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入学編
第五話 入学式前
しおりを挟む一方その頃モニカの方では。
「ふぅ、なんとかここまで来ることができたわね。長かったわぁ。…………それにしても、魔物がどうしてあんなところに出たのかしら?おかしいわねぇ、何か異常が起きているのかしら?まぁわからないことをいくら考えても仕方ないか。とにかく明日からいよいよ冒険者学校が始まるわ」
モニカはそんなことを考えながら寮内を歩き、自分の部屋を探していた。
そこへ前から上級生らしき女性が歩いて来る。
「あら?あなたは新入生?」
「は、はい、初めまして!(……綺麗な人)今年入学するモニカと言います。さっき寮に着いたところなのですが、今部屋を探していまして……」
女性のモニカでも思わず見惚れてしまう美しさだった。
「はい初めまして。私は学校で学生代表をしているスフィアといいます。部屋ね――」
スフィアは笑顔で挨拶をしたあと「どこ?」とモニカの持っている受付でもらった寮の案内図を覗き見る。
「(ふわぁ、この人すっごい良い匂いがする)」
モニカの案内を見るためにお互いの顔が近づき、スフィアの長く伸びた水色の髪を指で耳にかけながらモニカの前で揺れている。そこには爽やかな香りが漂った。
「あぁここならそこの角を曲がってすぐのところだわ。一緒にお部屋まで行くわね。…………ってどうしたの?」
「…………はっ!い、いえ、お気遣いありがとうございます!」
「いいえ」
少し顔を赤らめたモニカをスフィアは初々しいなと笑った。二人で部屋の前まで歩く。
「(あら、この部屋は?)」
スフィアは部屋を見上げて立ち止まる。
「スフィアさん?どうかしましたか?」
「ふふふ。あぁ、いえなんでもありませんわ。では私はこれで」
「 ? はい、ありがとうございました」
モニカはスフィアの表情を不思議に思いながらも部屋の中に入ると部屋には既に同室者がいた。
「あら、あなたがわたくしの同室者ですね」
「えぇ、そうみたいね。私はモニカ。あなたは?」
「エレナといいます。よろしくお願いしますわ」
エレナと名乗った女の子はモニカと同じ金髪でセミロングの美少女だった。
「よろしく、エレナ。(スフィアさんはとっても綺麗な人だったけど、この子もとっても可愛いわね。それにしてもなんだろう、この子なんだか不思議な感じがするわね)」
そんなことを思いながらモニカはエレナとの対面を果たしていた。
―――翌日、入学式当日。
爽やかな朝焼けが黄金色に街を照らす。静かな街の中で鳥の囀りが響いている。
「ふわぁあああ。んん?ヨハンもう起きていたのか」
「うん、なんだか緊張してあんまり眠れなかったんだ。ついでにちょっと街の中を走ってきたよ。綺麗な街だね」
「まぁなんたって王都だからな。けど最初からそんなに飛ばして大丈夫か?」
「大丈夫だよ。村でお父さんと鍛錬している時もこれぐらいには起きて身体を動かしていたし」
「ふぅん、そっか。ならいいや。 じゃあ用意が出来たら行くか!」
「うん、楽しみだね」
そんなことを言いながらレインと一緒に入学式の会場に向かった。
入学式の会場前では腕章を巻いた上級生と思われる人たちが混雑している新入生の整理をしている。そこにモニカと一緒に居る昨日は見なかった女の子の姿もあった。
「あっ、いたいた!モニカ、おはよう!」
「ヨハン、おはよう」
「ねぇモニカ?そちらの方はどなたでしょうか?」
モニカの横の女の子、エレナがモニカに不思議そうに問いかける。
「あぁ、この子は王都に来る時に知り合った子で、馬車で一緒だったヨハンよ。隣の人は知らないけど」
「おいおい、ヨハン。誰だよこの美少女達は…………ってそちらは!?」
レインがエレナを見ながら驚愕の表情を浮かべたのだが、エレナは即座に指をレインにしか見えないように顔の前で立てる。
「どうしたのレイン?この子はモニカ。馬車で一緒だったんだけど、とっても強いんだよ。もう一人の子はモニカの同室者?友達かな?」
慌てていたレインはしどろもどろになりながらも状況を察し咄嗟に場を取り繕う。
「いやいや、あまりの可愛さに面食らったよ。初めまして、俺はレイン。ヨハンとは寮で一緒なんだ」
「そう、初めましてヨハン、レイン。わたくしはエレナ。わたくしもモニカと同室なのですわ。よろしく」
「うん、よろしくね」
エレナはおしとやかで可愛らしい素敵な子だという印象を受けた。
「おう、よろしくな(あぁ、びっくりした。前もって聞いてはいたけどいきなり鉢合わすとはおもわねぇじゃねぇか)」
レインが何かに驚いた中、ヨハン・モニカ・レイン・エレナとそれぞれ自己紹介を終える。
―――その頃―――
「どうじゃ?今年の新入生は?」
「そうですね、今年は特に豊作だと思いますよ。一部の子からはかなりの魔力を感じます」
「がははっ、それは嬉しい限りだな。鍛えがいがある」
「あまり無茶はしないで下さいよ。ただでさえあなたは厳しいのですから」
「何を言っている!学生の間は死ぬことなんてほぼないのだぞ!!じゃが卒業して冒険者に身をやつしてみろ、依頼の最中に命を落とす事は日常的に見られる。今からしっかり鍛えてやるべきだろ!」
「それはまぁ……そうなのですが、いかんせん校長はやり過ぎることがありますから」
校長と呼ばれた男性が隣にいる女性に声を掛けられ少しばかり不機嫌になる。それを周りの先生が校長をなだめながら入学式の会場に向かって歩いていた。
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