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決闘編
04 光刀
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「……なんでこんなことに」
俺は白い全身タイツのようなスーツを着ながらそう呟いた。
「お前が留学生にちょっかい出すからだろ」
カーテン越しで先輩がそうツッコむ。
「いやだから違うんですって!」
辛辣な先輩への悲痛な弁解も空しく、俺はため息をついた。
なぜこうなったのか、話は数十分前まで遡る。
「えっと、本当にすみませんでした」
俺は額を地面すれすれまで下げ土下座する。
「いいわよ。どちらにしろころすから。謝らなくて」
相変わらず物騒な事を口走る美少女に、顔を上げどうしたものかと頭を悩ませていると、先輩が慌ただしく二階から駆け降りるのが見えた。
「あのー、これは……?」
少女が仁王立ちし、そこに土下座している少年がいれば、怪奇な状態であることは間違いない。
「この子が私に無礼をしたからころすの。EOで」
え? 何? EOってデスゲームかなんかなの?
「えっと、こいつが何したかは分かりませんけど、勘弁してあげれませんか?」
「駄目。ころす」
「えー……」
先輩の言葉すら聞かない強情娘についそんな声を吐くと、朱色の相貌からぎらりと睨まれる。
「あ、はい。やります。やらせていただきます」
有無を言わせない状況なのもあり、俺は渋々この少女とEOをすることになったのである。
それから学園のEO特設フィールドに移動し、現在に至るわけだが……。
「先輩、なんかこの服恥ずかしんですけど、この上からなんか着てもいいんですか?」
「まぁ、そこらへんは向こうも何も言ってなかったし、大丈夫だろ。大会によっては駄目だったりするけど」
先輩の説明に頷きながら、俺は私服のパーカーとズボンをスーツの上から重ねた。
もう一枚パーカーの下にシャツも着ていたのだが、スーツの上からだと少しきつかったので今回はお留守番だ。
「あ、着替え終わりました」
しゃっ、とカーテンを開け、教室ひとつ分はあるこの白い部屋に出る。
「じゃ、次は武器選びだな。どれがいい?」
ほぼ円形のこの部屋には、壁に幾つもの武器が掛けられていた。
銃のようなものや、剣の柄しかない様な見た目の謎の物体まで、様々な種類の武器が立ち並んでいた。
「えっと、初心者おすすめのやつってあります?」
恐る恐る先輩に聞くと、うーん、と目を瞑り腕を組んで頭を傾げた。
「そうだなぁ、ハンドガンタイプかワンハンドソードのどっちかだけど、片方得意でもう片方はすげー苦手……ってこともあるからなぁ。今は試す時間も無いし……」
先輩が悩むなか、俺が辺りを見回してみると、あるものが目に写った。
「これ……」
見つけた瞬間、何の躊躇も無く俺はそれを手にする。
「ん? それ、刀タイプのアーツじゃん」
〝アーツ〟というのは、EOで使用される武器の総称━━学園に来るまでに幾つかの基礎知識は教わった━━である。
しかしこの中にあるものは全て〝アーツ・レプリカ〟と呼ばれ、誰でも使えるが威力はそこそこのものしか無いらしい。因みに、個人専用で威力が充分に発揮されるアーツのことは〝オリジンアーツ〟と呼ばれる。
「あのー、これどうやって使うんですか? 持つところしか無いんですけど」
刀にしては近未来的でスマートなデザインだが、重要な刃の部分がこのアーツには欠けていた。
「スイッチが親指辺りにあるだろ。それ押してみ」
言われた通り親指でまさぐってみると、スイッチらしきものが見つかる。
そのままカチッ、と押すと、ヴンッと音をたてながら青白い光の刃が迸る。
「おぉ、かっけぇー……!」
刃渡り八十センチ程の近未来刀をブンブン振り回しながら感動する。
「それ結構扱うの難しいんだけど……まぁ、いいか。じゃ、気をつけて行ってら」
緊張感の無い激励を受け、頷きながら俺はフィールドに向かった。
聞いた話によると、フィールドは半径二百メートルの真円らしく、見たところ半径はともかく、形状は真円で間違い無さそうだ。
「ルールは私が決めさせて貰うわ」
既に向かい側で佇んでいる少女がそう言いながら何やら操作をしている。手元をよくみると半透明のパソコンスクリーンの様なものが浮かんでいた。
「あ、俺どのみちなんもわからないんでどうぞ」
手元に置いていた集中力を戻し、そう答える。
「了解。じゃあ制限時間は五分で、アイテムとアーツスキルは無し。決着方法はライフ制で良いわね?」
「あ、はい。じゃあそれで」
アイテムやら決着方法やらよく分かっていない俺には、そう答える他無かった。
「じゃあデータ上のルールはこれくらいで……次はそれ以外のルールね」
え? なにそれ? という言葉をなんとか呑み込む。
「使う武器はアーツ・レプリカだけで、勝者は敗者にひとつなんでも言うことを聞くこと」
成る程、ルール外ってのはアーツ・レプリカを使うとかそういう…………ん?
「えっ、なんすかそれ。聞いて無いんですけど!?」
俺は白い全身タイツのようなスーツを着ながらそう呟いた。
「お前が留学生にちょっかい出すからだろ」
カーテン越しで先輩がそうツッコむ。
「いやだから違うんですって!」
辛辣な先輩への悲痛な弁解も空しく、俺はため息をついた。
なぜこうなったのか、話は数十分前まで遡る。
「えっと、本当にすみませんでした」
俺は額を地面すれすれまで下げ土下座する。
「いいわよ。どちらにしろころすから。謝らなくて」
相変わらず物騒な事を口走る美少女に、顔を上げどうしたものかと頭を悩ませていると、先輩が慌ただしく二階から駆け降りるのが見えた。
「あのー、これは……?」
少女が仁王立ちし、そこに土下座している少年がいれば、怪奇な状態であることは間違いない。
「この子が私に無礼をしたからころすの。EOで」
え? 何? EOってデスゲームかなんかなの?
「えっと、こいつが何したかは分かりませんけど、勘弁してあげれませんか?」
「駄目。ころす」
「えー……」
先輩の言葉すら聞かない強情娘についそんな声を吐くと、朱色の相貌からぎらりと睨まれる。
「あ、はい。やります。やらせていただきます」
有無を言わせない状況なのもあり、俺は渋々この少女とEOをすることになったのである。
それから学園のEO特設フィールドに移動し、現在に至るわけだが……。
「先輩、なんかこの服恥ずかしんですけど、この上からなんか着てもいいんですか?」
「まぁ、そこらへんは向こうも何も言ってなかったし、大丈夫だろ。大会によっては駄目だったりするけど」
先輩の説明に頷きながら、俺は私服のパーカーとズボンをスーツの上から重ねた。
もう一枚パーカーの下にシャツも着ていたのだが、スーツの上からだと少しきつかったので今回はお留守番だ。
「あ、着替え終わりました」
しゃっ、とカーテンを開け、教室ひとつ分はあるこの白い部屋に出る。
「じゃ、次は武器選びだな。どれがいい?」
ほぼ円形のこの部屋には、壁に幾つもの武器が掛けられていた。
銃のようなものや、剣の柄しかない様な見た目の謎の物体まで、様々な種類の武器が立ち並んでいた。
「えっと、初心者おすすめのやつってあります?」
恐る恐る先輩に聞くと、うーん、と目を瞑り腕を組んで頭を傾げた。
「そうだなぁ、ハンドガンタイプかワンハンドソードのどっちかだけど、片方得意でもう片方はすげー苦手……ってこともあるからなぁ。今は試す時間も無いし……」
先輩が悩むなか、俺が辺りを見回してみると、あるものが目に写った。
「これ……」
見つけた瞬間、何の躊躇も無く俺はそれを手にする。
「ん? それ、刀タイプのアーツじゃん」
〝アーツ〟というのは、EOで使用される武器の総称━━学園に来るまでに幾つかの基礎知識は教わった━━である。
しかしこの中にあるものは全て〝アーツ・レプリカ〟と呼ばれ、誰でも使えるが威力はそこそこのものしか無いらしい。因みに、個人専用で威力が充分に発揮されるアーツのことは〝オリジンアーツ〟と呼ばれる。
「あのー、これどうやって使うんですか? 持つところしか無いんですけど」
刀にしては近未来的でスマートなデザインだが、重要な刃の部分がこのアーツには欠けていた。
「スイッチが親指辺りにあるだろ。それ押してみ」
言われた通り親指でまさぐってみると、スイッチらしきものが見つかる。
そのままカチッ、と押すと、ヴンッと音をたてながら青白い光の刃が迸る。
「おぉ、かっけぇー……!」
刃渡り八十センチ程の近未来刀をブンブン振り回しながら感動する。
「それ結構扱うの難しいんだけど……まぁ、いいか。じゃ、気をつけて行ってら」
緊張感の無い激励を受け、頷きながら俺はフィールドに向かった。
聞いた話によると、フィールドは半径二百メートルの真円らしく、見たところ半径はともかく、形状は真円で間違い無さそうだ。
「ルールは私が決めさせて貰うわ」
既に向かい側で佇んでいる少女がそう言いながら何やら操作をしている。手元をよくみると半透明のパソコンスクリーンの様なものが浮かんでいた。
「あ、俺どのみちなんもわからないんでどうぞ」
手元に置いていた集中力を戻し、そう答える。
「了解。じゃあ制限時間は五分で、アイテムとアーツスキルは無し。決着方法はライフ制で良いわね?」
「あ、はい。じゃあそれで」
アイテムやら決着方法やらよく分かっていない俺には、そう答える他無かった。
「じゃあデータ上のルールはこれくらいで……次はそれ以外のルールね」
え? なにそれ? という言葉をなんとか呑み込む。
「使う武器はアーツ・レプリカだけで、勝者は敗者にひとつなんでも言うことを聞くこと」
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