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序章ー転移ー
13 パーティーはすぐ飽きる。
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「ぐっ……!」
あれから、かなりのゴブリンを迎え撃った。
足元は死体やら血やら体液でぬかるみ、敵は時が経つにつれ増えていく。
終わりの見えない戦いに、気がおかしくなりそうなる。
しかし、後ろにいる女性の為にも、諦める訳にはいかない。
諦める訳には……。
「ふぐっ……!」
剣を振るった瞬間を見計らったゴブリンに肩を蹴られ、膝をつく。
それを好機と受け取られ数体に袋叩きにされそうになるが、一体を体当たりで吹き飛ばし、もう一体は剣で腹を横に薙って地に倒れさせる。
「きゃああああああっ!」
女性の悲鳴に目を向けると、ゴブリンに足蹴にされる光景が私を襲った。
「そんなっ……」
守り切れなかった絶望からか、戦闘中にも関わらず呆けた私に相応の罰が振り下ろされる。
ゴブリンに腹を蹴られ、嘔吐く暇もなく今度は背中を棍棒で叩かれる。それにより、本格的に膝を着いた。
「グヒィ……!」
ゴブリンに……
横腹を蹴られ頭を殴られ脚を棍棒で殴打されナイフのようなものを突き立てられた。
「ぐ、えっ……!」
そして、仰向けにされた私は、両手足をそれぞれ一体のゴブリンに掴まれる。
さらに、残りのゴブリンがナイフ等を使い、強引に装備を剥がし始めた。
「ひ、ぐっ……」
私は悟った。このモンスター共は……。
私の誇りだけでは飽き足らず、心までも殺そうとしているのだ。
一枚ずつ衣服が剥がされ、少しずつ肌が露出していき、遂に殆ど下着姿にまで剥かれる。
もう、無理だ。ここまで来ては。
なんと無様だろうか。息巻いて助けになど来たくせに、私自身が敗北を喫し心までも征服されるとは。
自責や恐怖、様々な感情が綯い交ぜとなり、溢れ出たものが涙として身体に現出される。
……悔しくて、憎い。
「だ、誰か……ぁっ…………たすけ……」
震える声で、誰かを求めてしまう自分自身が。
「そ、こっ、迄だァァアアアアアアッ!!」
刹那、硝子を引き刺すような不快な斬撃音が、私の耳を深く付いた。
「グギュアアアアッ!?」
「ギュゴォオオオオオオオオ……!?」
次に見えた光景は、何かに引かれていくゴブリン達とその断末魔。
この奇怪な現象は見た事がある。これは……。
「やれやれ。目立つのは嫌いなんだがな」
妙な言葉遣いのタクマが、剣を地面に突き刺しそう言った。
「宴じゃああああああああっ!」
と、言うことで。村人を無事連れ戻した事を祝して宴が開催されることになった。
「勇者殿……この度は本当に世話になった。感謝してもしきれんが、せめて今宵は宴を楽しんで下され」
村長の言葉に対し、俺はいやいやと首を振る。
「村人が無事帰ってこれたのは、ユズリの手柄ですよ。俺はたまたま通りかかった所彼女がピンチだったので助けただけです」
謙遜でも何でもなく、これは紛れもない事実だ。
正確にはたまたま通りかかったの部分のみは虚偽だが……。それは置いておくにしても、今回の件は彼女の手柄であることに違いはない。
ゴブリンの住処を特定したのも、村人を救おうとしたのも彼女なのだ。
俺はただ、ユズリの痕跡を追い、彼女が戦っている間に隠れていたり潜んでいたゴブリン達をちくちく異次元送りの刑に処していただけなのである。
まぁ、最後は割と派手に戦ってしまった挙句、倒した後の常套句まで発してしまった訳だが。
「あ、あの、タクマ……」
あれこれ考えていると、いつの間にか接近していたユズリに声をかけられる。
「ん?」
「……ありがとう。貴方が居なきゃ、私……」
俯く彼女に対し、俺は敢えて突き放すような言葉を選ぶ。
「……だから言ったでしょ。出来ない事は安請け合いするな、って」
それを聞いたユズリは、更に表情を暗くした。
最も、騎士として命を懸けた戦いを幾度もした彼女に本来こんな上から目線のことを言うのはお門違いだろうが。
今後このような事態に発展して欲しくない。そんなただのエゴを理由にユズリに追い討ちをかけた。
「……ごめんなさい」
謝って、瞳を潤わせる彼女をみて思った。
やっちゃったぁ……、と。
まぁ十分注意したし、そもそも俺がそんな事言わずとも反省していたろうから、せめて今だけは宴を楽しんで欲しい。
「……あの、でも、ユズリのお陰で村の人も帰ってこれたワケだからさ、今は楽しもうよ。反省は明日にしてさ」
幸い、村人達は軽症を負ってはいたものの、死亡者等は出なかった。
これも、ユズリが早急に向かった事が大きいだろう。
「……ありがとう。でも今は、どうしてもそんな気分になれない」
やはりラノベ主人公の様に、一言で励まし立ち直らせるなんて俺には無理だったか……。
そもそも、突き放すようなあの言葉は明日言えば良かった…等色々考えつつ、オレはとある案を思いついた。
俺はそれを実行すべく……。
「ねぇ、ユズリ。二人で抜け出さない?」
何か合コンとかで言いそうな台詞を言った。
あれから、かなりのゴブリンを迎え撃った。
足元は死体やら血やら体液でぬかるみ、敵は時が経つにつれ増えていく。
終わりの見えない戦いに、気がおかしくなりそうなる。
しかし、後ろにいる女性の為にも、諦める訳にはいかない。
諦める訳には……。
「ふぐっ……!」
剣を振るった瞬間を見計らったゴブリンに肩を蹴られ、膝をつく。
それを好機と受け取られ数体に袋叩きにされそうになるが、一体を体当たりで吹き飛ばし、もう一体は剣で腹を横に薙って地に倒れさせる。
「きゃああああああっ!」
女性の悲鳴に目を向けると、ゴブリンに足蹴にされる光景が私を襲った。
「そんなっ……」
守り切れなかった絶望からか、戦闘中にも関わらず呆けた私に相応の罰が振り下ろされる。
ゴブリンに腹を蹴られ、嘔吐く暇もなく今度は背中を棍棒で叩かれる。それにより、本格的に膝を着いた。
「グヒィ……!」
ゴブリンに……
横腹を蹴られ頭を殴られ脚を棍棒で殴打されナイフのようなものを突き立てられた。
「ぐ、えっ……!」
そして、仰向けにされた私は、両手足をそれぞれ一体のゴブリンに掴まれる。
さらに、残りのゴブリンがナイフ等を使い、強引に装備を剥がし始めた。
「ひ、ぐっ……」
私は悟った。このモンスター共は……。
私の誇りだけでは飽き足らず、心までも殺そうとしているのだ。
一枚ずつ衣服が剥がされ、少しずつ肌が露出していき、遂に殆ど下着姿にまで剥かれる。
もう、無理だ。ここまで来ては。
なんと無様だろうか。息巻いて助けになど来たくせに、私自身が敗北を喫し心までも征服されるとは。
自責や恐怖、様々な感情が綯い交ぜとなり、溢れ出たものが涙として身体に現出される。
……悔しくて、憎い。
「だ、誰か……ぁっ…………たすけ……」
震える声で、誰かを求めてしまう自分自身が。
「そ、こっ、迄だァァアアアアアアッ!!」
刹那、硝子を引き刺すような不快な斬撃音が、私の耳を深く付いた。
「グギュアアアアッ!?」
「ギュゴォオオオオオオオオ……!?」
次に見えた光景は、何かに引かれていくゴブリン達とその断末魔。
この奇怪な現象は見た事がある。これは……。
「やれやれ。目立つのは嫌いなんだがな」
妙な言葉遣いのタクマが、剣を地面に突き刺しそう言った。
「宴じゃああああああああっ!」
と、言うことで。村人を無事連れ戻した事を祝して宴が開催されることになった。
「勇者殿……この度は本当に世話になった。感謝してもしきれんが、せめて今宵は宴を楽しんで下され」
村長の言葉に対し、俺はいやいやと首を振る。
「村人が無事帰ってこれたのは、ユズリの手柄ですよ。俺はたまたま通りかかった所彼女がピンチだったので助けただけです」
謙遜でも何でもなく、これは紛れもない事実だ。
正確にはたまたま通りかかったの部分のみは虚偽だが……。それは置いておくにしても、今回の件は彼女の手柄であることに違いはない。
ゴブリンの住処を特定したのも、村人を救おうとしたのも彼女なのだ。
俺はただ、ユズリの痕跡を追い、彼女が戦っている間に隠れていたり潜んでいたゴブリン達をちくちく異次元送りの刑に処していただけなのである。
まぁ、最後は割と派手に戦ってしまった挙句、倒した後の常套句まで発してしまった訳だが。
「あ、あの、タクマ……」
あれこれ考えていると、いつの間にか接近していたユズリに声をかけられる。
「ん?」
「……ありがとう。貴方が居なきゃ、私……」
俯く彼女に対し、俺は敢えて突き放すような言葉を選ぶ。
「……だから言ったでしょ。出来ない事は安請け合いするな、って」
それを聞いたユズリは、更に表情を暗くした。
最も、騎士として命を懸けた戦いを幾度もした彼女に本来こんな上から目線のことを言うのはお門違いだろうが。
今後このような事態に発展して欲しくない。そんなただのエゴを理由にユズリに追い討ちをかけた。
「……ごめんなさい」
謝って、瞳を潤わせる彼女をみて思った。
やっちゃったぁ……、と。
まぁ十分注意したし、そもそも俺がそんな事言わずとも反省していたろうから、せめて今だけは宴を楽しんで欲しい。
「……あの、でも、ユズリのお陰で村の人も帰ってこれたワケだからさ、今は楽しもうよ。反省は明日にしてさ」
幸い、村人達は軽症を負ってはいたものの、死亡者等は出なかった。
これも、ユズリが早急に向かった事が大きいだろう。
「……ありがとう。でも今は、どうしてもそんな気分になれない」
やはりラノベ主人公の様に、一言で励まし立ち直らせるなんて俺には無理だったか……。
そもそも、突き放すようなあの言葉は明日言えば良かった…等色々考えつつ、オレはとある案を思いついた。
俺はそれを実行すべく……。
「ねぇ、ユズリ。二人で抜け出さない?」
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