好きを好きなだけ

鈴卜優

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碧は部屋につくとベッドに倒れ込む。


(あ~疲れた~やっぱりまだ慣れないな。)

年に1度とはいえブランド表彰式は会社のビックイベントなのだ。

ベッドでうつ伏せになっていると疲れで睡魔が襲ってくる。

(あーやばい、寝そう。でもさっぱりしたい)

なんとか身体を起こしお風呂場に向かいシャワーを浴びる事ができた。

さっぱりすると眠気も覚めてお酒で少し気持ち悪くなっていたのも無くなっていた。

ベッドで横になりながらテレビをぼーっとみているとコンコンっと音がした。

(誰だろ、日並さん早く切り上げたのかな?


ガチャと音がし、ドアの方を見ると予想外の人が立っていた。

びっくりし思わず立ち上がってしまう。

「あー。びっくりするよね。もうゆっくり休んでるのにごめんね、急に。」

そこに居たのは影山だった。

(え?なんで?影山さん…?日並さんになにかあったのかな?)

内心パニックになりながらも冷静に影山をみる

「あ、いえ。どうかしましたか?」

「あー、杉谷わかる?」

杉谷とは数少ない男性のメイクアップアーティストで影山さんとは別店舗だが影山さんと仲が良いと聞いている。

「杉谷がさー女と2次会抜けて同室の俺の部屋にいるんだよ。」

と呆れながら言う。

なんとなく流れを察した

年に1度の表彰式は本社の人達と女性のビューティーアドバイザーの交流の機会ともなり、2次会に交流目的で参加する人も多く、女性スタッフは仕事柄、綺麗な人も多く本社スタッフも楽しみにしているのだ。実際にこれをきっかけに付き合ったり結婚する人もいるらしい。

(日並さんみたいにただ飲みたい人もいるけど…)  

「正直、俺は2次会苦手で無理矢理杉谷に連れてかれたのに抜けられたんだよね。」

と苦笑いをする

(うわ、影山さん可哀想…)

「それでそんな俺をみて日並さんが朝まで飲むからって言って鍵くれたんだよね。」

「そうだったんですね。お疲れ様です」

「申し訳ないんだけど、今日ここの部屋で寝ていいかな?あんまり話した事ないし、やだったら2次会に戻るよ。」

と、疲れた顔の影山が言う。

(いや、流石に断れないし、可哀想。少し緊張するけどどうせ寝るだけだし…)

「全然、大丈夫です!むしろ気にせずゆっくりしてください。」

影山が気にしないように笑顔で言う。

「ありがとうね。」

影山は隣のベッドに腰を下ろし携帯などを置く。

「とりあえず、風呂借りるね。もうすっきりしたくてさ。バスローブ借りるね。」

そういって風呂場に行ってしまった。

(あんまり話した事ない人と一緒の空間で寝るのなんか緊張するな。)

なぜかそわそわする。

そして自分がバスローブの事に気付きとりあえずベッドに入る。

(自分1人だったから忘れてた。まあ気にしないか…とりあえずもう横になろう。)

シャワーも浴びすっかり緊張で目が覚めてしまった碧はベッドに横になり携帯をいじる。

少しすると影山が戻ってきた

「成田くん寝た?」

と声をかけてきた。

影山の方を向き「まだ起きてます」
と答える。

「そっか。そういえばちゃんと挨拶した事ないよね?俺は影山朝也。歳は29だよ。本社とかで何回か会ったよね。」

名前や彼がどんな人かは周りの人から聞いていたが、思ってたより歳上だった事にびっくりした。

(律儀な人だな…いい人そう。そしてバスローブ姿がめっちゃエロいな、この人。)

風呂上がりで色気漂う影山に碧はドキドキした

とりあえずバスローブ姿は目に毒なので顔を見ながら自分も自己紹介をする。

「しっかり挨拶できてなくてすみません。俺は成田碧です。24歳で都内のBエリアを担当しています。」

起き上がってしっかりお辞儀する碧に影山はクスッと笑う。

「そんな真面目にしなくていいのに、はは。なんか想像通りだね、成田くん。」

恥ずかしくなり顔が赤くなる。

「ねぇ、目が覚めたなら少しだけ晩酌しない?」

備え付けの冷蔵庫からビールの缶を取り出し碧に向かって言う。

(もう目が覚めたし気持ち悪くもないし、なんか寝れる状況じゃないしこんな機会ないしな。)

「はい、是非」

不思議な夜の始まりだった。

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