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十二話 イオン視点

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 「その話は本当なのか!?」

 「うん……私に聖女を取られた腹いせにやられたんだと思う……」

 泣いていたミアは少し落ち着いてからそう言った。

 「あのクソ女め。
 聖女の髪飾りを破壊するなど、国家反逆罪だぞ!」

 今すぐにでも捕らえて公開処刑にしてやりたいところだがその前に結界と加護をどうにかしなければならない。

 覚えていろよクソ女!
 必ず捕らえて、貴様がしたこと後悔させてやる!

 「頑張ったんだけど、結界を張ることもできなくて……私聖女なのに……」

 ミアは相当責任を感じているようだった。
 
 聖女の髪飾りがない時点で結界を張り、加護を付与することは不可能だ。古代文明の技術で作られた髪飾りが流した魔力を何千倍にも増殖させていたから出来ていたこと。それを髪飾り無しで出来るわけがない。

 「髪飾りがない時点で結界を張ることも加護を付与することも不可能だし、どう考えても悪いのは全てマリアというクソ女だ。
 ミアが責任を感じる必要はないよ」

 「で、でも……私の所為でなんの罪もない人が……ッ!」

 また泣き出しそうになりながらミアが言う。

 確かにここ数日、他の街では魔物が侵入した際に民間人が犠牲になったと報告が入っている。
 だが仕方のない事だ。結界も加護も無いとなればどうしようもない。

 マリア、お前は最後の最後まで気に入らない奴だな。
 
 こんなに心優しいミアを傷つけておいて……ただでは済まさんぞ。


 だが、それより先に国の安全を確保しなければならない。

 全騎士団員を王都及び街、街周辺の警備をさせよう。冒険者にも王家から依頼を出すしかないだろう。金が減るのは苦しいが致し方ない。

 他国に援軍を頼むのは……無しだな。
 父さんが倒れて国の最高指揮権を持った人間が私に変わって、すぐに自国では対応できない事態に陥ったとなれば舐められてしまう。

 まぁ、聖女の髪飾りを使っていたといってもマリアがしっかりと結界を張っていたとは限らん。
 どうせ微力な結界しか張っていなかったんだろう。マリアが聖女としてしっかりと仕事をしていたとは到底思えない。
 聖女がミアに変わり、ミアの方が聖女として適任だと民衆に理解されるのを嫉妬でもして髪飾りを破壊したんだろうな。

 マリアが張っていた結界が消えようと、加護がなくなろうとそう問題はない。
 結界が無くなり少し魔物が街に入ってくるようになったが今のところ大きな問題ではない。
 加護が無くなり人々が街の外でよく魔物に出くわすようになったがこれも騎士団に任せれば問題ない。

 ははっ、やはりあんな女、婚約破棄して正解だったな。
 ミアの足元にも及ばないクソ女が。

 「ミア。ちゃんと話してくれてありがとう。あとは全て私がどうにかする。
 ミアは何も気にしなくていいんだよ」

 私はミアの気持ちが少しでも和らげばと思い言葉をかけ、そのままデートを続行した。

 対策に乗り出すのはデートが終わってからでも遅くないだろう。少しくらい問題ない。
 マリアが張っていた結界がなくなろうと被害などほんの僅かだろう。

 

 
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