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怪しい影
しおりを挟む「シオン!!」
バンっと扉が開き、物凄い剣幕のレイフォードが夕食を食べているシオンの所にやってきた。
「っもご、ど、どうしたんですか?」
いきなりの事にシオンは思わず喉に食べていたものをらつまらせる。
「食事中すまない。母と会ったと護衛の者から聞いたものだから」
「お義母様に会いました。とても素敵な方でした。」
「…そうか。ならよかった。」
そう言うとレイフォードは隣の席に座り椅子にもたれ掛かり安堵していた。
(僕を心配して急いで来てくれたんだ。)
「すまない。俺も今ここで夕食をとる。用意してもらえるか?」
そう執事に指示する。
「シオン、いいか?」
「もちろんです。嬉しいです!でもお仕事は大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。急いで終わらせたんだ。」
「じゃあこの後も2人でゆっくりできますね。」
思わずシオンの本音が漏れる。
(眠る前に話すだけじゃなくてもっと一緒にいたいそう思ってたから。レイフォード様はどう思ってるかな…)
「っお前って奴は…」
レイフォードは顔を隠すように顔を手で覆う。
「…??」
「いや、なんでもない。そうだな、ゆっくり過ごそう。」
そうして2人でゆっくりと夕食を食べ2人は一度別れ湯浴みをし、また自分達の寝室のソファーで隣同士で座っていた。
「その、母とは何を話していたんだ?傷つくような事を言われていないか?」
心配している顔でそう聞かれる。
数年会ってないと言っていたから最近のルーナ様の事多分レイフォード様は知らない。
「大丈夫ですよ。でも、お義母様に昔の事を聞きました。」
「…それは父との事か?」
「そうです。以前はどうだったかは僕には分かりませんがお義母様は穏やかに過ごされていましたよ?」
「それは何よりだ。俺は母と会うのはまだ少し怖いんだ。母はいつも泣いていて、話しかけると冷たい目をしていた。」
レイフォード様が小さい時に、母親からそんな風にされたらとても悲しいし、トラウマになるだろう。
シオンは思わず黙ってしまう。
「…だが、いつの間にか俺も母に歩み寄るのを諦めていたんだ。また、母と話せる日が来るだろうか。」
「レイフォード様が小さい頃に受けた心の傷はとても深いものです。でもレイフォード様がお義母様と向き合う日が来る時は僕もそばにいますから。」
シオンはレイフォードの手に自分の手を重ねる。
「はは、お前がいるなら心強いな。」
レイフォードが嬉しそうに微笑んでくれる。
それは今まで過ごした中で初めてみたちゃんとした笑顔だった。
シオンはその姿に堪らなくなって思わずレイフォードに抱きつく。
「レイフォード様。僕、あなたが好きです。」
そう言うとレイフォードの肩が少し上がる。
「番にならなくても僕はあなたと生きていきたい。」
「っ…」
レイフォードが息を呑むのがわかる。
(もう僕は怖がらない。決して愛されなくても僕が想うだけでそれでいいんだ。)
愛が返ってこなくてもレイフォード様のそばにずっといられるのなら。
シオンがそう言うとレイフォードの手がぎごちなくシオンの背中に回された。
レイフォードからの返答はなかったが、背中に回された手がシオンの心を満たしてくれた。
___________________________…..
「レイフォード殿下の視察の日は決まったのか?」
「はい、こちらで着々準備をしています。」
「ははは、そうか。では、後は王妃であるアッシュベルから来た妃をどうするかだな。」
「そちらにはいい案があります。」
2人の男達の気味が悪いせせら笑いが広間に子爵家の広間に響き渡っていた。
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