普通に役立たずなので当たり前の様に追放されたんだけど明日からどうしよう

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漂流した教室編

救済の術を求めて

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「平和だねぇ……」
「平和だな」
 俺はギルドマスターとお茶を飲みながら、久しぶりの平穏を味わっていた。シンジが連れていかれてからというもの、妙なトラブルもなくなり漂流してきたみんなも生活に慣れてきていた。
「しかしホームシックとか心配だね」
「ホームシック? あー、帰りたいだろうなー……」
 今のところ問題はないが、ギルマスは彼らがホームシックにならないかと気を揉んでいた。家に帰りたいと思ったことのない俺には分からないことだが、突然変な場所に飛ばされてこのギルドに帰れないことになったら嫌だな。
「相変わらず優しい子だねぇ。家にはあまりいい思いないだろう?」
「まぁそうだけど、そうか? 家をここに置き換えたらなんとなく分かるだろう?」
 ただギルマスの言う通り、俺が特別優しいかというのは微妙なところだ。少し想像を働かせれば、他人の気持ちをおもんばかるのは不可能でない。理解出来なくても、踏み込まない踏みにじらないという態度が大事だ。
「意外とそれが出来ない奴がいるんだよ、長く生きているとね……」
 しかしながら、多くの経験をするとそんなことも出来ない奴も見るそうだ。マジか。あ、いやいるわ。サナトリ村の連中とか。
「まさか……いや、心当たりある、かも」
「例えば、戦場なんてのは殺し殺される場だ。自分が殺していれば、自分や仲間が殺されることもある。人同士の争いはめっきり減ったがね」
「あー、喋った魔物もそんなこと言ってた様な」
 俺は魔物と交渉してやり過ごしていた時期もある。だから『なぜ仲間を殺した人間と交渉できるのか』と聞いたこともある。返って来た答えがそんな感じだったかな。
「殺しに来て殺し返されるのは御免被る、というのは通用しないのは分かるだろう? あの子もそれが理解出来ているから苦しんでいるのさ」
「ああ、フィルセか。微妙っすね、テーネみたいに生まれつき烙印持っちゃった場合じゃあ身を守る為に返り討ちにしたパターンとかあるだろうし」
 フィルセは仲間の仇が鉄腕の烙印持ちと言っていたが、その人物がどういう経緯で彼女の仲間を殺したのか分からない。剣を向けられれば生き残る為に剣を抜かねばならない。魔物だから死んでくれと言われて、ハイハイと死ぬ奴もいない。それなら俺達バスターは加護を示しながら武器を掲げるだけで魔物を狩れてしまう。
「烙印持ちといえば、あのテーネって奴とは知り合いなんで?」
「昔からの腐れ縁って奴さ。あいつはこっちからちょっかい掛けなきゃ無害だよ」
「ほーん」
 テーネとはやはり顔見知りだった。昔から、というが年齢的に小さい時から知ってそうだな。
「やっぱ生まれついての烙印持ちだったんで?」
「さぁその辺は私も分からないね。会った時から烙印はあったし、そこまで踏み込んだ話をする仲でもなかったからね」
「じゃあやっぱ生まれつきなんかな?」
 ギルマスの言う昔がいつか分からないが、あいつの年齢からして昔っつたら本当に子供の時だろうしやっぱ生まれつきの可能性はあるな。だとしてもあのレベルは凄いけど。それだけ命を狙われて返り討ちにしてきたってことなんだろう。
「魔物も同じさ。刺激しない方が却って被害を出さない時もある。バスターに大事なのは敵を倒す腕っぷしでも悪を見逃さない正義感でもなく、民を守る使命感さ。その辺、お前さんは立派にやってるよ」
「まぁ、強い魔物には挑めないだけな感も否めないけど……」
 なんというか、素養皆無でバスター業をするためにそうなってるだけな気がする。
「それでいいんだよ。エンタールのバスターは強敵とやらを求めていなくなっちまったんだから」
