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十三話
しおりを挟む「どこまで進んだも何も任務で助けられただけと言っているでしょう、父さん。
彼女ではありませんよ」
「なんだ、そうなのか……」
そんなに残念そうな顔しなくても。
皇太子なんだからいつでも彼女くらい作れるでしょ。
「彼女じゃないことは残念だが、息子を助けてくれたことについては礼を言っておこう。
感謝するぞ。名前はなんと言う?」
「マリアです。となりの王国から来ました」
「そうか、マリアと言うのか。
俺の名前はリベル・フォン・マルドルク。一応この国の皇帝をやっている。
マリア。お前を客人として歓迎しよう」
「リベルさん。ありがとうございます」
「お、おぉ。皇帝をやっていて初対面でさん付けされたのはお前が初めてだぞ」
「そうなんですか?」
「そりゃそうだろう。
実力主義国家だから別に構わないが。まだ若いのに肝が座りすぎじゃないか?」
聖女だった時は貴族や国王とか偉い人と会うことはよくあったのであんまり皇帝でも緊張とかはしませんね。
それに、見た目と言葉遣いからあんまり偉い人感が感じられないんですよね。
「何というか、失礼ですがあんまり偉い人っぽくないので……」
私が言うと皇帝がツボったとばかりに笑い出した。
「あはははっ! 皇帝に面と向かってそんな事言ったのもお前が初めてだ。
でも、やっぱりそうだよな! 最近息子にもよく言葉遣いだの身なりだの注意されるんだよ!
もともと一般人なんだからそれくらい大目に見てくれって思うんだけどな」
「一般人?」
私の疑問にアティスが答えてくれた。
「ここマルドルク帝国では次期皇帝を決めるトーナメント形式の大会があるんです。剣を使ってもよし、魔法を使ってもよしの何でもありの大会で、見事に優勝したものには次期皇帝の座が贈られます。
そのトーナメント大会の前回優勝者が父さんと言うわけです。実力主義国家ならではの皇帝の決め方ですね」
確かにそれならこの貴族らしからない雰囲気もうなづける。
生まれた時から貴族として教育を受けた人間とある程度大きくなってから貴族になった人間では子供の頃の教育の違いからか貴族らしさが全然違うのだ。
王国にいた頃に大人になってから国王に功績を認められて貴族になった人に会ったことがあるが確かにこの皇帝と似ている部分がある。
「そういうことだ。
俺みたいな冒険者でも皇帝になれたんだから夢のある国だろう?」
笑いながら皇帝が言う。
「そうですね。でも、大変そうです」
私はシンプルに感想を述べた。
聖女をやっていたり、身近で王族を見ていたりするのであんまり楽しそうには思えない。
「まぁ、大変と言えば大変だな。一応一国のトップにーー」
「父さん、話はそのくらいにしてください。マリアも長旅で疲れているでしょうし」
「あぁ、そう言えばそうだったな」
「とりあえず風呂に案内するのでついて来て下さい」
そう言われたのでアティスにお風呂まで連れて行ってもらう。
どうやら私はやっと二週間ぶりのお風呂にありつけるらしい。
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