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1章 こと座流星群極大( Ⅰ )
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「なあ緤那、明日こと座流星群観測会あるんだけど一緒に来ねぇ?」
仕事中にいきなり斗翔がそんな事を言い出した。
「またぁ?…別にいいけど」
「今回の観測は最高なんだよ!
明日は22日だろ?だから月が暗い。
午後3時頃に極大を迎えるけど太陽が沈んだ後でもよく見えるんだよ。だから俺は明日がずっと楽しみだった。
望遠鏡は使えねえけどな!」
「成程ねぇ…分かったわ、どこで待ってればいい?」
「俺用意できたらお前の部屋行くから、仕事終わったらすぐ出れるように今日準備しといてくれ」
「…だから今言ってんのね」
「ご名答。さ、怒られるし続きやるぞ」
「はいはい」
―――流星群、所謂「流れ星」。
今では「流れ星が消えるまでに3回願いをいえば叶う」なんて言い伝えが流行っているが、古代には厄災の兆し、「星が雨のように降ってくる」と建物内に逃げ込む者が沢山居たなどの歴史がある。
その正体は宇宙空間を漂う小天体が地球の大気に突入し地表の遥か上で燃え尽きている光だ。
多くの小天体は0.1mm以下だが、中には数cmを超えるものもある。その中で特段大きく、大気圏突入の時に燃え尽きなかったものが「隕石」となり、地表に落下する。
いわば、これは「星屑の死」なのだ。
何よりも儚く最期に星空を彩るその光景だからこそ、心奪われる者も多いのだろう。
「おーい緤那、こっち用意できたぞ」
「はいはい、今出るからちょっと待って」
荷物を持って部屋を出る。
4月とはいえこんな山奥の夜は本当に冷える。
荷物はブランケット、ココアとコーヒー、お湯を沸かすセット、組立式の小さいテーブルとレジャーシート。
「相変わらず荷物多いな、それ持つよ
今日望遠鏡ないから俺ほとんど荷物持ってねぇし」
「あ、ありがとう」
何気ない優しさがまた少し嬉しくて、つい目を背けてしまう。
「なんでお前訳わかんねぇ方向向いてんだよ、なんかあるのか?」
「別に訳わかんなく無いでしょうが
黙って歩きなさい、私どこに行けばいいのかわかんないんだから」
「はいはい、ったく分かんなぇ奴だ」
…私からしたら斗翔の気持ちも理解出来ないんだけど。
「ん、この辺でいいだろ。
今日はそんなに真夜中まで待っても見える量は減るばっかだと思うから眠くなったら降りようぜ」
「あー極大お昼だったもんね。了解
…ココアとコーヒー」
「コーヒー一択。この時間にココアなんて飲んだらすぐ寝ちまう」
「あいよ、寝ないでね?寝たら私天文台まで生きて戻れるか分からないから」
「それくらい出来るだろ城住まいの姫でもない」
「うるさいなぁ、本当に分からないんだもん」
「はいはい、安心しろ」
そうやって2人分のコーヒーを淹れ、ぼうっと空を見上げているとすぐに流れ星は見え始めた。
「あ、はいブランケット」
「ん、ありがと」
目が夜空に慣れ、沢山の流れ星が見え始める。
私はコーヒーを飲み干すと、ゆっくりとそこに寝そべった。
「あっそれいいな。
…でも寝るなよ?」
「分かってるって」
彼は私のすぐ隣に寝そべって、黙って星空を見上げている。
彼の吐息が少しだけ白くなるほど気温は低く、私は綺麗なほどブランケットにくるまって夜空を眺めていた。
少し目を瞑れば、流れ星の音が聞こえてこないかな
そんな後から考えたら馬鹿げていると思ってしまう気がすることを考え、静かに目を瞑った。
嗚呼、なんだか意識が朦朧としてきたな…
でも斗翔、起こしてくれるでしょ…
ほんの少し、少しだけ…
そこで私の意識が途絶えた。
仕事中にいきなり斗翔がそんな事を言い出した。
「またぁ?…別にいいけど」
「今回の観測は最高なんだよ!
明日は22日だろ?だから月が暗い。
午後3時頃に極大を迎えるけど太陽が沈んだ後でもよく見えるんだよ。だから俺は明日がずっと楽しみだった。
望遠鏡は使えねえけどな!」
「成程ねぇ…分かったわ、どこで待ってればいい?」
「俺用意できたらお前の部屋行くから、仕事終わったらすぐ出れるように今日準備しといてくれ」
「…だから今言ってんのね」
「ご名答。さ、怒られるし続きやるぞ」
「はいはい」
―――流星群、所謂「流れ星」。
今では「流れ星が消えるまでに3回願いをいえば叶う」なんて言い伝えが流行っているが、古代には厄災の兆し、「星が雨のように降ってくる」と建物内に逃げ込む者が沢山居たなどの歴史がある。
その正体は宇宙空間を漂う小天体が地球の大気に突入し地表の遥か上で燃え尽きている光だ。
多くの小天体は0.1mm以下だが、中には数cmを超えるものもある。その中で特段大きく、大気圏突入の時に燃え尽きなかったものが「隕石」となり、地表に落下する。
いわば、これは「星屑の死」なのだ。
何よりも儚く最期に星空を彩るその光景だからこそ、心奪われる者も多いのだろう。
「おーい緤那、こっち用意できたぞ」
「はいはい、今出るからちょっと待って」
荷物を持って部屋を出る。
4月とはいえこんな山奥の夜は本当に冷える。
荷物はブランケット、ココアとコーヒー、お湯を沸かすセット、組立式の小さいテーブルとレジャーシート。
「相変わらず荷物多いな、それ持つよ
今日望遠鏡ないから俺ほとんど荷物持ってねぇし」
「あ、ありがとう」
何気ない優しさがまた少し嬉しくて、つい目を背けてしまう。
「なんでお前訳わかんねぇ方向向いてんだよ、なんかあるのか?」
「別に訳わかんなく無いでしょうが
黙って歩きなさい、私どこに行けばいいのかわかんないんだから」
「はいはい、ったく分かんなぇ奴だ」
…私からしたら斗翔の気持ちも理解出来ないんだけど。
「ん、この辺でいいだろ。
今日はそんなに真夜中まで待っても見える量は減るばっかだと思うから眠くなったら降りようぜ」
「あー極大お昼だったもんね。了解
…ココアとコーヒー」
「コーヒー一択。この時間にココアなんて飲んだらすぐ寝ちまう」
「あいよ、寝ないでね?寝たら私天文台まで生きて戻れるか分からないから」
「それくらい出来るだろ城住まいの姫でもない」
「うるさいなぁ、本当に分からないんだもん」
「はいはい、安心しろ」
そうやって2人分のコーヒーを淹れ、ぼうっと空を見上げているとすぐに流れ星は見え始めた。
「あ、はいブランケット」
「ん、ありがと」
目が夜空に慣れ、沢山の流れ星が見え始める。
私はコーヒーを飲み干すと、ゆっくりとそこに寝そべった。
「あっそれいいな。
…でも寝るなよ?」
「分かってるって」
彼は私のすぐ隣に寝そべって、黙って星空を見上げている。
彼の吐息が少しだけ白くなるほど気温は低く、私は綺麗なほどブランケットにくるまって夜空を眺めていた。
少し目を瞑れば、流れ星の音が聞こえてこないかな
そんな後から考えたら馬鹿げていると思ってしまう気がすることを考え、静かに目を瞑った。
嗚呼、なんだか意識が朦朧としてきたな…
でも斗翔、起こしてくれるでしょ…
ほんの少し、少しだけ…
そこで私の意識が途絶えた。
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