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序章。異世界へ行ってきます

睡眠と猫は疲労への特効薬である。

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退屈な面接が終わりついに退屈な退社の時間がやってきた。

私には心の中で決めている退社時のルールがあった。

「会社を出る時は必ず右足から出る」

他の人が聞くとどうでもいいとかめんどくさいという印象を持つかもしれないがしっかりと理由があるのだ。

私は根っからの怪我知らずでありそんな大きな怪我なんてした覚えが数える程しかない。

しかもその数える程というのも軽い怪我であり未だに私の体には傷跡の1つもない。

ある日ふと自分がある程度の怪我をした箇所を思い出してみた。

数える程度しか怪我をした経験がないためスラスラと思い出すことが出来た。

覚えている中で最も古い怪我は11歳の頃にジャングルジムから落ちて左足の小指を骨折。

その次が14歳の時に体育のテニスの授業でボールが左目にあたり炎症。

その後17歳でなんでかは忘れたが左手首にヒビ。

そして20歳になってすぐにバイト中に包丁で左腕を切創。

それから現在23歳になるまで大きな怪我は無し。

怪我の記録を思い出した時に2つの法則が見えてきた。

まず1つ目は11歳から2年おきに怪我をしていること。

そして2つ目は怪我をした所が全部左半身であること。

この2つ目の法則に気づいてから私の左半身は不吉なのではないかと思うようになり験担ぎとして先程の右足からというルールが生まれたのである。

しかし今日は疲れが溜まっていた。

疲れは時に人の行動を狂わせ、大きくうねらせる。

「あ。左足から出ちゃった。」

退社するだけ、たったそれだけの行動にも疲労は邪魔をしてくる。

ボソリとそう呟いたあと、いつもの自分なら怪我をしないように気をつけるのだが今日の私はそうはいかなかった。

「ま、大丈夫か。」

疲労は判断を鈍らせる。

夜ご飯は何にしようかなぁ。

もっと考えるべきこと、払うべき注意があるはずなのに無駄なことを考えてしまう。

ドラマ録画しとかないと。

心では気をつけろと思っているのにいつの間にか柔らかいどうでもいい話に心が擦り寄っていく。

夜景ってなんだか綺麗だなぁ。

夜の匂いって落ち着くなぁ。

あぁ、帰り道に猫に会えたら幸せだなぁ。



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