可愛いあいつは男の娘

ケセラセラ

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デート

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俺は、隣の美少女は翔だと分かっているのに、先程から心臓が痛いほどドキドキしている。

「ヒロト、さっきからこっちばっか見過ぎ!」
翔が腕を小突くが、ちっとも痛くないし、触れてくれるのが嬉しい。

「翔、手を繋いでもいいか?」
「えっ!なっ!はっ?」
面白いほど、赤くなったりして慌てている。

「ん!」

翔は、赤い顔をしながらも手を差し出した。
ツンデレが、また大翔には堪らない。

「はぁ、可愛いすぎるぞ」

俺の心臓が今日一日持たない気がする。それくらいの破壊力があるが、デートを辞めるという選択肢はない。例え、心臓発作で死ぬと分かっていても絶対に辞めない。
翔は、女の子の格好で来てくれたが、そうお願いしていいわけではないだろう。
もしかしたら、最初で最後ということもあるかもしれない!

そう考えると、今日の翔とのデートは、どこに行こうか?映画?遊園地?水族館?デートっぽいコースを考えてみる。
ずっと、手を自然と握っていて、1日楽しめるとしたら、やはり遊園地かな?
最後は、観覧車でキスをするシチュエーションは外せないな!

よし!

「翔、今日何か考えてるか?」
きっと可愛い服で着て見せるだけで何も考えてないだろうなと思いつつ、聞いてみる。
「う、別に。見せたらすぐに帰るつもりだったからな」
やはりな。
「これから何か用事でもあるのか?」
多分ないな。
「特にはないけど」
よし!
「なら、今から遊園地に行かないか?せっかく翔が可愛い女の子になったんだから、今日は俺の彼女としてデートしてくれないか?」

俺は、真っ直ぐに翔の目を見た。
見る見る赤くなってはいるが、拒否するような目はしていない。

「ま、まあ暇だったから、しょうがないな。付き合ってやるよ」
うん。ツンデレだな。
「付き合ってくれて嬉しいよ。彼女、としてでいいんだよな?」
俺は敢えて、そこを強調する。
もちろん過多なスキンシップを許してもらう為に、だ。

「え、あ、う、うん。まぁ、しょうがねえな」
ふふふ。許可をもらった。
あまりに可愛いさに、俺の理性がどこまで持つのかわからないし、心臓が吹き飛ぶかもしれないが耐えろ、俺!


車がない俺たちは、スマホで行き先を検索して、電車で2つ駅先の歩いて15分程の遊園地に決めた。

お金は、何とかなるだろう。来月分を前借りしてある。
電車に乗ってると、チラチラと男どもの視線が翔に向かっているのを感じる。
スラリとしたモデルのようなスタイルに、とんでもない美少女だ。黒目が大きく釣り目にドキリとしない男は居ないだろう。

俺は、今日一日絶対に翔から離れないようにしないとな、と改めて誓う。
こんなに可愛いのだから、目を離した隙に持っていかれるに違いない。

そう思うと翔が男で良かったと思う。

ジィッと翔を見つめていると、翔もこちらを見る。黒目に俺が写っている。
翔から見たら俺なんてどんな風に見えてるんだろ?
そのまま黙っていると、翔がニヘラと笑った。
「お前のこと、チラチラ見てる女の子多いな。気付いてるか?」
「え、俺?お前のこと見てる男がいるのは気付いてるけど」
「は?男?やめろー!男なんてむさ苦しい。ヤダヤダ」
う、俺もその男の1人なのだが。
俺が落ち込むと、珍しく翔が慌てた。

「じゃなくて、お前がカッコいいからモテてるの気付いてるのかなって思ったんだよ」
「カッコいい?え、翔も俺の事、カッコいいって思ってくれてるの?」
他はどうでもいい。モテなくても全く構わない。
そう、翔が俺をカッコいいと思ってくれてるかが大事なんだ。
「な、なんだよ?言わすのか?お前は、背も高くて頭もいいし、スポーツもできるし、顔もカッコいいじゃんか!そんなの言われ慣れてるだろっ!」


褒めすぎだろ。誰のことだよ。
だけど、翔がほっぺを赤くしながら褒めてくれるなんて、嬉しすぎる。
なんだ?今日俺死ぬのかな?

「それを言うなら、翔は自分の可愛いさ分かってるわけ?俺を褒めて殺しにかかってるの?」
「な、なんだよ!可愛いと思ってないし、殺しにもかかってないっつうの!」
「はぁ、今もここで翔にキスしたくて堪らないのを我慢してる俺ってすごくないか?」
「す、すぐにそれだよ。全然すごくないよ。もっと他に言うことないわけ?」

他?

「翔、大好きだ」

俺が一番に言いたいことはそれぐらいしかない。
翔が耳まで顔が赤くなった。

「も、もう!もう!うー・・。ヒロトはズルい。俺の気持ちなんて聞かないで、可愛だの、好きだのって。俺の気持ちが追いつかないだろうが・・・」
翔は、目元を潤ませて、俺を見上げて睨みつける。
「ご、ごめん。俺、思ったことすぐに言っちゃうの悪いな。お前の気持ちを無視してるわけじゃないんだけどさ。全然、俺お前の気持ちが俺のとこまでくるの急いでないからさ。ゆっくりでいいよ」

コクリと頷く翔がまた愛しい。


俺たちは、手を繋いで、電車を降りると、ゆっくりと遊園地まで歩いた。
特に話すことはしなかった。
翔は、俺の手を握ってくれてる。
それが今の俺の幸せだ。誰にも譲るつもりはない。

遊園地は、かなり人混みでアトラクションに乗るのに待ち時間30分くらい。某有名な遊園地よりは早いが、この待ち時間は通常なら退屈で辛いが、今日の俺は、この待ち時間でさえも、翔と手を繋げてる幸せを噛み締めていた。

デートは初めてだが、世のカップルはみんなこんな幸せな気持ちを持っていたんだなぁとしみじみ思う。
「翔、俺さ、今世界で一番幸せな自信あるよ」
「また寝ぼけたことを」
「俺、翔とこうしてデートしてるだけで幸せを感じてるんだよ。俺明日が寿命でもなんかいいって思えるんだよ」
例えだけど、半分は本気だ。
「バカなこと言うなよ!俺のことはどうするんだよ!先に死んだらただじゃおかないからな!」
翔は、本気で怒っていた。
「そ、そうか。ごめん、翔を残して死ぬわけにはいかないよな。ずっと側にいるよ」
なんかプロポーズのようなこと言ってるな、俺。
翔もそう思ったのかまた赤くなっている。
「あ、え、う、し、知らないっ!」

やっぱり、遊園地の待ち時間はいいな。

人が賑わう遊園地、天気も良くて、好きな人と待つ時間は最高だ。

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