星空と吐息と君の温もり。

切愛

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序章 水星観測( Ⅱ )

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「よし、この辺でいいな。
俺は望遠鏡組み立てとく。緤那はこの時間とはいえまだ冬だし冷えるからあったかくしとけよ。」

そう言って望遠鏡を組み立てていく斗翔。

私には手伝うことが出来ない為、荷物を出してお湯を沸かし、暖かい飲み物を用意し始める。

「ねえ、ドリップコーヒーとココア、コンソメスープならどれがいい?」

「んー、俺はなんでもいいけど…腹減ったしコンソメスープで」

「お腹減ってるのにコンソメスープ飲んだら余計お腹減らない?まぁ了解」

「どうせ緤那のことだからなんか食う物も持ってきてるんだろ?」

「うるさいなぁ私ひとりで全部食べようか?」

「悪かったって」

そんな軽口を叩きながら彼の為にスープと軽食を用意する。

「さ、望遠鏡準備できたぞ。あと…20分くらい待つか」

「はいはい、そのうちにお腹満たしときな」

そう言って私が用意した軽食を平らげていく斗翔。

私はこの時間がたまらなく好きだ。
斗翔の中の星に向ける時間以外の僅かな時間を他の誰でもない私に使ってくれてるというのが嬉しくて、ついはしゃいでしまうしその時の為だけに食べ物を買い込んでいたりする。

「そういえば、お前もうすぐ誕生日?
次で18か、俺の1個下なら。
誕生日が12月19日で、今日が12月3日だから…」

「まだ2週間も先よ。てか覚えてたんだね」

「まあそりゃな。別におかしいことでもないだろ
…っと、そろそろ時間だな」

双眼鏡で水星の位置を確認し、望遠鏡の微調整をする。その動きは段々手馴れてきていて、なんだか場違いな寂しさを覚えてしまう。

「お、見えた見えた…おっけ、緤那いいぞ」

「はいはい…へぇ、結構綺麗に見えるもんなんだ」

「当然だろ?もう何年これやってきたと思ってる」

望遠鏡を挟んだ彼との距離は近くて、目に見える星の輝きよりも彼の吐息を感じてどきどきしてしまう。

「ん、どうした?黙り込んで。そんなに好きか?
…まあ我らがメルクリウスだもんな。そりゃ綺麗か」

「そういえば…メルクリウスって水星だったわね」

「そこ忘れるとこかよ、もう少し関心持て」

「別にそんなの興味無いもの…」

「ははっ、それでこそ緤那だな」

「どういう事よ」

「それくらい天体観測に興味ねぇのにわざわざ毎回付き合ってくれるとことか」

「うっさいわね2度と来ないわ」

「悪かったって…
ほら、そろそろ沈んじまうぞ」

水星が沈むと同時に、私の彼との時間は終わった。
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