進展しないだろ」
引きづられて行った先には笑いながら親指を立ててるバルム様。
何やらお二人共通で思うところがある様子に離れたお兄様の席から「シル様頑張れ!」と私は視線と念を送ったのだった。
54
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!
佐倉穂波
ファンタジー
ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。
学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。
三話完結。
ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。
2023.10.15 プリシラ視点投稿。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる