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二章ー止まない街ー
44 赤眼の執事
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連れ去られたフーロちゃんを助けるべく、レアルの領主邸に侵入した俺達レジスタンス。
だけど潜入した瞬間に、出口は塞がれユズリとも分断されてしまう。
そして現れた執事の老爺が、仕来りだと言う事で突如自己を紹介して来る。
だが彼の名乗りが終わる頃には、俺は右足で床を蹴り出し黒剣を振りかぶっていた。
「うぉぉぉああああっ!」
タイルで敷き詰められた床を破壊するも、リリバーは後方へ跳躍し直撃を避ける。
しかし、俺の黒剣の特殊能力により次元の裂け目が現れ、老爺を引き込む力を生んだ。
「ふぬっ……!」
前回戦った金髪軽率男はこの気流からあっさり抜け出していたが、彼は勢いのままに引き摺られている。
別次元へ飛ばされる前に裂け目は閉じてしまうが、動きを制限させただけで充分だ。
俺はまたもタイルを蹴り込み、リリバーへ黒刃を向ける。
吸い寄せられるように斬りつけるも、肌に触れる寸前で彼のエストックに阻まれた。
やはり一筋縄ではいかないようだ。
「くそっ……!」
斬撃の途中で止められた為異空間も出来ず、一旦飛び退き距離を取る。
「ふむ、中々の剣筋ですがそれでは……おや?」
何かを口走ろうとした所で、老爺は黒剣に目を向けて首を傾げた。
まじまじ一秒も見つめたところで、いきなり目を見開く。
「ななっ……! それは、あのお方の……!?」
だからあのお方って誰なんだよ!
と叫びたかったが、今はそれを言ってられる時間は無い。
今は兎に角、先ずフーロちゃんを見つける事。次にユズリとの合流だ。
ユズリの事もかなり気がかりだが、彼女は俺が心配するのが失礼な位に強い。唯一の懸念は大勢に囲まれる事だが……。この屋敷にて多くの人数が滞在しているとは思えない。
兎に角、今は信じて前に進んでいくのだ。
「らァっ!」
改めて覚悟を決めた俺は、目の前を切り裂いて別次元を開く。
リリバーは顔を顰めつつも今度は剣を床に刺しこみ、その場で踏みとどまった。
しかし、その行動は織り込み済みだ。
俺は裂け目を飛び越えるよう跳躍し、再びその刃を老爺に向けた。
これは流石に避けれないだろ。と思ったが、今度は身を捩られもう少しの所で躱される。
もどかしさに歯噛みすると、今度はいつの間にかエストックを引き絞っていたリリバーが、深みのある剣呑な目線を送って来た。
バネを縮めたかの如く溜められたそれは、枷が外れたかのように腹目掛けて飛び出してくる。
「ぐがっ……!」
恐ろしい速さの突きが、革の防具を破り俺の腹を穿った。
痛みを堪えて、何十歩も後ろへと下がる。
「ぐっ……くぅ……っ」
ただでさえ言葉にならない痛みだが、それでも今はアドレナリンによってだいぶ抑えられている筈だ。
つまり、臨戦態勢が終わってしまえば俺は動けなくなる。ここは早々にケリをつけなければ。
「……ふむ、剣は一級品であっても、貴方自身はまだまだ脆い。勇者でありながら使用人である私めが配属されたのも納得ですな」
中々煽る様な事を言ってくれるが、口車に乗って我を忘れては何もかもが瓦解する。
考えろ。相手の武器を把握して、それをどう攻略するのかを。
俺は神経が擦り切れそうになるほど頭を回転させ、とある案が浮かび上がって来る。
上手くいくかは分からない。だが決定打になりうるチャンスが来たら撃ち込む。今はそれだけを考えるのだ。
「う、ぉおおおおおおっ!」
咆哮しつつ、緩やかに剣を振りかぶる。
足の速度も緩め、敢えて隙を作らせた。
すると狙い通り、リリバーは再びエストックを引き絞る。
そして、彼の間合いに入る直前。つまり、エストックが放たれる正にその瞬間……。
お互いのすぐ間を切り裂き、別次元の狭間を開けた。
「ぬぐっ!? し、しまった……!」
彼はエストックごと次元の裂け目へと吸い込まれていく。
だが俺は、彼の右手が吸い込まれたところで腕を切断した。
「ゔっ……!」
老爺が低い声を漏らし蹲った所で、裂け目と吸引力は無くなる。
あのまま見ていても別次元へ送れていただろうが、正直人型に対してそれを行う事に躊躇いを感じていた。
甘いと言われるかもしれないが、あの次元へ行っしまえば必要以上に苦しむのだ。それを俺の手で行う度胸は残念ながら無い。
「あんたはそこで蹲ってろ。俺は……先へ行かせてもらう」
ぎりぎりの戦いだった癖に偉そうに嘯いた俺は、扉へ向かう最中にとある不安が過ぎった。
他のレジスタンスの仲間は……どうなっているのだろうか。
だけど潜入した瞬間に、出口は塞がれユズリとも分断されてしまう。
そして現れた執事の老爺が、仕来りだと言う事で突如自己を紹介して来る。
だが彼の名乗りが終わる頃には、俺は右足で床を蹴り出し黒剣を振りかぶっていた。
「うぉぉぉああああっ!」
タイルで敷き詰められた床を破壊するも、リリバーは後方へ跳躍し直撃を避ける。
しかし、俺の黒剣の特殊能力により次元の裂け目が現れ、老爺を引き込む力を生んだ。
「ふぬっ……!」
前回戦った金髪軽率男はこの気流からあっさり抜け出していたが、彼は勢いのままに引き摺られている。
別次元へ飛ばされる前に裂け目は閉じてしまうが、動きを制限させただけで充分だ。
俺はまたもタイルを蹴り込み、リリバーへ黒刃を向ける。
吸い寄せられるように斬りつけるも、肌に触れる寸前で彼のエストックに阻まれた。
やはり一筋縄ではいかないようだ。
「くそっ……!」
斬撃の途中で止められた為異空間も出来ず、一旦飛び退き距離を取る。
「ふむ、中々の剣筋ですがそれでは……おや?」
何かを口走ろうとした所で、老爺は黒剣に目を向けて首を傾げた。
まじまじ一秒も見つめたところで、いきなり目を見開く。
「ななっ……! それは、あのお方の……!?」
だからあのお方って誰なんだよ!
と叫びたかったが、今はそれを言ってられる時間は無い。
今は兎に角、先ずフーロちゃんを見つける事。次にユズリとの合流だ。
ユズリの事もかなり気がかりだが、彼女は俺が心配するのが失礼な位に強い。唯一の懸念は大勢に囲まれる事だが……。この屋敷にて多くの人数が滞在しているとは思えない。
兎に角、今は信じて前に進んでいくのだ。
「らァっ!」
改めて覚悟を決めた俺は、目の前を切り裂いて別次元を開く。
リリバーは顔を顰めつつも今度は剣を床に刺しこみ、その場で踏みとどまった。
しかし、その行動は織り込み済みだ。
俺は裂け目を飛び越えるよう跳躍し、再びその刃を老爺に向けた。
これは流石に避けれないだろ。と思ったが、今度は身を捩られもう少しの所で躱される。
もどかしさに歯噛みすると、今度はいつの間にかエストックを引き絞っていたリリバーが、深みのある剣呑な目線を送って来た。
バネを縮めたかの如く溜められたそれは、枷が外れたかのように腹目掛けて飛び出してくる。
「ぐがっ……!」
恐ろしい速さの突きが、革の防具を破り俺の腹を穿った。
痛みを堪えて、何十歩も後ろへと下がる。
「ぐっ……くぅ……っ」
ただでさえ言葉にならない痛みだが、それでも今はアドレナリンによってだいぶ抑えられている筈だ。
つまり、臨戦態勢が終わってしまえば俺は動けなくなる。ここは早々にケリをつけなければ。
「……ふむ、剣は一級品であっても、貴方自身はまだまだ脆い。勇者でありながら使用人である私めが配属されたのも納得ですな」
中々煽る様な事を言ってくれるが、口車に乗って我を忘れては何もかもが瓦解する。
考えろ。相手の武器を把握して、それをどう攻略するのかを。
俺は神経が擦り切れそうになるほど頭を回転させ、とある案が浮かび上がって来る。
上手くいくかは分からない。だが決定打になりうるチャンスが来たら撃ち込む。今はそれだけを考えるのだ。
「う、ぉおおおおおおっ!」
咆哮しつつ、緩やかに剣を振りかぶる。
足の速度も緩め、敢えて隙を作らせた。
すると狙い通り、リリバーは再びエストックを引き絞る。
そして、彼の間合いに入る直前。つまり、エストックが放たれる正にその瞬間……。
お互いのすぐ間を切り裂き、別次元の狭間を開けた。
「ぬぐっ!? し、しまった……!」
彼はエストックごと次元の裂け目へと吸い込まれていく。
だが俺は、彼の右手が吸い込まれたところで腕を切断した。
「ゔっ……!」
老爺が低い声を漏らし蹲った所で、裂け目と吸引力は無くなる。
あのまま見ていても別次元へ送れていただろうが、正直人型に対してそれを行う事に躊躇いを感じていた。
甘いと言われるかもしれないが、あの次元へ行っしまえば必要以上に苦しむのだ。それを俺の手で行う度胸は残念ながら無い。
「あんたはそこで蹲ってろ。俺は……先へ行かせてもらう」
ぎりぎりの戦いだった癖に偉そうに嘯いた俺は、扉へ向かう最中にとある不安が過ぎった。
他のレジスタンスの仲間は……どうなっているのだろうか。
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