16 / 17
第1章 幼少時代
マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュール
しおりを挟む
マクシミリアン殿下がいらっしゃると思われる部屋の前には、近衛兵が2人立っていた。
父と私が扉に近づいて行くと、その2人の兵は持っていた長槍を交差して私達の足を止めるように促した。
「――用向きをお願い致します」
「こちら、ガウェン公爵 ラファエル=クロード=ナ=ラファージュとその息子 カミーユ=ドミニク=ナ=ラファージュ。マクシミリアン殿下に目通り請う為参上した」
「ガウェン卿でございましたか!大変失礼しました!」
交差を解いて、兵の1人が扉に向かって2回ノックした。
「ガウェン卿と御子息様がご到着になられました!」
すると、中にいた近衛兵がスッと扉を開き、私達はようやっと入室することが叶ったのだった。
◆
斯くして、父と私が通された豪華絢爛な調度品に囲まれた応接間の中央にいたのは、天界に住まわれると思しき天使の如く美しく愛らしい1人の少年だった。
クッソかわええ!!!これ何ぞ!!?人間か!?!マジで天使なんじゃね?!!お空で遊んでた天使がちょっとドジって地上に落っこちてきちゃったんじゃね!?翼は!?背中の翼はどこに隠したの!?
脳内大暴走!!!!!である。
攻略対象 マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュールはそれはもう超絶可愛かった。
ふわっふわでキラキラ光っている――比喩ではない。キラッキラしとる――ブロンドに、私よりも濃い紫の瞳、左右対称なご尊顔は言わずもがな!!!
………………天使だ……
西洋人の顔つきは小さい頃と大人になってからじゃ、びっくりするくらい違ってしまったりすることがあるが、マクシミリアン殿下は無問題だ。何せ攻略対象になるくらいだからね!!このままイケメンに育つことは私が保証する!
「――お誕生日おめでとうございます、マクシミリアン殿下。本日は絶好の日和でございますね」
部屋に入った瞬間、マクシミリアン殿下の天使っぶりに惚けていた私は、父が殿下に結構フレンドリーに挨拶したのを聞いたところで、ギリギリ正気に戻った。
危ない。危ない。
すっかり物見遊山な観光気分になっていたが、ここには遊びに来たわけではないのだ。気を引き締めなくては……っ!!
「ありがとう、ラファエル。しかし、どうかこの場では楽にしてほしい」
「…そうかい?では、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
「ああ、ここにいるのは私と叔父上と、従兄弟殿だけだ」
「ははっ、そうだね。マクシミリアン、この子が前に話していた息子のカミーユだよ。カミーユ、こちら今代の王陛下アルノルフ様が第二子であらせられる、マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュール殿下だ」
マクシミリアン殿下が気を遣って私の話を振ってくれた。
とても5歳児ができる振る舞いではない。さすが王族。さすが攻略対象といったところか。
父の後ろにいた私は半歩踏み出して、深々と頭を下げた。
「お誕生日おめでとうございます、マクシミリアン殿下。本日、殿下に御目通り叶ったこと誠に嬉しく存じます。私、ガウェン公爵当主 ラファエル=クロード=ナ=ラファージュが第一子 カミーユ=ドミニク=ナ=ラファージュと申します」
くわぁぁぁぁあ~!!同い年(?)に自己紹介する緊張感じゃねえ!!内容も言い回しも口に出したと同時に自分が何言ったか忘れた!!声震えないようにするだけで精一杯!!
首を垂れたままマクシミリアン殿下の返事をジッと待っていると、何故か前方からスルッと布が擦れたような音がして、ついでに誰かが動いた気配がした。
殿下の返答がないため顔が上げられないが、緊張して体にグッと力が篭った。流石にこんな場所でいきなり斬りつけられたりしないだろうが、目線が不自由なのと首筋を晒しているのは無防備で落ち着かない。
色んな意味でドキドキしながら様子を伺っていると、私の目線、つまり絨毯の敷いてある床に、二対のピカピカに磨かれた小さい靴が入り込んだ。
「顔を上げてくれ、カミーユ」
ふぁぁぁあああ↑↑!!マクシミリアン殿下に名前呼ばれちったよ!!はいはい!!上げます!顔上げます!!!
内心の興奮を全力で抑えながら、恐る恐る顔を上げると、マクシミリアン殿下がニコニコしながらこちらを見ていた。
「――祝いの言葉、ありがとう。…先程、君の父君であるラファエルから紹介にあった通り、今代の王陛下の第二子であり、君の従兄弟でもある、マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュールだ。あまり気負わずに仲良くしてくれると嬉しい」
そう仰って、殿下は私の方に手を差し出された。
……え………これは握手を…握手をして下さると……そういう解釈でよろしいのですか、殿下!!?握っちゃいますよ?!!ちっちゃくて桜色をした爪が綺麗に整えられた殿下の御手触っちゃいますよ!!?大丈夫、私!?手ぇ湿ってない!?
