元面接官、異世界で人情結婚コンサルタントを開業しました！

序章。異世界へ行ってきます

時計とは時間と人柄を映す鏡である

「それってロレックスのエクスプローラー1だよね？廃盤になっちゃったやつ。」

私がそのように質問をすると彼は同じ趣味の人が見つかって嬉しそうな顔で自信満々に答えた。

「そうなんです！実は私時計が趣味でうんたらかんたら。」

時計が趣味と聞いて少し期待してみたがやはり不採用だな。

私は話をいかにも楽しそうな笑顔で聞きながらそう感じた。

私が彼に落胆したのは彼の時計の話が私の感覚とはズレていたからではない。

私は時計なんか好きでもないから実際彼の時計の趣味がどれだけ悪かろうがどうでもいいのだ。

私が彼に落胆したのは時計について話している彼の姿がどこか非常に微妙な点において欠けるところがあると感じたからだ。

ほとんどの就活生は時計を付けている。

結構値が張る時計を。

そんな人達の8割は親や教師などから言われたから付けているという一種の装備のようなものである。

8割の人間と残りの2割の人間の違いというと後者は時計を時間を見るための時計としてつけているのに対し前者は時計を自分を飾るためのアクセサリーとしてつけているところだろう。

だいたい今は日本のどこにいようと簡単に時間が確認できるツールが沢山あるためいちいち腕に時計を垂らしておく必要などない。

しかし面接では時計は必須装備のように扱われているのが面接と日常のギャップだろうか。

そんなことを考えていると彼の話が終わっていた。

今日最後の面接で疲れが溜まっていたこともありいつの間にか私の顔から楽しそうな顔が消えていることを自覚した私は慌てて笑顔を作り直した。

なんだか明日が来なければいいのにな。

そんなことを思ったのはいつぶりだろう。

最後に心からの笑顔を浮かべたのはいつだろう。

腕のアクセサリーが18時半を指しながら私の顔を映した。