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しおりを挟むそれからの日々は早かった。
2人でどうするのか話し合った結果、2人の職場に近いところの駅で同棲することとなった。
朝也の知り合いにLGBT物件を紹介してもらい何件か回りいい物件に辿り着いたのだ。
そして同棲するにあたって大変だったのは姉と弟だった。
両親はあっさりOKしてくれたのに対し最後まで渋っていたのだ。
(2人には申し訳ないけど…)
ただ、1ヶ月に1回は帰るのが条件と約束はされた。
それには朝也さんも苦笑いをしていた。
そしてやっと今日は同棲初日。
朝也は数日早く同棲先の家に住んでいる。
碧は目の前のマンションを見る。
(ここからここが俺の帰る場所なんだ。)
少し感動する。1年前の俺なら考えられなかったと思う。
オートロックのエントランスを通りエレベーターに乗る。
鍵を取り出し、自分の部屋の鍵をあける。
ガチャ
それに気づいたのか、朝也が満面の笑みでパタパタと廊下をかけてくる。
その姿を見て碧もつられて笑顔になってしまう。
「碧、おかえり。」
「朝也さん、ただいま。」
そしてスリッパを履きながら朝也に言う。
「なんかこういうの照れ臭いけど嬉しいですね。」
「ね。でもこれからここが2人の帰る場所だね。まずはキスさせてくれる?」
その言葉に一瞬恥ずかしくなるがすぐコクンと頷く。
抱擁と共に軽い口付けが落とされる。
「これからは2人のルーティーンにしようね?」
「…っはい。」
「あーなんかまだ実感がない。とりあえずリビングに行こう。」
そして歩きながら話す。
「そうですね。俺の荷物来ましたか?」
「もう来てるよ。荷物少ないね、碧らしいけど」
「ふふ、これから2人で揃えていければなと思って…。」
手を引かれソファーに座る。
「もー、ほんとそういうところだよ。」
「??」
「碧が大好きって事だよ。」
「なんですか?それ。ふふ、でも俺も好きです。」
碧の胸がきゅうと鳴る。
「碧、ちょっとここで待ってて。」
そう言って朝也は寝室の方へ行く。
なんだろうと思いつつ部屋中を見る。
(素敵な家だな。)
数日の間に朝也が整えてくれていたようだ。
観葉植物も置いてあり、とてもおしゃれだ。
「お待たせ。」
そう言って朝也は先程と同じく碧の隣に座り向き直る。
そうして少し真剣な顔になりながら、顔の横にある黒髪を耳にかける。
(あ、これは朝也さん緊張してる時のクセだ。)
一緒に過ごしているとこういった朝也のクセに気づくようになった。
こういう瞬間がたまらなく愛おしいと感じる。
「碧、まず一緒に住んでくれてありがとう。これから喧嘩したりとかもするだろうしいろんな事を経験すると思う。でも、必ずこの家に帰ってきて。愛してるよ。」
そう言って白い箱を碧に渡す。
受け取って箱を開けると黒いの皮のブランドのキーケースが入っていた。
「これ、お揃いだよ?」そう言って朝也は家の鍵がついている自分のキーケースを碧にみせる。
ぽろっと目から涙が溢れるのを感じる。
「…っ。嬉しい。」
「今2人を繋ぐのは気持ちだけじゃなくこの家もだから。碧に渡したかったんだ。」
そう言って照れ臭そうに笑う。
「朝也さん、ありがとう。大事に使います。」
そう言って朝也の頬に口付けを落とす。
目の前をみると顔が赤くなってる朝也がいた。
「ふふ、朝也さん、愛してます」
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