可愛いあいつは男の娘

ケセラセラ

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井上翔は黒猫に似ている

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井上翔は、あまり人とつるまない。
1人でいることが多いが、ふと気付くと側に居たりする。

近寄ると逃げたり、離れると寂しくて寄ってくるところは、猫にそっくりだ。

俺は、黒髪をツンツンとワックスで立たせて、目尻が少し上げた初対面の時に黒猫の印象があったことを思い出した。

ふと、あの子に会いたいと思ってしまった。


翔を見る。

うん、可愛い。


だが、あの子が初恋であることは間違いない。
また会えないだろうか?

俺は、知らないうちにため息が増えていた。


しかし、俺のそんな態度に気付き翔が怒りを爆発させた。
「なんだよ!最近ため息ばっかりつきやがって。なんかあるなら相談くらいしろよ。俺のこと好きとか言ってるくせに、そういうことは言わないとか、心配させるなんてもってのほかだろっ!」

要は、心配させるなよ。俺に相談しろよ。と言ってくれてるのだろう。

ーうん、好きだ。


最近、翔は俺に懐いてくれたように思う。人に懐かない猫が自分にだけ懐いてくれたような喜びを感じるな。

ふふふ。自然と幸せで笑みが出る。

翔が不気味なものを見るような顔でしかめてみせた。
「なんだよ?気味が悪いぞ。思い出し笑いか?何を考えてんだ?早く言えよ」

「わかった、わかったって。言うよ。俺さ、翔の女の子の姿に一目惚れしたんだよね。もちろん、翔は翔のままで可愛いくて好きなんだけど、たまに女の子の翔に会いたくなってさ。もう会えないのかと思ったら、ついさ。ごめんな?」

翔のことを否定してるわけではないけど、翔の女の子姿に会いたくなんて、多分、翔は気分が悪いだろうなと思って、言えなかったし、言ったあとも少し気まずい。

「あのな!俺そんなことで怒ったりしないよ。お前そんなことで悩んでたの?はぁ・・」

翔は、少し考える仕草をしてこっちを見た。

「日曜日、ヒロトさ、暇か?」
「え、ああ。暇だよ」
「じゃあ、駅前に10時に待ち合わせな」
「お、おお。わかった」

も、もしかしてデートか?しかし、デートか?なんて聞いたら、絶対に「デートなわけあるか!」って言って、もうお前とは外で会ってやらんとかいいそうだ。

俺は、喜びで小躍りしたかったが、何が影響して「やっぱ辞める」と言われるのが恐いので静かに喜びを噛みしめる。






そして、日曜日。


30分も早く待ち合わせ場所に着いた俺は、今か今かと翔を待っていた。
「お待たせ。ヒロト待った?」
後ろから可愛いらしい声を掛けられ、慌てて振り向くと、そこにはフレアスカートをひらりとひらめかせて、小首を傾げ、小悪魔的に微笑む翔の姿がそこにあった。

めちゃくちゃ美少女の姿に、俺は再度心臓を撃ち抜かれた。
可愛い過ぎて、やばいだろ?

「翔!!やばいよ、可愛い過ぎて心臓がドキドキして死にそうだ」

俺は感激して、翔の体を抱き寄せ、ほっぺを擦りよせた。
「お、おい!離せよっ、ここ駅前だぞ!」

ああ、そうだ。危ない。危ない。

しかし、腕の中にいる少女は頬を染め、ちっとも嫌そうに見えない。
少しツリ目が、ギロリと睨んでもちっとも怖くないし、逆にご褒美のようにも思える。

「はぁ、可愛すぎて離せないよ。今日の服は、前の時と雰囲気が違うな」
「姉貴が無理やりこれにしろって着させられたんだよ」
また姉貴か、どんな姉さんなのか気になるな。
「今度紹介しろよ。翔の姉さんなら俺も挨拶しておきたいし」
「は、はあ?お前、まさか姉貴に俺のことくれとか言うんじゃないだろうな?」
「友達だって紹介してくれるのかと思ったら、婚約者として紹介してくれるんだ?」

翔は、んなっ!とかまた赤くなったりして涙目だ。
安定の可愛さだな。

「お、俺はだな!」
「ごめん、ごめん、ちゃんとプロポーズしてから挨拶するから許してよ」
「そ、そそそ、そんなこと言ってるんじゃないよ!」
目を釣り上げて、睨み付けてくる愛しい人は、口元が嬉しいとニマニマしている。

頭をポンポンと撫でてやると、不本意そうな顔をしながら大人しくしている。


やはり、俺の愛しい人は、黒猫っぽい。


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