 あー、そういえばそうでしたね。
「リュウガ・アークライド。依頼ですよ」
 俺達が話し込んでいると、妖精王であるニアがやってきた。手には二本の大きな瓶を持っている。
「ニア、もしかしてあいつらを元の世界に返す算段が?」
「そのもしかして、です。材料を集めるお手伝いをしてほしくて」
 彼女はずっと、教室と共に転移してきたみんなを元通りにする方法を模索していた。そしてそれが見つかったのだという。
「どこに行けばいいので?」
「ここからずっと南に行くと、アッキ族っていう人達がいます。これは手土産ですので、彼らから『紫毒晶』というものを貰ってきてください。量は拳大で十分です」
「分かりました」
 アッキ族、話には聞いたことがあるが、実際に行くのは初めてだな。
「これを素材と交換してきてください。彼らは自給自足の生活をしていて、貨幣ではなく物々交換をします」
 ところ変わればもの変わる。彼らは自分で作れないものを外部から貰って生活している様だ。
「依頼か? リュウガ」
「フィルセ、お前も来るのか?」
 話を聞きつけ、フィルセがやってきた。
「あんた一人じゃ魔物に出くわした時大変でしょ?」
「まぁそうだけど」
 反論は出来ないが、今回は討伐でもなければそんな強力な魔物のいる場所行かないんだけどな。彼女は瓶を見てその内容を察する。
「アクエール、アッキ族のお気に入りね」
「ラベルが違うけど、中身一緒か」
 二本の瓶はラベルが異なっているが表記を見る限り同じ飲料。片方には真紅の肌に角の生えたアッキ族の姿がデフォルメされたイラストで描かれている。
「彼らは自給自足の生活をしているけど、なぜかこれは好きなのよ。似た様なのもあるけど、このブランドが」
「なんだろう、不思議だな。でもラベル変わっちまったんだ」
 ただ、どうも瓶や封の質感から同じ発売元と思われるのだがラベルだけが変わっている。
「ああ、なんかあの絵が差別的だとかどうとか」
「かわいい絵じゃないか。ていうか渡しても問題無かったんだろ?」
 フィルセが言うには、差別的な意図があるとして差し替えられたようだがこのラベルのブランドをアッキ族が気に入ってたということは彼ら当人は気にしてないんではないだろうか。イラストも揶揄するというより、かなり可愛い感じに書かれている。
「なんか最近、他種族への差別的な表現を取り締まる団体が出てね」
「人間世界は大変ですね」
 他人の気持ちを考えるのは大事だが、勝手に代弁するのはダメだな。
「それと烙印持ちに会ったそうですね」
「ああ」
 ニアが烙印持ちの話題に触れると、一瞬でフィルセがピリつく。
「可能であれば少しでいいので血液を貰ってきてくれませんか? この布きれにシミが付く程度でよいので。素材と手順を大幅に省略した上で精度があがります」
「首でなくていいのか?」
「それでは似た様なことが起きた時に困りますので」
 さすが妖精王というべきか、フィルセの危うい発言をさらりと躱した。
「ふん、命拾いしたな」
 ここにいないテーネに言いつつ、彼女は出立の準備をした。

   @

「このフロシキ包み、便利だな」
 ハルカに瓶を布で包んでもらい、手に提げてフィルセは持ち歩く。どうも彼女達の土地では布一枚あれば色々なものを手提げ出来るらしい。
「で、あんたのは何よ?」
「これか?」
 俺はもしアッキ族に会うことがあるなら、とあるものを準備していた。木のこぶで出来たこん棒だ。
「薪を貰いに行った時に、材木屋さんが処理できないこぶがあるって困っててな。アッキ族がこん棒を好んでいるって聞いて加工してみたんだ」
「本職は木こりなんじゃないかな」
 木のこぶは硬く、大きいので燃えにくい。処分に悩む代物だが、有効活用できればと作ったものを持って来た。まぁ確かに木こり暦の方が長いかもしれないけど。
「しかし道のりは長いな」
「依頼じゃここまで来ないからね」
