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第三章(過去編)

◆チャプター25

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「見当が付かないわね……」
 外で爆発が起きる度に埃が舞い、ひっきりなしに激しい銃声が聞こえる空間でソフィアは眉間に皺を寄せた。
「心当たりが多過ぎる」
 何故なら豪邸内の廊下を進みつつ部下から状況報告を受ける彼女には、喜んで命を捨てる味方と同じ位、心の底から死んでくれと願っている敵が存在していたからだ。
 形式上は味方である筈の米英軍やソ連軍の中にさえ敵がいた。
「これを」
「まだ生きてたの?」
 とはいえ、先程撮影されたばかりの写真を見たソフィアは、小さく「ああ」と侮蔑を前置きした上で一体誰が仕掛けてきたのかを即理解した。
 ミュータント。
 ソフィアにとってはドブネズミに等しい彼らは、以前彼女が指揮した兵により殲滅された者達だった。
 今から十五年程前、米国で確認され始めていたスペクターへの対抗手段として、当時束の間の蜜月関係にあった独ソ両国は『兵器として運用できる人造人間』の共同開発に着手した。
 フランケンシュタインの怪物宜しく囚人や政治犯の死体を繋ぎ合わせ、特殊な寄生虫によって脳細胞から読み取った、誰のものとも知れない記憶と人格を持つ彼らは兵器として申し分ない能力を発揮した。
 だがミュータントは人肉以外の食物を全く受け付けないという致命的な欠点を解決できず、更には独ソ戦の始まりによって居場所を失い、最後はヴォルクタの片隅で細々と暮らしていた所をソフィア達に襲われて全滅した……筈だった。
だが、どういう訳かそれを生き延びた者が少なからず存在していたらしい。
「ですが、一体誰が手引きを?」
 部下からの素朴なる問いに対し、更衣室の扉前で突然立ち止まったソフィアは「趣味で人の運命を交錯させる悪癖の持ち主よ」と即答した。
 つまり――JDである。
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