上 下
6 / 724
入学編

第五話 入学式前

しおりを挟む

一方その頃モニカの方では。

「ふぅ、なんとかここまで来ることができたわね。長かったわぁ。…………それにしても、魔物がどうしてあんなところに出たのかしら?おかしいわねぇ、何か異常が起きているのかしら?まぁわからないことをいくら考えても仕方ないか。とにかく明日からいよいよ冒険者学校が始まるわ」

モニカはそんなことを考えながら寮内を歩き、自分の部屋を探していた。

そこへ前から上級生らしき女性が歩いて来る。


「あら?あなたは新入生?」
「は、はい、初めまして!(……綺麗な人)今年入学するモニカと言います。さっき寮に着いたところなのですが、今部屋を探していまして……」

女性のモニカでも思わず見惚れてしまう美しさだった。

「はい初めまして。私は学校で学生代表をしているスフィアといいます。部屋ね――」

スフィアは笑顔で挨拶をしたあと「どこ?」とモニカの持っている受付でもらった寮の案内図を覗き見る。

「(ふわぁ、この人すっごい良い匂いがする)」

モニカの案内を見るためにお互いの顔が近づき、スフィアの長く伸びた水色の髪を指で耳にかけながらモニカの前で揺れている。そこには爽やかな香りが漂った。

「あぁここならそこの角を曲がってすぐのところだわ。一緒にお部屋まで行くわね。…………ってどうしたの?」
「…………はっ!い、いえ、お気遣いありがとうございます!」
「いいえ」

少し顔を赤らめたモニカをスフィアは初々しいなと笑った。二人で部屋の前まで歩く。

「(あら、この部屋は?)」

スフィアは部屋を見上げて立ち止まる。

「スフィアさん?どうかしましたか?」
「ふふふ。あぁ、いえなんでもありませんわ。では私はこれで」
「 ?  はい、ありがとうございました」

モニカはスフィアの表情を不思議に思いながらも部屋の中に入ると部屋には既に同室者がいた。

「あら、あなたがわたくしの同室者ですね」
「えぇ、そうみたいね。私はモニカ。あなたは?」
「エレナといいます。よろしくお願いしますわ」

エレナと名乗った女の子はモニカと同じ金髪でセミロングの美少女だった。

「よろしく、エレナ。(スフィアさんはとっても綺麗な人だったけど、この子もとっても可愛いわね。それにしてもなんだろう、この子なんだか不思議な感じがするわね)」

そんなことを思いながらモニカはエレナとの対面を果たしていた。





―――翌日、入学式当日。

爽やかな朝焼けが黄金色に街を照らす。静かな街の中で鳥の囀りが響いている。

「ふわぁあああ。んん?ヨハンもう起きていたのか」
「うん、なんだか緊張してあんまり眠れなかったんだ。ついでにちょっと街の中を走ってきたよ。綺麗な街だね」
「まぁなんたって王都だからな。けど最初からそんなに飛ばして大丈夫か?」
「大丈夫だよ。村でお父さんと鍛錬している時もこれぐらいには起きて身体を動かしていたし」
「ふぅん、そっか。ならいいや。 じゃあ用意が出来たら行くか!」
「うん、楽しみだね」

そんなことを言いながらレインと一緒に入学式の会場に向かった。


入学式の会場前では腕章を巻いた上級生と思われる人たちが混雑している新入生の整理をしている。そこにモニカと一緒に居る昨日は見なかった女の子の姿もあった。


「あっ、いたいた!モニカ、おはよう!」
「ヨハン、おはよう」
「ねぇモニカ?そちらの方はどなたでしょうか?」

モニカの横の女の子、エレナがモニカに不思議そうに問いかける。

「あぁ、この子は王都に来る時に知り合った子で、馬車で一緒だったヨハンよ。隣の人は知らないけど」
「おいおい、ヨハン。誰だよこの美少女達は…………ってそちらは!?」

レインがエレナを見ながら驚愕の表情を浮かべたのだが、エレナは即座に指をレインにしか見えないように顔の前で立てる。

「どうしたのレイン?この子はモニカ。馬車で一緒だったんだけど、とっても強いんだよ。もう一人の子はモニカの同室者?友達かな?」

慌てていたレインはしどろもどろになりながらも状況を察し咄嗟に場を取り繕う。

「いやいや、あまりの可愛さに面食らったよ。初めまして、俺はレイン。ヨハンとは寮で一緒なんだ」
「そう、初めましてヨハン、レイン。わたくしはエレナ。わたくしもモニカと同室なのですわ。よろしく」
「うん、よろしくね」

エレナはおしとやかで可愛らしい素敵な子だという印象を受けた。

「おう、よろしくな(あぁ、びっくりした。前もって聞いてはいたけどいきなり鉢合わすとはおもわねぇじゃねぇか)」

レインが何かに驚いた中、ヨハン・モニカ・レイン・エレナとそれぞれ自己紹介を終える。




―――その頃―――

「どうじゃ?今年の新入生は?」
「そうですね、今年は特に豊作だと思いますよ。一部の子からはかなりの魔力を感じます」
「がははっ、それは嬉しい限りだな。鍛えがいがある」
「あまり無茶はしないで下さいよ。ただでさえあなたは厳しいのですから」
「何を言っている!学生の間は死ぬことなんてほぼないのだぞ!!じゃが卒業して冒険者に身をやつしてみろ、依頼の最中に命を落とす事は日常的に見られる。今からしっかり鍛えてやるべきだろ!」
「それはまぁ……そうなのですが、いかんせん校長はやり過ぎることがありますから」

校長と呼ばれた男性が隣にいる女性に声を掛けられ少しばかり不機嫌になる。それを周りの先生が校長をなだめながら入学式の会場に向かって歩いていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

【完結】異世界転移特典で創造作製のスキルを手に入れた俺は、好き勝手に生きてやる‼~魔王討伐?そんな物は先に来た転移者達に任せれば良いだろ!~

アノマロカリス
ファンタジー
俺が15歳の頃…両親は借金を膨らませるだけ膨らませてから、両親と妹2人逃亡して未だに発見されていない。 金を借りていたのは親なのだから俺には全く関係ない…と思っていたら、保証人の欄に俺の名前が書かれていた。 俺はそれ以降、高校を辞めてバイトの毎日で…休む暇が全く無かった。 そして毎日催促をしに来る取り立て屋。 支払っても支払っても、減っている気が全くしない借金。 そして両親から手紙が来たので内容を確認すると? 「お前に借金の返済を期待していたが、このままでは埒が明かないので俺達はお前を売る事にした。 お前の体の臓器を売れば借金は帳消しになるんだよ。 俺達が逃亡生活を脱する為に犠牲になってくれ‼」 ここまでやるか…あのクソ両親共‼ …という事は次に取り立て屋が家に来たら、俺は問答無用で連れて行かれる‼ 俺の住んでいるアパートには、隣人はいない。 隣人は毎日俺の家に来る取り立て屋の所為で引っ越してしまった為に、このアパートには俺しかいない。 なので取り立て屋の奴等も強引な手段を取って来る筈だ。 この場所にいたら俺は奴等に捕まって…なんて冗談じゃない‼ 俺はアパートから逃げ出した!   だが…すぐに追って見付かって俺は追い回される羽目になる。 捕まったら死ぬ…が、どうせ死ぬのなら捕まらずに死ぬ方法を選ぶ‼ 俺は橋の上に来た。 橋の下には高速道路があって、俺は金網をよじ登ってから向かって来る大型ダンプを捕らえて、タイミングを見てダイブした! 両親の所為で碌な人生を歩んで来なかった俺は、これでようやく解放される! そして借金返済の目処が付かなくなった両親達は再び追われる事になるだろう。 ざまぁみやがれ‼ …そう思ったのだが、気が付けば俺は白い空間の中にいた。 そこで神と名乗る者に出会って、ある選択肢を与えられた。 異世界で新たな人生を送るか、元の場所に戻って生活を続けて行くか…だ。 元の場所って、そんな場所に何て戻りたくもない‼ 俺の選択肢は異世界で生きる事を選んだ。 そして神と名乗る者から、異世界に旅立つ俺にある特典をくれた。 それは頭の中で想像した物を手で触れる事によって作りだせる【創造作製】のスキルだった。 このスキルを与えられた俺は、新たな異世界で魔王討伐の為に…? 12月27日でHOTランキングは、最高3位でした。 皆様、ありがとうございました。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...