 アッキ族の住む場所はギルドの依頼が届く様なエリアから外れている。彼らは魔物も自力で討伐するだろう。この辺は魔物もあんま強くないからな。ウォールバイターの時はさすがに慌てたが、多少強くても討伐できる戦力が付近にいる。
「魔物とも遭遇しないな」
「この辺は街と街の間だから魔物も増えがちだけど、やっぱ中間に集落があると違うわね」
 大きな街と街の間はその距離的な問題から、魔物の討伐が行き届かないエリアなのだが間に村があればそこに在住するバスターが掃討してくれる。バスターがいればだが。
「まぁ荷物持ってるなら戦闘しなくていいのは助かるけどな」
 整備された道を進むのは、魔物と出くわしにくいから。魔物だってバカではない。人を容易に返り討ちに出来るほどの力がないのなら、こういう大通りは向こうから避ける。当然戦闘力を持たない一般人狙いの魔物もいるだろうが、俺達みたいにしっかり武装したバスターが大手を振って歩いていると飛び出しにくいだろう。
「この辺の道を脇にそれると集落よ」
「知ってるんだ」
「まぁね」
 特に看板や目印のない脇道に反れる。一応、何もない脇道にあるとは聞いたが、フィルセがいなければ見逃すところだった。道は細いが整備されているので歩きやすく、邪魔になる草木もない。
「ここか」
 道を進んでいくと、開けた場所に出る。丸太で組んだ家が並んでおり、あのラベルに掛かれた様な赤い肌の人々が暮らしていた。
「外のバスター?」
「あ、はい」
 入口に詰めている門番に尋ねられたので正直に話す。言葉は拙いが、背がすらっと高く迫力のある女性だ。隣の男性も中性的な顔立ちをしている。額から生えた角は黒く、細身で鋭い。
「素材と物々交換をしに……来ました」
「何緊張してんのよ。アッキ族は美形が多いからってデレデレしない」
「はい!」
 フィルセに喝を入れられ、気を取り直す。その時、彼女の姿を見つけてアッキ族の子供が走ってくる。
「フィルセー! きた、ひさしぶり」
「あら、ゼヴォ。大きくなったんじゃない?」
 集落の位置も知っており、中に知り合いもいる。フィルセは来たことがあるのだろうか。ゼヴォは魔物の革で出来たベストとハーフパンツを着込んだ、集落の中でも幼い方の子供と見える。
「無茶してない、血の匂い薄い」
 彼の特技か種族の特徴か、嗅覚でフィルセの負傷を見抜いた。だが、全くしないわけでないのが気になる。魔物と戦っていないし、武器にだって血はついていないはずだ。
「どこか怪我したのか?」
「あんたねぇ……」
「おまえ、デリカシー、ない」
 心配したのだが、フィルセとゼヴォに呆れられてしまう。俺なんかした?
「それより、紫毒晶をこれと交換してほしいんだけど。拳大のでいいから」
「おう。オトンに取ってもらう」
 彼女は交換の話を進める。俺達はゼヴォの家に招待され、そこで取ってきてもらうのを待つことにした。
「しかし鉱石ってのは取れるのに時間掛かるんじゃないか?」
「毒霧の洞窟で毒素が凝結したものが紫毒晶なの。採取自体は容易だけど、特殊な鉱毒が充満しているからアッキ族じゃないと安全に取りにいけないのよ。彼らは鉱毒に耐性があるから。とは言っても凝固した毒素だから常備はしないのだけど」
「詳しいな」
 フィルセはやけにアッキ族の風習に詳しい。集落の場所も知ってたし。
「まぁね」
「近く、倒れてた。怪我して」
「ああ」
 ゼヴォの拙い言葉でもどういう経緯があったのかは概ね理解出来た。オーバーワークをしていた時期に怪我したところを助けてもらい、それでこの集落と縁が出来たって感じか。
「その後も遠くまで行く理由になるからお使いの依頼させてもらって、なんだかんだここの事をよく知る様になったの」
「家来るか?」
「ええ、今まで歓待を無下にしてきたし……」
 死に場所を求めていた頃のフィルセは相当ドライでビジネスライクな関係を彼らと築いていた様だが、それでもアッキ族は悪しからず思ってくれていた。依頼の関係か元々の性格か、敢えて嫌われる様な真似はしなかった。呪いの武器の一件以来、彼女が働き方を改めたのは俺達の働きかけだけではなく、彼らとの交流もあったのだろう。
「しかし立派な家だ。丸太をそのまま組んでこの形にしたのか……」
 木造の家というのは材木の丸みを落として組みやすい様にして建てるものだが……丸太を使っているのか。全てが全て丸太というわけではなく、床材などはよく見る木造住宅と同じか。
「おじゃまします」
 家の中には、アクエールの瓶が飾ってあった。花瓶にするでもなく、ただ瓶が飾ってある。ここは集会場にもなっているのか、多くのアッキ族がつめかけていた。
「おお、アクエール」
「楽しみだ」
 家の中にいた大人のアッキ族たちは子供の様にウキウキと手土産を楽しみにしていた。そんなに旨いのかこれ? 今度買ってみるか。
「変わった手提げ」
「フロシキ包みって言うみたいね」
 風呂敷の中身を見たアッキ族達は瓶のラベルを見て、少しがっかりした様な様子を見せる。
「あれ? アクエールがお気に入りと聞いたけど……」
「あー、やっぱりラベルかな?」
「同じものだぞ?」
 フィルセは彼らの反応にピンときた様だ。ラベルは変わったが、中身は同じ。文字文化が同じかどうかは知らないが、瓶を飾っているくらいならアクエールを示す単語くらいは読めそうなものだ。
「あの絵、気に入ってた……」
「え? 絵なのか?」
「そう、絵なの」
 大人が凄い勢いでガッカリするので驚いたが、フィルセによると彼らがアクエールを好むのはあのラベルが一因の様だ。
「当然中身も人気だけど、あのラベルに自分達の絵を可愛く描いてくれるのが気に入っていたみたいね」
「全然差別的じゃねぇじゃん」
 本人らが気に入っているものを外野が台無しにしてしまったパターンか。閉鎖的な部族じゃないし、こいつらに聞けばそんなのすぐわかったもんだろ。いや、もしかして他の集落じゃ人気ないのかな?
「もしかして他の集落では……」
「他の集落でも人気よ。アッキ族同士で瓶が通貨の様に扱われているの」
「すげぇ価値じゃん」
 まさかの人気沸騰だった。
「この前、こんな奴来た。ラベルのこと、聞いてきた」
 ゼヴォは黒板に絵を描く。どうもある女性の姿を描いたもののようだが、抽象的でよく分からない。影響されているのか、あのラベルの絵柄に近い。
「ん?」
 だが、それでも俺は引っ掛かるところがあった。たしかこの前、こんな奴見た様な……。いや魔王の鎧の時もいなかったか? その時は忙しくて全員のことをいちいち把握なんてしていなかったが、魔王関連の事件で出会うから妙に記憶に残っているというか。
「もしかして……」
 俺はハルカ達から貰ったルーズリーフというものを取り出し、鉛筆でその記憶を辿り絵を描く。
「何それ?」
「ルーズリーフってもの」
 凄く真っ白な紙で正確な罫線が引かれており、軽くて硬い物質で本の様にまとめられている不思議アイテム。俺達は紙でさえ貴重だってのに、こんな真っ白な紙が店で安く買える土地と聞いてびっくりしたもんだ。鉛筆も断然、ものがいい。
「ていうかあんた絵描けたんだ」
「画商で食ってけるもんじゃねぇけど、木彫りにアウトライン引くには使うだろ?」
 フィルセには言ってなかったが、まぁ俺レベルじゃ絵画で飯は食えん。絵具だって一度も触ったことがないんだからな。本当に趣味の木彫りをする補助くらいなものだ。
「こいういう奴か?」
「そうそう!」
 俺はウォールバイターの時、引き継いだパーティーにいたバレッタの少女を描いた。ゼヴォや他のアッキ族はまさにこいつだ、と反応を示す。
「へぇ、じゃああなた達の意見を聞いてくれたなら、頓珍漢な理由でラベルが変わることも無さそうね」
 フィルセはちゃんと話を聞いてくれた人がいる様で安心したのだが、ゼヴォは首を横に振る。
「その人、あまり話聞かなかった」
「え?」
 こんなとこまで来てわざわざ話もさほどせず帰った、となると考えられる理由は一つだ。
「なるほど、そいつはラベル替えたいからお前らが不愉快に思っているって結論ありきで話を聞きに来たんだな」
「まさかね」
 フィルセは想像できない様子だったが、こういう汚い奴ってのはいるもんだ。サナトリ村で嫌というほど思い知ったぜ。魔王の鎧の件も、あのクソジジイが封印がないという結論から出発してえらいことなったわけだし。
「しかしこの机、よく出来てるなぁ。がたつきもないし、手触りもない。椅子もだ」
「それ、おれ、作った」
 この家の家具はゼヴォが作ったらしい。子供の様だが、凄い腕だな。
「すげぇ、俺にはとても無理だぜ……」
「あんだけ木の扱いが上手いんだから出来そうなものだけど」
「手元に収まる程度が限界だ。切るのと作るのでは別物だからな」
 流石にここまで大きいと、こんなしっかりと安定したものを作るのは難しい。大工仕事と木こり仕事は似ている様で違うんだ。
「俺に出来るのはこんなもんだ。はい、こん棒」
「おお、持ちやすい」
 アッキ族にこん棒を渡すと気に入ってもらえた様だ。何よりだ。
「これだな」
 しばらくすると、求めていた素材を持ってアッキ族の一人が現れた。紫色の半透明な結晶、これが紫毒晶というものか。やはり毒物なので扱いに気を付けねばならないので、フィルセは皮の袋に入れた。
「短かったけど、今日の用事は終わりね。また会いましょう」
 そして彼女は集落を立ち去ろうとする。次は烙印持ちの血。花街にいるテーネのところだ。
「まってくれ! おれもいく!」
 その時、ゼヴォが荷物を纏めて支度をして追いかけてきた。
「え?」
「みんな、あのラベル気に入ってる、元に戻す!」
 その手には羊皮紙何十枚にも渡る嘆願書の束が握られていた。そこまであのラベルを気に入ってもらえたんなら描いた人も嬉しいだろう。
「花街なんだけど子供連れてっていいの?」
「おれ、14歳! もう大人!」
 フィルセは次に寄るのが花街ということもあり、ゼヴォを連れていっていいのか悩んだが、もうこっちの基準でも立派な大人だ。親もフィルセに頼み込む。
「お願いします。これ考えたの、うちの子。私達のため、頑張ってくれた」
「嘆願書をね……いいんじゃねぇか?」
 ゼヴォが嘆願書のことを思いつき、みんなの意見を取りまとめて直に訴えにいくと決めたのだ。こいつが魔物と戦えるかは知らないが、バスターである俺らが守って行けばいい。
「……私、相当長いこと足踏みしてたみたいね」
 彼女の反応を見ると、無茶してここに担ぎ込まれたのは今から一年以上前の様だ。
「行きましょう。次の目的地は花街。私達は、ある人達を助ける為に材料を探している」
 俺達はゼヴォをチームに加え、花街へ向かうことにした。俺達は見送られながら集落を後にする。
「でも私達から離れないで。外には魔物がいるから」
「魔物あんまいなぶ」
「花街も甘いこと言って誘ってくるけど、基本ろくでもないからああいうとこで遊ぶのは大人になってもまだ早いわ」
 出るやいなや、注意事項をゼヴォに話すフィルセ。そんなに魔物いたかなと言おうとしたら口を塞がれてしまう。
「それにこれから会うのは人殺しを生業とした烙印を持つ者。見た目が情けなくても油断しないで。常に私達から離れないで用心してね」
「そんなに外危なかったか?」
 めっちゃ過保護やん。ゼヴォも初めて外に出るわけではなさそうだが。
「なぁゼヴォ、お前外は出たことあるか?」
「うん、でもこっち初めて」
「あー、向きか」
 アッキ族の集落は他の村とエンタールの間にある。エンタール側へ行ったことないだけで集落の外自体は出たことあるのか。
「おい、あれ……」
 俺が進んでいる向きを見ると、街から煙が出ているのが見える。ただの煙じゃない。黒煙だ。
「火事か?」
「ああ、らしい」
 ゼヴォは即座に火事と判断した。俺もそう見える。一体花街で何が起きているんだ?
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