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五十八話 ミア視点
しおりを挟む毒を手に入れた後、王城に戻って何度か自室とお姉ちゃんのいる部屋を行ったり来たりして、メイドがいなくなるのを待っていた。
「あぁ! もう! 全然いなくならないじゃない! あのクソメイド達!」
手を伸ばして、近くにあった大きな枕を壁に投げつける。
あぁ、イライラする。
いくらお姉ちゃんでも、この毒をすぐに解毒するような魔法は使えないだろうから、この毒を塗ったナイフで少しでも切り傷を付ければいいだけ。
だけど、お姉ちゃんの部屋の前にはずっとメイドが立っている。
私が行っても部屋に入れてもらえない。
だからといって、メイドを殺す訳にもいかない。静かに死んでくれるなら、殺してもいいけど声を出されたらお姉ちゃんに気づかれちゃうし。
お姉ちゃんに気づかれたら終わり。いくら強力な毒でも、当たらなかったら意味がない。
多分、気づかれてからじゃ近づけない。
だからメイドがいなくなった時にこっそり入って殺さないと。
せっかく毒まで手に入れて、もうすぐで殺せるのに!
早く、早く殺さないと!
あの皇太子が帰ってきたらお姉ちゃんを殺すのがもっと難しくなる。
だから、今のうちに早く殺さないといけないのに!
「———ッ」
自室でなんとか、苛立ちを抑えながらチャンスを待つ。
メイドに不自然に思われるからそう何度も確認しに行かない方がいい。
そう思ったから、少し時間を空けようと時間を潰している。
「……ァ様……が……」
廊下から何か声が聞こえてくる。
扉を開け、声の聞こえた方へ恐る恐る歩いていく。
そこには帝国から来た、ずっとお姉ちゃんの部屋の前に立っているメイドの姿があった。
「マリア様が倒れています! 至急医者を!」
お姉ちゃんが、倒れた?
え? どう言う事?
病気? それとも他の何か?
分からない。
予想外すぎる出来事に頭がついていかない。
でも、予想外でも何でもいい。
病気でも何でもいい。
大事なのはお姉ちゃんが倒れたってこと。
今なら、殺せる。
ナイフを持って、勢いよくお姉ちゃんの部屋に走る。
そして、扉を乱暴に開け部屋を見渡した。
すると、ベットの上にお姉ちゃんがいた。
寝ている?
ゆっくりと近づく。
「……ん、ミア……?」
ゆっくりとお姉ちゃんが目を開いた。
なんで!? 倒れてるんじゃなかったの!?
いや、でも大丈夫。
お姉ちゃんが魔法を発動する前に!
「み、ミア? そのナイフ、何?」
お姉ちゃんが動揺した声で聞いてくる。
魔法を使わない?
ってことは、本当に倒れてるんだ。
魔法を使わないってことは魔力枯渇かな?
まぁ、でも、そんな事どうでもいいか。
「バイバイ、お姉ちゃん」
あぁ、やっとお姉ちゃんを殺せる。
私はナイフをお姉ちゃんの胸に向かって、振り下ろした。
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