上 下
12 / 13

十二話

しおりを挟む

 四人で夕食を食べた後、私はお風呂に入ってから自分の部屋に戻った。

 「うーん、疲れた……」

 私はベットに倒れこむ。
 メイド時代の時に使っていたベットとは違いこの高級ベットは私を優しく包み込んでくれる。
 ふかふかだぁ。

 今日のハンバーグ作りは正直すごく疲れた。
 最後にユキの作ってくれたハンバーグを食べたのは三年ほど前だった思う。
 作るのを横から見ていたことはあったけど作るのを手伝ったことは無かったから思い出すのに苦労した。
 料理人さんの手を借りずにアベルトさんと私で作ったハンバーグだけど割と上手くできたと思う。昔ユキが作ってくれたのとどちらが美味しかったかと言われれば即答でユキの作ってくれたハンバーグと答える。だけど、初めて作ったにしては及第点だと思う。
 今度会ったらコツを聞かないと。

 今日のハンバーグ作りを振り返ってから部屋の電気を消した。
 疲れたのでもう寝ることにする。

 「ん? 明かり?」

 部屋のカーテンを閉めていなかったので窓の外の明かりが見えた。
 ここ一帯は王家の敷地なので他の家の明かりということはまずないし、街灯もなかったはず。
 一体なんだろう。

 私は起き上がって窓から外を見る。

 「陛下?」

 窓の外を見るとランプを持った陛下が歩いていた。

 こんな夜遅くにどうしたんだろう?

 気になってしまった私は陛下を追いかけることにした。

 すぐに部屋を出て靴を履き外に出る。

 「えーと、この辺だったはずなんだけど……」

 ちょうどさっきまで居た部屋の下のあたりに来て陛下を探す。

 うーん、いない。
 一体どこ行ったんだろう?

 それから陛下が歩いて行ったと思われる方向に歩きながら探していると奥の方で明かりが見えたような気がした。

 その方向に走っていくと徐々に明かりが見えてくる。

 そして、とうとう陛下の姿が見えた。

 「こんなところでどうしたんですか?」

 私が声をかけるとランプをこちらに向けてくる。

 「セラか。お前こそどうしてここに?」

 「私は陛下がランプを持ってこんな夜遅くに歩いていく姿が見えたので気になって」

 「そうか。報告をしなければと思ったのでな」

 「報告?」

 私が疑問を口にすると陛下がランプを別の報告に向けた。

 ランプに照らされてぼんやりと見えて来たのは一つのお墓だった。

 その墓石には一つの名前が彫られている。

 「リリア・アミーツ……」

 アミーツとはこの国の名前だ。
 アミーツ王国。王国の名前がつく人間なんてほとんどが偉い人のはずだ。

 それにリリアという名前は聞いたことがある。

 「私の妻……お前の母親だ」

 陛下は静かに言った。
 

 
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です

青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。 目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。 私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。 ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。 あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。 (お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)  途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。 ※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

醜いと蔑んだ相手は隣国の美姫

音爽(ネソウ)
恋愛
爛れた皮膚の治癒を試みる王女は身分を隠して隣国へ渡り遊学していた。 そんな事情を知らない子爵家の子息は「醜い」と言って蔑む。しかし、心優しいその弟は……

こんなに馬鹿な王子って本当に居るんですね。 ~馬鹿な王子は、聖女の私と婚約破棄するようです~

狼狼3
恋愛
次期王様として、ちやほやされながら育ってきた婚約者であるロラン王子。そんなロラン王子は、聖女であり婚約者である私を「顔がタイプじゃないから」と言って、私との婚約を破棄する。 もう、こんな婚約者知らない。 私は、今まで一応は婚約者だった馬鹿王子を陰から支えていたが、支えるのを辞めた。

「卒業パーティーで王子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」

まほりろ
恋愛
※第16回恋愛小説大賞エントリーしてます! 応援よろしくお願いします! アホ王子とビッチ男爵令嬢にはめられ、真実の愛で結ばれた二人を虐げた罪を着せられたアデリナは、卒業パーティで第一王子から婚約破棄されてしまう。 実家に帰ったアデリナは、父親と継母から縁を切られ、無一文で家を出ることに……。 アデリナについてきてくれたのは、親友の人語を話すトカゲのみ。 実はそのトカゲ、国と国民に加護の力を与えていた水の竜だった。 アデリナを虐げた国民は、水の竜の加護を失い……。 逆にアデリナは幸福いっぱいの二人?旅を満喫していた。 ※他サイトにも掲載してます。(タイトルは少し違います) ※途中から推敲してないです。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」

処理中です...