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壱
富貴蘭咲夜姫
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「そして主は妾の後釜。次代の“玉藻前”となる存在なのじゃ。」
「え……」
衝撃醒めやらぬ中またも爆弾を落とされた。
「妾が今代玉藻前となってそれなり時を過ごすと、周りが『次代を用意しろ』とせっついてくるようになったのじゃ。」
狐―改め玉藻前は自身の長くて綺麗な黄金色の髪をクルクルと弄びながら、ギッと周りにいる―恐らく先程からの話から推測するに―妖怪達を睨んだ。
妖怪達は玉藻前の鋭い視線から一斉に目を背けた。
…心当たりのある者ばかりらしい。
「…次代は妾の力の一部と魂から出来る。魂は…言ってしまえば変に歪んでさえいなければ何でもいいんじゃが、妾はあの時助けてくれた主を忘れられんでのぅ…。」
玉藻前は自身膝の上にのせていたわたしを持ち上げると、わたしにスリスリと頰を寄せてきた。
わたしが自分のケモ足でポンポンと頭を撫でると、玉藻前のスリスリが加速した。摩擦でちょっと熱い。
「どうせ自身の“子”とするなら、気に入った者の魂が良かろう?じゃから、地獄で拷問を受けておった主を、手続きして妾の元に連れてきたのじゃ。」
「……………」
やっぱり地獄で拷問受けていたらしい。
さっぱり記憶にないが、タイムラグを感じたのはこの為だったようだ。
玉藻前の話とわたしの経緯をまとめると、
わたし:チビ玉藻前を助けた後死亡→地獄にて拷問
↓
玉藻前:立派に成長し真・玉藻前に→次代を望まれる
↓
玉藻前:『わたし』を憶えていて即採用→地獄に手続き
わたし:玉藻前の憶えが良く次代に任命→地獄から引抜き
↓
わたし:次代玉藻前として妖狐に転生←今ココ
―…こういうことだろう。
「…まさか妖狐として生まれ変わるとは…」
「嫌じゃったか?…戦後の人口爆発で、死者は地獄で魂の汚れを削り落としたあと、ほとんどが転生させられるから、主の了承なく連れて来たのじゃが…」
玉藻前がショボンと狐耳をヘタレさせた。
目の前の狐様は、生まれ変わった先の母のはずなのだが、どうにもあの時の鈍臭い子狐が脳裏によぎって、放っておけない。
人外への転生に戸惑いが大いにあるが、まぁ何とかなるだろう。
まずは、妖怪という存在に慣れることから始めるとしよう。
「嫌じゃないよ、“母上”。これからよろしく頼む!」
「っ!!!そうか!そうかそうか!よろしく頼むぞ、妾の可愛い子!」
母上はとても嬉しそうな笑顔でわたしをギュッと抱きしめた。
◇
―というような具合で、わたしは妖怪として2度目の生を始めることになったのだ。
「え……」
衝撃醒めやらぬ中またも爆弾を落とされた。
「妾が今代玉藻前となってそれなり時を過ごすと、周りが『次代を用意しろ』とせっついてくるようになったのじゃ。」
狐―改め玉藻前は自身の長くて綺麗な黄金色の髪をクルクルと弄びながら、ギッと周りにいる―恐らく先程からの話から推測するに―妖怪達を睨んだ。
妖怪達は玉藻前の鋭い視線から一斉に目を背けた。
…心当たりのある者ばかりらしい。
「…次代は妾の力の一部と魂から出来る。魂は…言ってしまえば変に歪んでさえいなければ何でもいいんじゃが、妾はあの時助けてくれた主を忘れられんでのぅ…。」
玉藻前は自身膝の上にのせていたわたしを持ち上げると、わたしにスリスリと頰を寄せてきた。
わたしが自分のケモ足でポンポンと頭を撫でると、玉藻前のスリスリが加速した。摩擦でちょっと熱い。
「どうせ自身の“子”とするなら、気に入った者の魂が良かろう?じゃから、地獄で拷問を受けておった主を、手続きして妾の元に連れてきたのじゃ。」
「……………」
やっぱり地獄で拷問受けていたらしい。
さっぱり記憶にないが、タイムラグを感じたのはこの為だったようだ。
玉藻前の話とわたしの経緯をまとめると、
わたし:チビ玉藻前を助けた後死亡→地獄にて拷問
↓
玉藻前:立派に成長し真・玉藻前に→次代を望まれる
↓
玉藻前:『わたし』を憶えていて即採用→地獄に手続き
わたし:玉藻前の憶えが良く次代に任命→地獄から引抜き
↓
わたし:次代玉藻前として妖狐に転生←今ココ
―…こういうことだろう。
「…まさか妖狐として生まれ変わるとは…」
「嫌じゃったか?…戦後の人口爆発で、死者は地獄で魂の汚れを削り落としたあと、ほとんどが転生させられるから、主の了承なく連れて来たのじゃが…」
玉藻前がショボンと狐耳をヘタレさせた。
目の前の狐様は、生まれ変わった先の母のはずなのだが、どうにもあの時の鈍臭い子狐が脳裏によぎって、放っておけない。
人外への転生に戸惑いが大いにあるが、まぁ何とかなるだろう。
まずは、妖怪という存在に慣れることから始めるとしよう。
「嫌じゃないよ、“母上”。これからよろしく頼む!」
「っ!!!そうか!そうかそうか!よろしく頼むぞ、妾の可愛い子!」
母上はとても嬉しそうな笑顔でわたしをギュッと抱きしめた。
◇
―というような具合で、わたしは妖怪として2度目の生を始めることになったのだ。
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