上 下
23 / 32

国境へ

しおりを挟む
「間もなく検問に入る」


ローウェンが私の耳元でソッと囁いた。

私は、ギュッと手を握りしめて気合いを入れる。
緊張で顔が強ばってしまうのは仕方ないことだと思う。

ローウェンも私の緊張感が伝わったのか、手を包み込んで、おでこにチュッとキスを落とした。

「そんなに緊張してると却って疑われちゃうからね?力抜いて」

ニコリと微笑む顔に、キュンと胸に突き刺さる。

ローウェンは本当にカッコいい!


「う、うん」


私は、握っていた手を広げて、ブラブラとさせて緊張がほどけてることに気付いた。
やっぱり、ローウェンがいると落ち着くな。

何となく大丈夫って思えるから不思議。


検問には、イリードの兵士がかなり多くいて、検問に時間をかけていたけど、カーゴイルの商会はやはり有名で、検問も簡易的なものだった。
ただ男性の髪と瞳のチェックは細かく見ていて、ローウェンの茶髪は染めていることに気付かれていなくてホッとした。

そんなわけで、無事に検問を通過し、国境を超えることができた。

「わぁ!ついにアルソードに着いたのね!」

私は、歓声を上げた。


ついに、私達は、イリードを抜け出せたのだった。

私は、まだアルソード国を何も知らないけど、ローウェンが住んでる国だと思うと、楽しみだなって思った。
どんな人達が住んでいるのか、どんな食べ物があるのか、異世界のこの国で、私は生きていく覚悟が出来ているとはまだ言えないけど、好きになる努力はしていきたい。
とりあえず、大きな都市まで行って、ローウェンの伝手を頼りに働かせてもらって、お金を稼がなきゃね!と
働く意欲も湧いてきた。


アルバートが御者を引き受けてくれてるので、馬車の荷台には、私とローウェンの二人きりだ。
冒険者二人のうち、1人ずつ配置されるはずだったけれど、ローウェンが私と二人きりがいいとグズったので、こういう配置となった。
冒険者の二人は、苦笑いしていたけど、ちょっとホッとしていたようにも見えたのは、ローウェンが貴族だからかなって思う。


「ローウェン、今から向かうところは大きな都市だったりする?」

「ああ、中央にあるこの国一番の大都市だから、かなり大きいよ」

「わぁ、じゃ私でも働けるとこありそうね!」

私が嬉しそうに言うと、ローウェンがピクリと固まってしまった。

「ローウェン?私が働くの難しいかな?」

「あ、んー?そういえば、伝手を紹介するって言ってたね。レイナはどんな仕事をしたいの?」


「できれば、医療に関わる仕事につきたいけど、ここは怪我をすると教会に行くと言ってたし、あまり私が役に立つことは難しいと思うの。だからとりあえず、働かせてもらえるところがあるのであれば極力文句は言うつもりないのよ」

ローウェンが、フムフムと頷いて、ニコリと笑った。

「レイナにいい仕事があるよ」

「ほんと?どんな仕事?」

「僕のお嫁さん」

「!?」

「僕と結婚して欲しい」

それって、プロポーズ?

「お、お、落ち着いて!」

「落ち着くのはレイナだよ」

クスリと笑うと、ローウェンが私の両手を握った。

「僕は、本気だよ。君を一時も離したくない。君が望む物は僕が全部叶えるよ。ただ、外に働かずに、僕の側にずっと居て欲しいんだ」


ローウェンは、真剣だった。
私を望んでくれている・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...