君と番になるその時は

鈴卜優

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王都へデート

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「今日はいつもより綺麗に編みますね。」

「そんな、いつも通りでいいよ。」

そう張り切るのはクラリスだ。

今日はレイフォードと王都へお出かけをするのでクラリスはシオンをより綺麗にみせようと張り切っている。


「いつも通りなんて!シオン様!今日はデートですよ!?」


「デ、デート!?そんなわけないよ。ただ披露宴の服を仕立てた後、案内してくれるだけって言ってたし。」


「っもう!だからそれはデートですって!とりあえずシオン様楽しんでくださいね?」


クラリスってば話を聞かないんだから。

でもデートじゃなくても楽しみだ。

「クラリスのおすすめのお店ある?」

「あ~でしたら素敵な雑貨屋さんがあるんです。教えますね。」


そう言ってたくさんクラリスのおすすめを教えてもらった。


(いろんなところ周れたらいいな。)


そうこうしているうちに時間になり屋敷の外へ出る。


馬車の前にはすでにレイフォードが待っていた。


「レイフォード様、お待たせしました。」

シオンはレイフォードに小走りで駆け寄る。


「俺も今来た所だ。さあ乗ろう。」

そう言ってシオンに向かって手を差し伸べてエスコートしてくれる。


以前のレイフォードでは考えられない行動だ。

シオンはおずおずとレイフォードの手に自分の手を重ね馬車へ乗り込む。



「シオン様、楽しんでくださいね。お気をつけて。」


クラリスが笑顔で手を振ってくれている。

「ありがとう。行ってきます。」


クラリスに笑顔を返し馬車から手を振り馬車はゆっくりと動き出した。




王都へ着くまでレイフォードと他愛もしない話をしていた。

クラリスに聞いたおすすめの店をレイフォードにも教え連れて行ってもらえることになった。


「もうすぐ着くぞ。」

そう言われ窓の方に目を向けると外は賑わいを見せていた。


以前、通った時は嫁ぐ時で緊張していたシオンはゆっくり見る暇がなかったがこうしてみると王都は賑わっていて活気があった。


「わぁ~素敵です!たくさんお店がありますね!」

すこし興奮したようにシオンは言う。


「後でゆっくり歩こう。」


笑顔で窓の外を眺めているシオンをレイフォードは優しげな表情でみていた。


あっという間に披露宴の服を仕立てるお店についた。


お店のスタッフなどが出迎えてくれ、すぐに奥に案内されシオンは採寸される。


お店の店主は若い男の人でレイフォードと昔からの仲のようでシオンの服のデザインなどの話をしている。


カーテン越しに聞こえる会話で仲の良さを感じる。


「レイフォード殿下が結婚するなんてびっくりしましたよ。アッシュベルの宝石って噂は本当ですね。とてもお綺麗な方で。」


「ああ。」


「かわいくて仕方ないじゃないんですか?」


(店主さん、なんて事聞くんだ!…レイフォード様なんて答えるんだろう。)


思わず聞き耳を立ててしまう。


「ああ、かわいいな。」

レイフォードがそう答えシオンの顔は一気に赤くなる。


「わー惚気はやめてくださいな。僕はまだ独身なんですから。」


レイフォード様の顔が見れなくなっちゃうと思いながらも採寸は終わってしまう。



スタッフにレイフォードの元へ案内される。

俯きながらレイフォードの横へ戻る。

「…お前、顔が赤いぞ。具合わるいのか?」

心配そうにレイフォードはシオン見てそう言う。

シオンは焦ったように否定する。

「ち、違います。大丈夫です!元気です!」


「そうか。ならいいんだが。」



あれよあれよとデザインも決まりシオンは中性的な男とも女とも取れるような白の繊細なパンツドレスに決まった。


刺繍がとても綺麗なダイヤモンドが散りばめられたデザインの服となった。


「では、レイフォード殿下はこれですね。」

レイフォードは黒の軍服のようなデザインだ。


この前見た時と同じように感じる。


「では、オーダー通り、殿下のはアジメストの宝石をつけるのとラインは合わせた色をつけさせて頂きますので。」


デザイン画を見るとレイフォードのはシオンの瞳のアジメストの宝石や色を使うようだった。


レイフォードがオーダーしたという事を聞きシオンは一気に気恥ずかしくも嬉しい気持ちで満たされていた。


(レイフォード様、僕の色をいれてくれるんだ。嬉しい。)



「では、後は頼むぞ。」


「2人の為に精一杯作らせて頂きます。」

シオンは店主で頭を下げお礼をする。
そうして2人は仕立て屋を後にした。



この後はクラリスがおすすめしてくれたアフターヌーンティーができるお店に行く事にしていた。


「ほら。」

レイフォードは自然と手を差し伸べてきてシオンはその手を握る。


胸の高鳴りを感じながら2人は手を繋ぎながら並んで道を歩いていく。


シオンはそれだけで充分幸せだと感じた。




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