22 / 45
第三章(過去編)
◆チャプター22
しおりを挟む
「ソフィア・マリューコヴァは秘密裏にある計画を進めています。それは世界を滅ぼすもの……」
その他の戦況報告と多少の世間話を経てJDがソフィアとの通信を終えると、スイス某所に建つ屋敷内の一室に小音が鳴り響いた。
「宜しいのですか?」
秘書が抜群のタイミングで紅茶を差し出したのだ。
「世界が滅ぶだけさ。何の問題もない」
濃い緋色の液体を一啜りしたJDは執務机にカップを置くなりそう告げる。
まるで他人事のようだった。
「彼女はそれが許されるだけの対価は支払ったからね。それよりも……」
続いてJDから別の話題を振られた秘書は、静かに「問題なく」と返してからリモコンを操作した。
すぐに、つい先程までソフィアの姿があったモニターに牢が映し出される。
「やあ諸君」
スピーカー越しの言葉を受けて、真っ白な空間に貫頭衣姿で座っていた者達が一斉に監視カメラを見上げた。人と同じ姿をした人ならざる面々の顔や手足には皆一様に繋ぎ合わせたかの如し傷跡が何本も走っている。
彼らもまた理不尽な形で居場所を奪われ、今はJDの支援を受けて再起の時を待ち侘びている者達だった。
「ソフィアが悪魔を作り出そうとしている」
JDがアイアンランド王の名を口にした瞬間、牢内にいる全員が憎悪の表情を浮かべ、冷ややかな空気が一瞬にして熱を帯びたものに変わった。
『呼吸すらおこがましい、神が認めた無法者』
それが彼らにとってのソフィア・マリューコヴァであり、既に目標が失われた生を辛うじて現世に留めている鉤だった。
「彼女を殺したまえ」
JDはソフィアに対する凄まじい憎しみだけを糧に生きてきた彼らの姿勢にも『美』を感じていた。
その感情はソフィアに対する好感と、彼の中では全く矛盾していない――。
その他の戦況報告と多少の世間話を経てJDがソフィアとの通信を終えると、スイス某所に建つ屋敷内の一室に小音が鳴り響いた。
「宜しいのですか?」
秘書が抜群のタイミングで紅茶を差し出したのだ。
「世界が滅ぶだけさ。何の問題もない」
濃い緋色の液体を一啜りしたJDは執務机にカップを置くなりそう告げる。
まるで他人事のようだった。
「彼女はそれが許されるだけの対価は支払ったからね。それよりも……」
続いてJDから別の話題を振られた秘書は、静かに「問題なく」と返してからリモコンを操作した。
すぐに、つい先程までソフィアの姿があったモニターに牢が映し出される。
「やあ諸君」
スピーカー越しの言葉を受けて、真っ白な空間に貫頭衣姿で座っていた者達が一斉に監視カメラを見上げた。人と同じ姿をした人ならざる面々の顔や手足には皆一様に繋ぎ合わせたかの如し傷跡が何本も走っている。
彼らもまた理不尽な形で居場所を奪われ、今はJDの支援を受けて再起の時を待ち侘びている者達だった。
「ソフィアが悪魔を作り出そうとしている」
JDがアイアンランド王の名を口にした瞬間、牢内にいる全員が憎悪の表情を浮かべ、冷ややかな空気が一瞬にして熱を帯びたものに変わった。
『呼吸すらおこがましい、神が認めた無法者』
それが彼らにとってのソフィア・マリューコヴァであり、既に目標が失われた生を辛うじて現世に留めている鉤だった。
「彼女を殺したまえ」
JDはソフィアに対する凄まじい憎しみだけを糧に生きてきた彼らの姿勢にも『美』を感じていた。
その感情はソフィアに対する好感と、彼の中では全く矛盾していない――。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる