2 / 9
02 襲撃、反撃
しおりを挟む
「だ、誰って……」
俺はすぐさま言い返そうとしたが、リゲルの板金鎧に映った自身の顔を見て、絶句してしまった。
「なっ、これ……?」
それしか言葉に出来なかった。
俺は真実を確かめるべく、メニューウィンドウを出現させ、そこからするする操作をこなし、とあるアイテムを出現させた。
鏡系のアイテムを持っていればよかったと後悔しつつ、出現させたポーションを目の前に掲げる。
ポーションの入れ物は銀製で、まるで鏡のように辺りの光景を映す。それを利用しようと試みたが……。
「やっぱり、アバターが変わってる」
俺は静かにそうぼやいた。
髪型は濃い紫色のショートで変わらないが、この顔は、俺の以前のアバターとは明らかに違うものだった。前はもっと少年チックで少し目付きの鋭いクールな印象を持たせていたが、今はそれよりやさぐれているというか、まるで現実の俺とアバターを混ぜたような……。
「もしかして……アッシュか?」
リゲルがおずおずとそう聞いてくる。
「うん。アッシュ。現実だと峰倉芦太」
焦りでか、若干片言になりながらも、自らの正体を明かした。
「もしかしてリゲルもアバター変わってるんじゃ……ちょっとその兜とってみろよ」
リゲルが頷くと、両手で頭をすっぽり覆う金兜を持ち上げた。
「本当だ。二人ともアバター変わってる。もしかして僕も?」
いつの間にか起きていたワサラハが、人差し指を自身に向けてそう問い掛ける。
「うん。変わってる。なんかよりマイルドな感じになったというか……でも耳はそのまんまだな。あ、俺もか」
魔族のアバターも、妖精族程ではないが尖っている。どうやら種族までは変更されていないようで安心した。
「レベルも装備も変わらず……アバターだけ変わるバグ? マジかよ運営はなにやってんだよ」
リゲルがメニューウィンドウを確認しながらそう毒づいた。
「まぁまぁ、運営のせいかまだ分からないし。落ち着こうぜ。いつかは戻るだろうしさ」
俺がそう宥めるも、リゲルはため息を吐き、大きく背伸びするだけだった。
「あー、なんかもういいや。ログアウトしようぜ」
「えっ、GMコールとかしなくていいの?」
「いいよ。もう眠いし明日で、あーあ、死んでたらマジ運営のせいにしよ」
リゲルが欠伸を漏らしながらそう嘆いた。
まぁ、確かに、GMコールしたら遅くなりそうだしな。それに、なんだか体調もいまいち優れない。
「それなんだけど、さ」
すると、ワサラハが申し訳なさそうに声を出した。
「僕、GMコールしようとしてたんだけど、つながらないし、しかも━━ログアウトボタンが消えてる」
「「……は?」」
俺達は二人同時にそう聞き返した。これが異口同音と言うやつか。ちょっと違うか。違ううえに今はどうでもいい。
「うわ、マジだ。これもバグか?」
俺が下らないことを想像している間に、リゲルは自らの画面で真実であるか確かめていた。
一応俺も確認してみるが……無い。本来は設定ボタンの下にある筈だが、欄ごと消え去っている。
「はぁ? これは流石にヤバいだろ。なんなんだよマジで。ログアウト出来ないとかふざけてんだろ。明日も学校あるってのに」
リゲルが以前より鋭くなった目付きで、メニューウィンドウを睨む。
そういえば、この新しいアバター、どうも現実の二人に似ているような……。ゲームのアバターにリアルの面影を足したような、なんとなく他人と思えないような、そんなアバター。
そんなことをぼんやり考えていると、植物が擦れる音がした。その刹那━━
「バゥォンッ!」
そう吠えながら、大きな影がワサラハに襲いかかった。
━━あれは、リュカウス? でも、なにかおかしい。デザインか? 妙にリアルというか……。そういえば、いやに視界がクリアだ。まるで現実のような。
「ぐぁっ!?」
すると、襲われたワサラハが、濁った叫び声をあげた。ゲームなのにやけにリアルな叫びだった。
「せ、戦闘準備!」
リゲルが躊躇いながらそう怒鳴る。俺はそれで我に戻り、背から大鎌を取り出す。
そして、また違和感。僅かに、鎌の重量が多く感じる。今まで手に吸い付くように馴染んでいた感触も、今はいつ地に落とすか分からないほど危うい感じだ。
「グルルルルル……!」
リュカウスは武器を持った俺達に威嚇を始めた。なんだか少しおっかない。本当に気圧されてしまいそうだ。
「アッシュ! 俺が攻撃を引き受けるから、背後から重攻撃!」
「り、了解!」
俺は吃りながらも返事をし、受けた指令を実行すべく背後に回る。
しかし、リュカウスの後ろには踞っているワサラハがいた。
「ワサラハ! ちょっと退いて!」
「う、うぅ……」
ワサラハは目の端に滴を溜めていた。
まさか、本当に痛がっている?
「アッシュ! 早く!」
「くそっ……!」
ワケがわからないまま、俺はリュカウスに向かって大鎌を振った。
俺はすぐさま言い返そうとしたが、リゲルの板金鎧に映った自身の顔を見て、絶句してしまった。
「なっ、これ……?」
それしか言葉に出来なかった。
俺は真実を確かめるべく、メニューウィンドウを出現させ、そこからするする操作をこなし、とあるアイテムを出現させた。
鏡系のアイテムを持っていればよかったと後悔しつつ、出現させたポーションを目の前に掲げる。
ポーションの入れ物は銀製で、まるで鏡のように辺りの光景を映す。それを利用しようと試みたが……。
「やっぱり、アバターが変わってる」
俺は静かにそうぼやいた。
髪型は濃い紫色のショートで変わらないが、この顔は、俺の以前のアバターとは明らかに違うものだった。前はもっと少年チックで少し目付きの鋭いクールな印象を持たせていたが、今はそれよりやさぐれているというか、まるで現実の俺とアバターを混ぜたような……。
「もしかして……アッシュか?」
リゲルがおずおずとそう聞いてくる。
「うん。アッシュ。現実だと峰倉芦太」
焦りでか、若干片言になりながらも、自らの正体を明かした。
「もしかしてリゲルもアバター変わってるんじゃ……ちょっとその兜とってみろよ」
リゲルが頷くと、両手で頭をすっぽり覆う金兜を持ち上げた。
「本当だ。二人ともアバター変わってる。もしかして僕も?」
いつの間にか起きていたワサラハが、人差し指を自身に向けてそう問い掛ける。
「うん。変わってる。なんかよりマイルドな感じになったというか……でも耳はそのまんまだな。あ、俺もか」
魔族のアバターも、妖精族程ではないが尖っている。どうやら種族までは変更されていないようで安心した。
「レベルも装備も変わらず……アバターだけ変わるバグ? マジかよ運営はなにやってんだよ」
リゲルがメニューウィンドウを確認しながらそう毒づいた。
「まぁまぁ、運営のせいかまだ分からないし。落ち着こうぜ。いつかは戻るだろうしさ」
俺がそう宥めるも、リゲルはため息を吐き、大きく背伸びするだけだった。
「あー、なんかもういいや。ログアウトしようぜ」
「えっ、GMコールとかしなくていいの?」
「いいよ。もう眠いし明日で、あーあ、死んでたらマジ運営のせいにしよ」
リゲルが欠伸を漏らしながらそう嘆いた。
まぁ、確かに、GMコールしたら遅くなりそうだしな。それに、なんだか体調もいまいち優れない。
「それなんだけど、さ」
すると、ワサラハが申し訳なさそうに声を出した。
「僕、GMコールしようとしてたんだけど、つながらないし、しかも━━ログアウトボタンが消えてる」
「「……は?」」
俺達は二人同時にそう聞き返した。これが異口同音と言うやつか。ちょっと違うか。違ううえに今はどうでもいい。
「うわ、マジだ。これもバグか?」
俺が下らないことを想像している間に、リゲルは自らの画面で真実であるか確かめていた。
一応俺も確認してみるが……無い。本来は設定ボタンの下にある筈だが、欄ごと消え去っている。
「はぁ? これは流石にヤバいだろ。なんなんだよマジで。ログアウト出来ないとかふざけてんだろ。明日も学校あるってのに」
リゲルが以前より鋭くなった目付きで、メニューウィンドウを睨む。
そういえば、この新しいアバター、どうも現実の二人に似ているような……。ゲームのアバターにリアルの面影を足したような、なんとなく他人と思えないような、そんなアバター。
そんなことをぼんやり考えていると、植物が擦れる音がした。その刹那━━
「バゥォンッ!」
