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傀儡子の館編

30話 旅立ちのサウスサウサ

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 早朝、俺達の元に、伝書鳩のような鳥が手紙を届けた。
 二通の紙があり、一枚目には、俺が単独でディアボルボアを討伐したことを称えるとかなんとか書いてあった。
 実をいうと、書いてある単語が難しくて半分くらい読めなかったのだ。この世界の文字は難しい。
 エリュに読んでもらうと、とにかく、実際に会ってみたいから城に来いと書いてあるらしい。
 もう一枚の紙は、王都の通行許可証だった。

 一刻も早く王都へ出向かなければいけない気もするが、俺はこの街で、やりたいことがあった。

「と、いうわけで、今日は奢らせてくれ、ズウル」

 俺は今まで何かと助けてくれた恩人、ズウルに、ささやかなお礼をしようと誘った。
 勿論、これだけじゃ対等な対価とは言えないけど。

「ふん、お前達駆け出しに奢られるほど、腐っちゃいねぇよ」
「いいから奢らせてくれって。じゃなきゃ俺の気が晴れない」

 お互い譲ろうとせず、中々話進展しない。 
 そう思っていると、ズウルがあることを提案する。

「んなことより、一つ頼まれてくれねぇか?」
「ん?」
「実は王都に知り合いがいるんだが、手紙を届けるのは結構金がかかるもんでな、ってことで、王都に行く次いでに俺の手紙を運んでくれねぇか?」
「......それくらいなら、いくらでもやるけどよ」
「決まりだ」

 なんか、ズウルにのせられたみたいで納得出来ないが、まぁいいか。
 これで、ほんのちょっぴり恩返しが出来る。

「そうだ、これはあくまで噂なんだが......」

 するとズウルはキョロキョロと辺りを見渡した。
 まさか危ない話ではないだろうか。

「最近、デモック帝国が魔王軍とつるんでるって噂だ。気を付けろよ」

 ズウルはひそひそとそう教えてくれた。
 相変わらずお節介だな。勿論、良い意味で。

「成る程、それはきな臭いな。でもま、今回行くのはルンバスの王都だから、今は大丈夫だと思うけど、気を付けとくよ」

「おう」

 翌日、ズウルから手紙を受け取った俺は、ギルドから貰った地図を手にサウスサウサから旅立った。
 
「バウバウッ!」

 ......勿論こいつも一緒で。

「久しぶりだな、ラック」

「バウッ!」

 俺は思わず顔に手を当てる。
 どうも、俺はこいつに好かれていない。

「それじゃあ、行きましょうか」

 エリュの号令で、俺達は歩き始める。
 懐かしのこのメンバーでの旅が、再開したのだった。
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