告げられない想い

切愛

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「ありがとう」

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品のある紙で包まれたひとつの小包。

ゆっくりと丁寧に包みを開くと、そこには写真立てと一通の手紙が入っていた。
写真立てはずっと彼の本棚に飾ってあった写真立てで、裏には「あの時僕が思ってたこと、今なら分かるでしょ?」と書いてあった。

封筒には「これは見たら燃やしてください。本当の思い出は形に残すべきではないと、誰かに教わりました。」と書かれていた。

静かに封を開け、便箋を手に取る。

--------キリトリ線--------
拝啓
  これを手に取ってる頃は、僕はきっと仕事を失った直後でしょう。早く上の方に新しい仕事を紹介して頂かねば。

僕と過ごした18年間と少しは、楽しかったですか?
僕はとても楽しかったし、素敵な他の誰にも過ごせない日々を送らせて頂いてたと思います。

それはきっと「王国の姫の御目付け役」としての日々ではなく、「貴女の傍に居させてもらった」日々なんだと、半ば勝手に思っております。

僕も貴女もずっと一緒にいて、別れを経験していなかったからきっとどうしたらいいのか分からなくなったんだろうな、と今は思っています。

僕と一緒にいた人生より遥かに長いこれからの人生では、きっと別れも沢山あります。今日はその最初です。

別れは、悪い事じゃありません。
その人と出会ったからこそいずれ別れが来るのを止められないだけです。

だから僕は、この別れは悪いもの、嫌なものだとは微塵も思っていません。

だから貴女も悲しまないで。
別れの先には、きっといい出会いが待っていますから。

この先の貴女の人生が素晴らしく、良き出会いが待っていますように、心から願っております。

                  敬具
--------キリトリ線--------
「ありがとう…本当に、本当にありがとう
今はありがとうしか言えないけど…またいつか」

―――あの頃の思い出を、語り合える時が来ますように。
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