君と番になるその時は

鈴卜優

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ルイ・ウィンザードという男

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シオンの心が落ち着いた頃レイフォードが先程の男を連れて戻ってきた。

一瞬身体が強張る。

「シオン、こいつはルイ•ウィンザード。俺の腹違いの弟だ。」

「さっきは怖がらせてごめんね?緊急だったから。」

ルイは申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「お前に抑制剤を打ったのはルイだ。」

「そうだったのですね。ありがとうございます。」


あれ?でもこの2人って仲悪いんじゃ?

シオンが不思議そうに2人を眺めていると
「ああ。ルイと俺は敵対派閥を炙り出す為仲が悪いように見せているが、ルイは俺に協力しているんだ。今回も情報をもらって助かった。」

「そうそう。俺は国を治めるなんてむいてないからね~それに争い事は嫌いなんだ。」

へらりと笑うルイは食えない男だとおもった。


「でも、兄さん約束事は守ってね?」
「それは大丈夫だ。」

「…?」

「ああ俺はね、実は医薬品の研究をしていてね、王都にできる医療施設で研究員として働くのを約束してたんだ。あ、だから抑制剤を持っていたんだよ。」

「え?すごいですね。」

「俺がこいつと交流があるのも隣国との戦争をしていた時にルイは偽名を使って救護班として紛れていたからなんだ。」

「国の一大事だからね。それまで俺らは会うのも難しかったから。当時は難しい関係だったし。」 


でもやっぱり2人は少し似ているのかも。
国を大事に想っている。


「今回の件でオスカー子爵を捕まえる事ができた。ルイと仲悪いふりをしなくていい。たまには王弟として表にでてくれよ。」

「も~兄さん。俺は向いてないのに~」

「ふふ。仲良いですね。」

2人の姿に思わず笑ってしまう。

「兄さんのお嫁さん、かわいいね。」

「おい、俺のだ。」

レイフォードが冷たい目でルイをみる。

「じょ冗談だよ~俺は女神系より小動物みたいな美少女がタイプだから~」


「そうですよ。ルイ様は僕になんてそんな事思わないですよ。」

「いや、わからない。お前は魅力的だからな。」


そう言われ一気にシオンの顔は真っ赤に染まる。


「レ、レイフォード様!」

「なんだ。本当の事だ。」

その言葉にシオンは慌てる。

「はは、幸せそうだ。よかった、兄さんにそういう相手が見つかって。」


ルイは微笑ましい2人を穏やかな表情で見ている。


そしてシオンはルイから痛みを緩和させる薬などをもらい、レイフォードと共に王宮へ戻る事になった。



_________________________________


王宮に戻ると泣き腫らしたクラリスがシオンに向かって飛びついてくる。

「シオン様~よかったですぅ~無事で。えぐっよかったよ~うわーん」

「クラリス、ありがとう。」


クラリスの涙をハンカチで拭う。

「孤児院の子供達も心配で泣いてる子もたくさんいました。ぐすっ」

「そっか。レオや孤児院の子供にお礼を言わないとね。」

「…はい。」


こんなにも自分を心配してくれる人がいる。

シオンはとても嬉しかった。


その夜、シオンは早々に寝室に来たレイフォードと共にベッドに入った。


そしていつもと違うのは抱きしめられているという事。


「レイフォード様、寝づらくないですか?」

「嫌か?」

「いや、そうではないのですが…」
心臓が爆発しそうだ。早く波打つ鼓動がバレてないだろうか。

「ただ今はこうして眠りにつきたいんだ。お前が俺のものになったと実感できるから。」

「…。」

「今日は大変な1日だったから早く休もう。シオン、おやすみ。」
そしてそのまま唇に口付けを落とされた。

「レイフォード様おやすみなさい。」


(あ、なんだ。ドキドキしてるのは僕だけじゃないんだ。)


レイフォードの心臓も早く鼓動を打っている。

温かい。

シオンは幸せを噛み締めていた。


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