こんな汚れた大人(中身)に笑顔で手を差し出すマクシミリアン殿下の心の清らかさに、私は胸を打たれた。色んな意味で。
「………天使だ…」
「……精霊のような見た目の君が言うのか?」
殿下は可笑しそうにクスッと笑って、感動に震えていた私の手をギュッと握ってくれた。
これが、攻略対象の1人 マクシミリアンと私の出会いであった。
父と私が扉に近づいて行くと、その2人の兵は持っていた長槍を交差して私達の足を止めるように促した。
「――用向きをお願い致します」
「こちら、ガウェン公爵 ラファエル=クロード=ナ=ラファージュとその息子 カミーユ=ドミニク=ナ=ラファージュ。マクシミリアン殿下に目通り請う為参上した」
「ガウェン卿でございましたか!大変失礼しました!」
交差を解いて、兵の1人が扉に向かって2回ノックした。
「ガウェン卿と御子息様がご到着になられました!」
すると、中にいた近衛兵がスッと扉を開き、私達はようやっと入室することが叶ったのだった。
◆
斯くして、父と私が通された豪華絢爛な調度品に囲まれた応接間の中央にいたのは、天界に住まわれると思しき天使の如く美しく愛らしい1人の少年だった。
クッソかわええ!!!これ何ぞ!!?人間か!?!マジで天使なんじゃね?!!お空で遊んでた天使がちょっとドジって地上に落っこちてきちゃったんじゃね!?翼は!?背中の翼はどこに隠したの!?
脳内大暴走!!!!!である。
攻略対象 マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュールはそれはもう超絶可愛かった。
ふわっふわでキラキラ光っている――比喩ではない。キラッキラしとる――ブロンドに、私よりも濃い紫の瞳、左右対称なご尊顔は言わずもがな!!!
………………天使だ……
西洋人の顔つきは小さい頃と大人になってからじゃ、びっくりするくらい違ってしまったりすることがあるが、マクシミリアン殿下は無問題だ。何せ攻略対象になるくらいだからね!!このままイケメンに育つことは私が保証する!
「――お誕生日おめでとうございます、マクシミリアン殿下。本日は絶好の日和でございますね」
部屋に入った瞬間、マクシミリアン殿下の天使っぶりに惚けていた私は、父が殿下に結構フレンドリーに挨拶したのを聞いたところで、ギリギリ正気に戻った。
危ない。危ない。
すっかり物見遊山な観光気分になっていたが、ここには遊びに来たわけではないのだ。気を引き締めなくては……っ!!
「ありがとう、ラファエル。しかし、どうかこの場では楽にしてほしい」
「…そうかい?では、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
「ああ、ここにいるのは私と叔父上と、従兄弟殿だけだ」
「ははっ、そうだね。マクシミリアン、この子が前に話していた息子のカミーユだよ。カミーユ、こちら今代の王陛下アルノルフ様が第二子であらせられる、マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュール殿下だ」
マクシミリアン殿下が気を遣って私の話を振ってくれた。
とても5歳児ができる振る舞いではない。さすが王族。さすが攻略対象といったところか。
父の後ろにいた私は半歩踏み出して、深々と頭を下げた。
「お誕生日おめでとうございます、マクシミリアン殿下。本日、殿下に御目通り叶ったこと誠に嬉しく存じます。私、ガウェン公爵当主 ラファエル=クロード=ナ=ラファージュが第一子 カミーユ=ドミニク=ナ=ラファージュと申します」
くわぁぁぁぁあ~!!同い年(?)に自己紹介する緊張感じゃねえ!!内容も言い回しも口に出したと同時に自分が何言ったか忘れた!!声震えないようにするだけで精一杯!!
首を垂れたままマクシミリアン殿下の返事をジッと待っていると、何故か前方からスルッと布が擦れたような音がして、ついでに誰かが動いた気配がした。
殿下の返答がないため顔が上げられないが、緊張して体にグッと力が篭った。流石にこんな場所でいきなり斬りつけられたりしないだろうが、目線が不自由なのと首筋を晒しているのは無防備で落ち着かない。
色んな意味でドキドキしながら様子を伺っていると、私の目線、つまり絨毯の敷いてある床に、二対のピカピカに磨かれた小さい靴が入り込んだ。
「顔を上げてくれ、カミーユ」
ふぁぁぁあああ↑↑!!マクシミリアン殿下に名前呼ばれちったよ!!はいはい!!上げます!顔上げます!!!
内心の興奮を全力で抑えながら、恐る恐る顔を上げると、マクシミリアン殿下がニコニコしながらこちらを見ていた。
「――祝いの言葉、ありがとう。…先程、君の父君であるラファエルから紹介にあった通り、今代の王陛下の第二子であり、君の従兄弟でもある、マクシミリアン=ダヴィド=ナ=レオミュールだ。あまり気負わずに仲良くしてくれると嬉しい」
そう仰って、殿下は私の方に手を差し出された。
……え………これは握手を…握手をして下さると……そういう解釈でよろしいのですか、殿下!!?握っちゃいますよ?!!ちっちゃくて桜色をした爪が綺麗に整えられた殿下の御手触っちゃいますよ!!?大丈夫、私!?手ぇ湿ってない!?
こんな汚れた大人(中身)に笑顔で手を差し出すマクシミリアン殿下の心の清らかさに、私は胸を打たれた。色んな意味で。
「………天使だ…」
「……精霊のような見た目の君が言うのか?」
殿下は可笑しそうにクスッと笑って、感動に震えていた私の手をギュッと握ってくれた。
これが、攻略対象の1人 マクシミリアンと私の出会いであった。
0
お気に入りに追加
979
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる