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封印されし魔王の鎧編

審問官のヒミツ

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「よく寝た……」
 ギルドの二階にある仮眠室で俺は目を覚ます。ベッドもマットレスもそれなりに古いが、シーツなどがしっかり洗われているおかげかスッキリ目覚めて身体が軽い。
「久々だからどうだったかわかんね……」
 借りたものは綺麗に返したいがベッドで寝るのも久々なのでよくわからない。他のベッドを見て見様見真似で直しておいた。
「あれ?」
 昨日は疲れていたのと暗かったので気づかなかったが、近くのベッドでフィルセも眠っていた。とっくに催眠の効果は切れているだろうが、未だ目覚めることなくぐっすりだ。枕を抱きしめ、すーすーと寝息を立てている。口を開かなければ可愛いところもあるものだ。
 さすがに回復魔法だけでは治療し切れなかったのか、傷も手当されていた。かなり無茶をしている様だ。
 俺は荷物を持って下に降りる。そろそろ役所も開いて職探しが出来るだろう。
「おや、おはよう」
「おはようございます。お世話になりました」
 お婆さんはギルドの掃除をしていた。朝になっても他のバスターは姿を見せず、賑わった様子がまるでない。
「もう行くのかい?」
「はい、仕事を探さないと」
 バスターとしてはやっていけないので、早いところ住み込みの仕事が欲しい。宿代も無いので、今日中に何とか決めたいところだ。
「その前に朝ごはん食べていきなされ。力が出ないぞ」
「いいんですか?」
「なぁに、困った時はお互い様じゃて」
 なんと、寝床を貸してくれただけでなく朝飯まで食べさせてくれるという。テーブルに着くと、焼いたロールパンとコップに入った牛乳が出てくる。
「質素で悪いねぇ」
「いえ、そんなこと……」
 ろくに飯も食えてなかった俺からすれば豪華もいいところだ。香ばしい香りと小麦本来の甘みが身体に沁みる。
「ところで、昨日見通しの鏡で見た分じゃとお前さんの破門が正当とも思えんのだが……」
 お婆さんは昨日の話の続きをする。確かに当初納得は出来なかったが、純粋に数字だけ見ると仕事していない様に見られても仕方ない部分はある。
「でも依頼の件数や魔物の討伐数が……」
「バスターは倒した数よりも守ったもので語るものぞ。封印維持の件数が非常に多い……これの評価無しに破門措置はおそらくどのギルドでも疑問が出るじゃろう」
 倒した数よりも守ったもの……か。確かにバスターなんて呼び名のせいで勘違いしてしまうかもしれないが、元々魔物を倒すのは戦えない人を守る為だったなぁ。
「そんなに大事なんですか? 封印維持の件数って」
「それはもう。ギルドというのはその地域の魔物討伐を一手に引き受け、それによって生じる利益を独占出来る……が権利には当然義務が生じる。その一つがその土地に封印された魔物の封印維持じゃ」
 そんな義務がギルドにあったのか……。知らなかった。
「お前さんの魔力じゃと如何に封印が簡素な維持機構を成立させておっても毎日魔力を込める必要があるじゃろ。件数からして、もしや封印の維持はお前さんだけでやっていたのか?」
 封印か……。ほぼ毎日やってはいたが同じ封印維持目的の誰かと出くわすことはなかったし、そもそもことの重要性がギルマスのジジイに分かっていれば報酬も出ただろうし、破門にだってならなかったはず……。いや、誰でも出来るから破門になったのか?
「た、多分……。そもそもそんな重要なもんだって知らなかった……。まぁ大したことないだろうけど万が一ってことを考えてやってたけど……」
「そうか」
 って、待てよ? ということは封印維持しに行かなきゃかなりマズイんじゃ……。
「すいません、俺帰ります! 封印が解けたら大変なことに……」
 慌てて立ち上がる俺をお婆さんは座らせた。
「いやさすがに封印の重要性を分かっておらんギルドはおるまい。お主が維持できるなら、他の者を宛がっても十分出来る」
 そうとも思えないのが怖いとこだが、少なくともギルド運営者として最低限の良識はあると信じよう。
「そっか。でも封印された魔物って倒せないんですか?」
 倒さずに封印したということは、それなりに厄介なんだろうが当時よりも武器の性能やバスター全体の練度が上がっていて倒せる可能性はあるはず。だが、そういう問題でもない様だ。
「倒せるやもな。じゃが、それまでに多くの犠牲が出る。バスターだけならともかく、村人にもな。それに、魔物によっては土地を汚染し、不毛の地とする力を持つモノもおる。倒せば禍根は消えよう、が、初歩のバスターが毎日魔力を込めるだけで平穏が保てるならそれに越したことはない」
「あー、それもそうか。もっと魔力の高いバスターなら頻度も減らせるかも」
 問題の先送り、の様に聞こえるかもしれないが、うちの村の場合は先送りにした方が圧倒的に安全という状態だ。
「ところでお前さん、無理にとは言わんがうちでバスターやらんかね?」
「ここで……ですか?」
 お婆さんにギルドへの加入を勧められた。バスターをやめようと思っていた矢先、そんなことを言われても即答は出来ない。
「バスターには格安で貸している家もあるんじゃ。どうじゃ?」
「うーん、でも俺バスター向いてないし……」
 状況を見透かしたかの様に住処も用意してくれたが、飛びつく気にはなれなかった。
「どうしてそう思う? これだけ強い魔物に囲まれながら死なずに封印維持を全う出来る実力があるじゃろ」
「いや……基本ジョブが一つも取れなくて……偶然審問官が取得出来て金縛り魔法や看破スキルがあるから何とかやっていけたけど……」
 審問官というジョブには何かと助けられている。ナシバやゼナシバの様な金縛りは逃げる時に役立つし、看破スキルで魔物の強さが分かれば危険も避けられる。
「それでか……審問官の割にレベルが低かったのは」
「え? 審問官ってレベル高いんですか?」
 お婆さんは何か納得したかの様に呟く。それにはジョブの仕組みが大きく関わっていた。
「通常、審問官はプリーストとアサシンのジョブをある程度収めてようやくなれるものじゃ。アサシン自体がシーフの習得を要するから、その難易度は高い」
「そうなの……」
 それで昨日、門番は俺が回復魔法持ってるって思ってたのか。
「でもなんでそんな上位職に基本ジョブも取れない俺が?」
 そうなると、基本ジョブからも足切りされている俺がいきなり審問官になれる理由がよく分からない。もしかして一種の才能か?
「実は魔王が脅威だった頃に人間に化けた魔物が多く出回ってな……。人々が疑心暗鬼に陥った時期がある。それを見破るスキルがある審問官が多く必要になり、神殿は審問官の取得条件を大幅に緩めたんじゃ」
「それで俺にもなれたのか……」
 蓋を開けてみると、才能でも何でもなく必然であった。所謂テコ入れというやつだ。
「ところがそうなると今度は審問官の職能を悪用する輩が現れてな。看破出来るということを盾に気に入らない人間を魔物に仕立て上げ、財産を奪って私服を肥やすようになった。思ってみれば魔王の狙いは初めから人間同士の内紛を起こすことだったんじゃろ」
 誰でもなれる、ということが最悪の形で利用された。俺が門番にした様に加護を示せば少なくとも審問官であることは事実として証明できる。ただし看破の内容は別だ。これは俺にしか分からない。他の奴には俺から口頭で話すしかない。
「それで初期審問官は嫌われ、選ぶ人間がいなくなったんじゃ。元々、バスターとしてもプリーストとしての魔法、アサシンとしての戦闘技能ありきじゃったから初期で選ぶ理由もそうないしのう」
「うへぇ……尚更俺バスター向いてないじゃん……」
 そこまで言われたら余計にバスターとしてやっていく自信がない……。
「今、この街はバスターがいなくて困っておる」
「いないんですか?」
 お婆さんから衝撃の事実が告げられる。確かにこのギルドの閑散具合は異常だと思っていたが……。
「門番はバスターとしての加護を神殿から受けておるが、外に出向いて魔物を倒すことは出来ない。門を守る者がおらんくなるからな。じゃが、街道に蔓延る魔物を退治する者もおらん。ここの建物にいたギルドは、儲かる大型魔物がなくなってそそくさといなくなってしまった。道に溢れる魔物を地道に倒すバスターを『雑魚専』などと蔑んでな。なんとしてもこの街にギルドを成立させねばならん」
 ギルドが無いというのは確かに困る。だがバスターの仕事も命懸けだし……できれば安全に食って行きたいんだよなぁ……。そんなに金持ちになんかならなくていいから。
「うーん……どうしよう……」
「まぁ、仕事に困ったらいつでも来なさい。ここのことは頭の片隅にでも置いておいて」
 悩んだが、お婆さんもそう言ってくれるしまずは仕事探しか。
「んじゃ、世話になりました。もしその時はよろしくお願いします」
「うむ、待っておるぞ」
 俺は立ち上がり、食器を食堂の返却口に返してギルドを出る。よし、今日から心機一転頑張るぞ。そんなことを思っていたら、昨日の門番が走ってやってきた。
「た、大変だ!」
「どうしたんです?」
 魔物でも攻めて来たのか? いやまさか今時の魔物がこんな塀も構えた街を襲うなんてことがあるのか?
「フィルセちゃんが門を突っ切って出て行ってしまったんです!」
「何だって?」
 何と昨日のフィルセが街を飛び出したそうだ。いや、さっきまで上の階で寝てなかったか?
「ん? でも確か今朝はぐっすり……」
 俺は一回ギルドに戻る。門番さんがお婆さんに説明して、三人で二階に向かって寝床を確かめる。すると、ベッドは綺麗に整っていたがもぬけの殻。フィルセはいなかった。窓が開いていたので、そこから飛び降りたのだろう。
「何ぃ!」
 予想外のことに俺は驚くしかなかった。
「また無茶を……」
「飛び出した奴より俺の方がベッドメイク汚ねぇじゃねーか! ああ恥ずかしい……」
 くっそ俺より綺麗にベッドメイキングしていきやがって……。
「いやそういう問題じゃなくてですね」
「気持ちだけ受け取っておきますよ」
 門番に言われて俺は我に返った。そうだ今はフィルセのことだ。
「しかしなんだってわざわざ……」
「あの子が無茶しない様に私が止めてたんですよ。依頼も受付が承認しないと受諾出来ないですからね」
 ギルドマスターのお婆さんに止められない様にこんな離脱を……。
「私、今日非番なので探しに行きますよ」
「すまないねぇ……」
「いえ、数少ないバスターを失うわけにはいかないですから」
 門番は休みだというのにわざわざ探しに行ってくれるという。
「俺は……この辺の魔物のレベル次第じゃ足手まといかな……」
 俺も行こうと思ったが、土地勘もないし下手すりゃスケルトン狩りが白骨だ。迂闊に動くと二次災害に繋がる。
「いえ、目は一つでも多い方がいいですから。一緒に行きましょう」
「はい」
 門番は俺の協力が必要な様で、共に捜索をすることにする。
「すまないねぇ……リュウガと言ったかね。わざわざ……」
「いえ、一宿一飯の恩義です」
 正直、このギルドのメンバーでもないしバスターさえやめようとしている俺がフィルセを探す義理はないかもしれない。だが、飯食わせてもらって寝床も借りられたのでその恩を返すだけだ。
「そういえば装備は……」
「あ」
 門番に言われて俺は丸腰であったことを思い出す。武器は錆びた斧が一つ。防具だってまともなものじゃない。
「そうだ、うちに使われていないものがあったな……」
 お婆さんが使われていないギルドの売店からいくつか防具を持ってくる。革の小手、軽い金属のラウンドシールド、魔物の毛皮を使った胸当てだ。
「ありがとうございます。わざわざ……」
「うちの子を探してもらうのです、当たり前ですよ。では、頼みましたよ」
 こうして、俺と門番はフィルセ捜索に出た。まだそんなに遠くに行っていないと思いたいが、門を突っ切ると称された脚力で単独だとどうなることか……。
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