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第42話 大成長
しおりを挟む様々なことを行って、徹底的に今の俺の身体能力について調べた。
結果から言うと、以前までとは比べ物にならない進化を遂げており、ゴブリンとは別種の魔物になったのかと錯覚するほど。
まず跳躍力は【跳躍力強化】のスキルを使わずとも、垂直飛びで軽く三メートルは飛べている。
次に体力に関してだが、これはあまり伸びていないのか、思っていた以上にスキルを連発することができない。
さっきの木剣で木を薙ぎ倒したことからも、【毒針】を連射できるようになっていると思ったんだけどな。
体力の消耗具合いから見ても、計四発ぐらいしか撃つことができないと思う。
以前までは計二発だったから、単純計算で体力も倍になっているとはいえ想像以下の伸び。
耐久力に関してはつねったり、体を木にぶつけたりもしたものの、いまいち分からないことが多い。
自分の力も強くなっているせいで、正確に測れないっていうのが正解だろう。
とりあえず全体的な成長度合いは凄まじく、本気で体を動かすまでは変わっていないものだとばかり思っていたが、確実に進化を遂げていることが分かった。
何なら人間だった頃よりも身体能力が上がっており、今なら何でもできる気がしてしまうが……油断は絶対にしない。
最初があまりにも地獄だったが、喰った相手の能力を得ることができるということは無限の可能性を秘めているということであり、ここからは更に強い魔物や人間を捕食できるようになるということだからな。
こんな程度で慢心はせず、勇者を軽く捻ることができる力を手に入れるまでは貪欲に力を欲していくつもり。
色々なことを考えたせいで昂る気持ちを抑えながら、ここからは新たに会得できた能力がないかを探っていく。
……とは言ったものの、自分に身に着いた能力の見当もついていないんだよな。
バエルやイチは、頭の中で聞こえた声を頼りに能力も使えるようになったと言っていたが、俺の場合はその声を聞けていない。
魔物から能力を得た時と同じように自分で見つけないといけないんだが、おっさん戦士が使っていた能力なんてなかったように見えるからな。
こればかりは数打って当てるしかない。
ルーキーランクの魔物と違って、おっさん戦士から得られた能力は期待が持てるしな。
まだ昼前だが、ここで一日潰す覚悟で能力を使用していくことを決めた。
辺りはすっかりと暗くなっており、今日は一日中ずっと頭に浮かんだ能力を使ってみようとするという行為を繰り返していた。
結果からして、発見することができた能力が三つある。
一つ目の能力は【硬化】と名付けた能力で、意図した体の一部を硬くすることができる能力。
硬度で言ったら石ぐらいの固さだが、それでも防御の時に重宝する有用な能力。
一応全身を【硬化】させることもできるが、体力が増えた今でも体力の消耗を激しく感じるほどで、もって十秒がいいところな上に関節も固まって一歩も動けなくなることから、全身を【硬化】させるメリットはかなり低い。
それと……【硬化】の能力についてはこれが一番の使い道だと思うのだが、【硬化】させてから【爆発】の能力を使用することで自分の体を守ることができる。
【爆発】のデメリットを打ち消すことができる非常に相性のいい能力。
同時に使用すると体力の消耗も激しくなるのだが、そのことを加味しても使い勝手が良い。
そして二つ目は【身体強化】と名付けた能力で、その能力名の通り自身の身体能力を上昇させるシンプルで使い勝手の良い能力。
どんな場面でも使えるし体力の消耗もほとんど感じないため、戦闘中は常に使い続けてもいいと考えている。
衝撃度はゼロに等しいが、素直に身に着けることができて嬉しいと思えた能力。
最後の三つ目だが……能力名は【微風】。
名前から既に微妙なことが分かるだろうが、その名の通り体から【微風】を出すことができる能力。
本当に微妙な風で、木の葉一枚を動かせるぐらいの風。
多分だがこの能力は、ルーキーランクの魔物を食って得た能力で、今回偶然発見できたって感じだろう。
最初の二つがかなり早い段階で見つけることができ、最後最後で発見したこともあってその能力の微妙さには心底ガッカリしたが、まぁないよりはマシ。
いつか使う場面に備えて記憶だけはしておこうと思っている。
とにかく、これで俺が今使える能力は【四足歩行】【発毛】【毒針】【粘液】【毒液】【悪臭】【変色】【跳躍力強化】【絶叫】【爆発】【硬化】【身体強化】【微風】。
数自体は増えなかったが、実戦で使えるスキルが毒関連と自爆しかなかったことを考えると、戦闘でのバリエーションも増やせる能力を手に入れることができたと思う。
まだ俺の中で眠っている能力はありそうだし、本当はもっと試したかったが……今現在で思いつく限りのことは試したしこんなものだろう。
結果にも満足できているし、これでバエルに引け目を感じずに済む。
逃げるようにここまでやってきた時とは違い、明日の狩りを楽しみにしながら俺は胸を張って巣に戻ったのだった。
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