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十一話
しおりを挟む「ただいま。今日の夕食はセラが作ったとメイドから聞いたが」
「そうだよ、父さん。なんでも孤児院の時に食べていた美味しい肉料理らしいよ」
「そうなのか?」
「はい。街ではあんまり見かけないんですけど美味しいと思いますよ」
それから少しした後グランさんが仕事から帰って来たので席に座って夕食をいただく。
陛下とグランさんが上に置いてある銀の蓋、クローシュをとる。
「これがセラの作った料理か。初めて見る形だな」
「美味そうじゃないか。こんな肉料理初めてだよ」
グランさんはそう言って席を立って私の方にくる。
そして、私に近づき手を頭の上に置こうとしてくる。
「すごいぞセラ」
私はグランさんの手をサッと避けた。
「子供じゃないのでそういうのは……」
「な……そうか。妹の扱いについて騎士団の団員に聞いてみたのだが、違うのか」
グランさんは悲しそうな顔をして席に戻っていく。
いったい誰にそんな話を聞いたのか。
流石に14歳にもなって頭を撫でられるのは……それにまだ昨日まで他人だったのにちょっと苦しいです。
「では、頂こう」
そう言って陛下が丸い肉料理、ハンバーグを口に運ぶ。
今回作ったのはハンバーグの上に大根おろしソースを乗せたものだ。
「な、何だこれは、今まで食べたことがない味だ……私の人生の中で一番美味いかもしれない!」
「確かにこれは美味しいな!」
陛下とグランさんのお口にはあっているらしい。
良かったぁ。
「これはいったい?」
「これはハンバーグという食べ物です」
「「はんばーぐ?」」
私の隣にいるアベルトさんもハンバーグを口に運ぶ。
「これは……美味しいですね。お店を出せるレベルだ思います」
一緒に作っていたから見た目には驚かれなかったけど、味には驚いてもらえたようだ。
「これはセラが考えたものなのか?」
私は陛下の質問に答える。
「いえ、昔孤児院にいた時、私の親友のユキって言う子が考えた料理なんです。
他にも作ってくれた訳ではないんですけど、らーめんという食べ物やすきやきなんて食べ物も教えてくれました。料理人でも目指していたんでしょうか?」
「こんなに美味しいものを考えるとは、確かに料理人の素質がありそうだな。
それに他の料理も食べてみたい。
ぜひ王家の料理人として向かい入れたいくらいだ」
「こんなに美味しいものが食べられるならそれもいいかもしれませんね。父上」
「ユキは私と同じ時期に孤児院から出て行ったので今は何処にいるかは……」
「そうなのか……」
とても残念な顔をする陛下。
どうやら私の作ったハンバーグは相当美味しかったらしい。
「こんなに美味しい料理を考える人なら何処かで料理人でもやっているかもしれないですし、そのうち話が聞こえてくるかもしれないですね。
その時には王家の料理人を検討してもらいましょう」
「それもそうだな」
「確かにそうだな」
ハンバーグ以外の料理も食べたすぎて、どうやらユキを見つけたら王家の料理人を検討してもらう方針で決まったらしい。
孤児院を出てから一回も会ってないけどあれからどうしてるのかな?
私は唯一無二の親友の顔を思い浮かべる。
私の異能を知っていたのにもかかわらず誰にも話さず、ずっと親友でいてくれたユキ。
もう二年も前になるのか。
もう一度会えないかなぁ……
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