そう吠えながら、大きな影がワサラハに襲いかかった。
━━あれは、リュカウス? でも、なにかおかしい。デザインか? 妙にリアルというか……。そういえば、いやに視界がクリアだ。まるで現実のような。
「ぐぁっ!?」
すると、襲われたワサラハが、濁った叫び声をあげた。ゲームなのにやけにリアルな叫びだった。
「せ、戦闘準備!」
リゲルが躊躇いながらそう怒鳴る。俺はそれで我に戻り、背から大鎌を取り出す。
そして、また違和感。僅かに、鎌の重量が多く感じる。今まで手に吸い付くように馴染んでいた感触も、今はいつ地に落とすか分からないほど危うい感じだ。
「グルルルルル……!」
リュカウスは武器を持った俺達に威嚇を始めた。なんだか少しおっかない。本当に気圧されてしまいそうだ。
「アッシュ! 俺が攻撃を引き受けるから、背後から重攻撃!」
「り、了解!」
俺は吃りながらも返事をし、受けた指令を実行すべく背後に回る。
しかし、リュカウスの後ろには踞っているワサラハがいた。
「ワサラハ! ちょっと退いて!」
「う、うぅ……」
ワサラハは目の端に滴を溜めていた。
まさか、本当に痛がっている?
「アッシュ! 早く!」
「くそっ……!」
ワケがわからないまま、俺はリュカウスに向かって大鎌を振った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ワタシ悪役令嬢、いま無人島にいるの。……と思ったけどチート王子住んでた。
ぷり
ファンタジー
私の名前はアナスタシア。公爵令嬢でいわゆる悪役令嬢という役回りで異世界転生した。
――その日、我が学園の卒業パーティーは、豪華客船にて行われていた。
――ですが。
もうこの時点でお察しですよね。ええもう、沈みましたとも。
沈む直前、ここにいるヒロイン、クソ王子withその他攻略対象の皆さんに私は船上で婚約破棄イベントで断罪されていた。 その最中にタコの魔物に襲われて。これ乙女ゲームですよね? そして気がつけば見知らぬ無人島。
私はそこで一人の青年に出会うのです。
ネタバレすると10年前に行方不明になった第一王子だったんですけどね!!
※※※
15Rですが品がない方面に舵を切ってますので、何でも許せる方向け予定です。
下品系が許せない方はご注意ください。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜
Jaja
ファンタジー
ある日、中学2年の頃。
いつの様に右眼疼かせ、左手には、マジックで魔法陣を書き、それを包帯でぐるぐる巻きに。
朝のルーティンを終わらせて、いつもの様に登校しようとしてた少年は突然光に包まれた。
ラノベ定番の異世界転移だ。
そこから女神に会い魔王から世界を救ってほしい云々言われ、勿論二つ返事で了承。
妄想の中でしか無かった魔法を使えると少年は大はしゃぎ。
少年好みの厨二病能力で、約30年近い時間をかけて魔王を討伐。
そこから、どうなるのかと女神からのアクションを待ったが、一向に何も起こることはなく。
少年から既に中年になっていた男は、流石に厨二病も鳴りをひそめ、何かあるまで隠居する事にした。
そこから、約300年。
男の「あれ? 俺の寿命ってどうなってんの?」という疑問に誰も答えてくれる訳もなく。
魔の森でほのぼのと暮らしていると、漸く女神から連絡があった。
「地球のお姉様にあなたを返してって言われまして」
斯くして、男は地球に帰還する事になる。
※この作品はカクヨム様にも投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる