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序章ー転移ー

06 多少無茶な設定だしても、“魔法だから”と言えばギリセーフ。

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「《剣招来ブレイドコール》!」

 頭に浮かぶ呪文を唱えると、手の先端より禍々しく光り輝く魔法陣がぶあっ、と空に浮かび上がった。
 そして、そこから剣の切っ先が飛びい出て……。

 サイクロプスの斧をぶった斬った。

「グオォオッ!?」
「よしっ!」

 脂汗をかきつつ、俺は魔法陣より出きった漆黒の剣を徐に掴んだ。

「うおっ!?」

 手にした瞬間、あまりの重さに取り落としそうになる。
 何とか落とさずに握り込むが、持ち上げているだけで一苦労だ。
 アニメや漫画では恰も軽そうに操っているが、あのキャラクター達はこんな重いものを振り回していたのか、と驚愕する。

「グルッ……ァアアガァアアアア!」

 浮かぶ思考を他所に、サイクロプスが一切物怖じせず拳を握って殴りかかって来た。

「ぐっ……!」

 俺は咄嗟に構え、剣を盾にして直撃を避ける。
 しかし、俺は体格差ゆえか大きく吹き飛ばされた。
 そして、背面を地面に大きくぶつける。

「か、はっ……」

 落下した衝撃で骨が軋む。
 さらに、一瞬訪れた窒息が恐怖心を強く煽った。

 痛い、痛い、痛い。
 どうしてこんな事に……本来ならば、とっくにチートで無双してハーレムだった筈なのに……。
 どうしてこんなに痛い目を合わなければ行けないのか。俺は……本来なら学生として、温い生活を送っていた筈なのに。

 そんな負の感情で覆われそうになった時。
 漆黒の剣、その鍔に輝く深紅の宝珠が、眩く瞬いた気がした。

 戦わなきゃ。
 突如脳裏に浮かんだその一言で頭のスイッチが切り替わり、俺の恐怖心を麻痺させる。
 そして、何とか剣を持ち上げ振りかぶった。
 何故だかは分からないが、こうすれば、確実に倒せる。そんな確信が全身を貫く。

「グォオオオオオオアアァァッ!」
「どるぁあああああああああッ!」

 敵に負けぬ叫びを糧に、両手の力を更に込め、大地を砕く様に剣で空を裂く。

 それは空振りに見えたが、地面を伝ってモンスターの股から首下までを切り裂いていた。

「グッ……グァアアアァアァッ!?」

 がくっ、と片膝を付くサイクロプス。どうやら傷が浅かったらしく、それ以上倒れる素振りは見せなかったが無意味だ。

「……悪いな」

 まるで自分のものでは無いような言葉が、自身の喉を通る。事実、俺の意識は朧気だった。
 すると、それに呼応するように地面がばっくり割れ、隙間から木の枝のような純黒の触手が幾つも生え上がり、モンスターに纒わり付いていった。

「お前は別次元に幽閉されて、その命が尽きるまで、魔力を吸い尽くされる。まぁ……俺に出会ったのが運の尽きだったってワケだ」
「グ、グォオオオオオオオ…………」

 サイクロプスは断末魔の様な声を上げながら、暗く輝く大地へと還って行く。
 ゆっくり、ゆっくりとその巨躯を飲み込み、全てを食い干して大地は輝きを失いその扉を閉じた。

 そして、膨大な力を使った俺は立つことすら困難になり、体勢を崩してたたらを踏む。
 視界すらぼんやりし始め、これはやばいと思った時には後ろへ倒れ……。

 鋼鉄の感触が、頭の芯を貫いた。

「痛って!?」
「あっ、ごめんなさい!」

 どうやら、騎士殿が受け止めてくれた様だが、板金にぶつかる位なら、カーペット上に倒れ込んだ方がまだマシだったのでは、という思考が過ぎってしまう。
 だがお陰で、朦朧としていた意識がはっきりとした。

「はぁ、はぁ……っ、ごめ、俺もう動けない、どっか隠れられそうな所まで連れてってくれる……?」

 ここで“俺はいいから先に行け!”と言えたら格好良かったのかもしれないが、流石にさっきのアレが人生の最初で最期の見せ場ではちょっと悲しい。
 自分可愛さにそんな事を言ってしまったのだが、女性騎士は力強く頷いてくれた。今はそれが何よりも頼もしい。

 俺はずるずると引き摺られ、三方向から死角になる丁度いい場所に置かれる。
 取り敢えず、ここでこの事態が収束するまで安全に居られたらいいのだが……。

 人生とは、そう上手くいかないものだ。

「ギュエエエエアアァアァアッ!」

 甲高い声が聴こえた刹那、何かが天井を突き破り、その姿を表した。
 見た目は例えるなら……ガーゴイル。豚のような顔に、猿のような身体。オマケに蝙蝠のような羽をつけている。
 身長は先程のサイクロプスの方が上だが、殆ど動けない現状、ピンチである事は言うまでもない。
 今度こそ、“俺はいいから先に行け!”と言わなければ……と考えた瞬間、ガーゴイルが降ってきた天井から、一筋の光がモンスターを貫いた。

「なっ……!?」

 俺と騎士が驚き、砂埃の中から現れたのは……。

「あ、お前レベル0の勇者じゃねーか。無事だったかー!」

 勇者として召喚された内の、一人の少年だった。
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