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十三話
しおりを挟む「私のお母さん、ですか」
「あぁ、七年前にこの世を去った……」
私は自分が陛下の娘と分かった瞬間からリリア、お母さんのことについては分かっていた。
この国の王妃が七年前に死去していることは国民に発表されているからだ。
「どんな人だったんですか?」
「とにかく優しくて、よく笑っていた。そして、いつもお前のことを心配していた」
「私のことを?」
「リリアは例え王家に不利益になる可能性があったとしても、どんな異能を持っていようと自分の子を棄てるなんて出来るわけがないと言って、最後まで私の考えに賛同することはなかった。
私が勝手にお前を孤児院に棄てた後も毎日のようにお前のことを気にかけていた。
だが、あまり身体が良くなかったリリアは七年前の冬体調を崩して急死した。最後までお前の心配をしていた。だが結局、私の所為で最後の最後まで会えなかったんだ。だから、報告くらいはしに来ないと、と思ったわけだ」
私のことをいつも気にかけてくれていたんだ。私の記憶には顔も雰囲気も何も残ってないけどきっとすごく私を大切に思ってくれていたんだろうなぁ。
陛下はお墓の前で静かに手を合わせる。
そして十数秒後立ち上がる。
「リリアが反対していたのにもかかわらずお前を棄てたのは私だ。どうかリリアを恨まないでやってほしい」
陛下が頭を下げる。
「いえいえ、そんな……ただ、一度くらいは話してみたかったです」
「すまない……」
ここで何を言っても、もう会えないもので仕方ないのだけど一度くらいはお母さんに会ってみたかった。
陛下を恨むわけじゃないけど本当に残念に思う。
私もお墓の前で手を合わせる。
お母さん。
私のことをいつも心配してくれてありがとうございます。
でも、今の私は少なくとも孤児院にいた頃やメイドとして働いていた頃よりずっと幸せです。かなわないとおもっていた夢が、家族ができるという夢が叶ったんですから。
だからどうか心配しないで下さい。私は今、とても幸せです。
遠い未来、もし会うことがあったらたくさん甘えさせて下さいね?
私は顔を上げる。
お母さんが亡くなっていることは分かっていたことだ。
考えても会えることはない。
なら、今いる家族との時間を大切にしようと思う。その方がきっと楽しいし、お母さんも心配しないでよくなると思うから。
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