6 / 13
六話
しおりを挟む「……ん、朝」
私が朝起きると既に部屋の片隅に着替えが準備してあった。
ちょうど着替え終わった頃に扉が開きメイドさんが入ってくる。
「服のサイズは問題ありませんか? 目測ですので問題があれば交換いたします」
「全然ぴったりだから大丈夫」
ぴったりすぎて怖いくらいだ。
これ目測でできるもんなの!?
「朝食が準備されていますので、部屋までご案内します」
メイドさんの後を追っていくと一つの部屋に案内される。
扉を開ける。
長いテーブルが置いてある部屋だ。多分食事用の部屋なんだろう。
私が部屋に入った時には既に陛下達三人が揃っていた。
「おはよう、昨日はよく寝れたか、セラ?」
「おはようございます、陛下。とてもよく眠れましたよ」
ん? どうしてそんなに悲しそうな顔をするんですか、陛下?
私が挨拶をするとものすごく悲しそうな顔になる。私何かしました?
「セラさん隣へどうぞ」
アベルトさんに言われて隣の席に座る。
「アベルトさん、呼び捨てにしてもらって構いませんよ?」
「そうですか? まだ昨日の今日なので馴れ馴れしいのはどうかと思っていたもので。セラがそう言うのならそうさせてもらいます。
それと、僕も呼び捨てで構いませんよ」
王族の人にさん付けされるなんて、なんか変な感じだし。まぁ、私も王族だったわけだけど。
ていうか、王族を呼び捨てにできるわけないじゃん! 流石にハードル高いよ!
私が座った席の前には豪華な料理が並んでいた。
柔らかそうなクロワッサン、スープ、オムレツ、生ハム、蒸かし芋、サラダ、チーズ……こんなに食べられます?
「どれでも好きなのを食べてくれ、セラ」
「ありがとうございます、陛下」
ん? なんでまた悲しそうな顔をするんですか?
そんなことはさて置き、やっぱりこんなに多くの料理を食べられるわけないですよね……って思ってたら食べてる人いました。
「グランさんって、よく食べる方なんですね」
「そうか? 普通だと思うだが……?」
「普通なわけないでしょう、兄さん。明らかに食べすぎです。よく朝からそんなに食べられますね」
そうですよね。やっぱり普通じゃないですよね。
「お前が食べなさすぎなだけだ。
あぁ、それとセラ。俺のことも呼び捨てにしてもらって構わんぞ。なんならグランお兄ちゃんって呼んでくれてもいいぞ?」
え? なんか分からないけど絶対に嫌です。
「遠慮しておきます」
「そ、そうか……」
「私は仕事があるのでそろそろ失礼する。セラ、もし何か好きなものでもあればメイドに伝えておいてくれ。今日の夕飯に作られよう」
「何から何までありがとうございます、陛下」
本当になんでそんなに悲しい顔をするんですか?
「アベルトさん、陛下はなんであんなに悲しそうなんですか?」
私は小声で隣にいるアベルトさんに聞いてみる。
「ははっ、父さんはセラに昨日、お父さんと呼ばれたのが相当嬉しかったみたいでね。
そんなに堅くならずに、話してあげたら喜ぶと思うよ」
「お仕事頑張ってね、お父……」
昨日は勢いで言ってしまいましたが、やっぱりちょっと恥ずかしいです。
「これは少し練習が必要ですね」
50
お気に入りに追加
3,258
あなたにおすすめの小説

完璧令嬢が仮面を外す時
編端みどり
恋愛
※本編完結、番外編を更新中です。
冷たいけど完璧。それが王太子の婚約者であるマーガレットの評価。
ある日、婚約者の王太子に好きな人ができたから婚約を解消して欲しいと頼まれたマーガレットは、神妙に頷きながら内心ガッツポーズをしていた。
王太子は優しすぎて、マーガレットの好みではなかったからだ。
婚約を解消するには長い道のりが必要だが、自分を愛してくれない男と結婚するより良い。そう思っていたマーガレットに、身内枠だと思っていた男がストレートに告白してきた。
実はマーガレットは、恋愛小説が大好きだった。憧れていたが自分には無関係だと思っていた甘いシチュエーションにキャパオーバーするマーガレットと、意地悪そうな笑みを浮かべながら微笑む男。
彼はマーガレットの知らない所で、様々な策を練っていた。
マーガレットは彼の仕掛けた策を解明できるのか?
全24話 ※話数の番号ずれてました。教えて頂きありがとうございます!
※アルファポリス様と、カクヨム様に投稿しています。

好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
【現在工事中です。工事終了までお持ち頂ければ幸いです】
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※開始時期は未定ですがマルチエンディングを展開予定です。
ゲオルグ、エイド、ハンスの予定です。

初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。

知らない人に「お前とは婚約破棄をする」と言われました。私の婚約者は貴方じゃありません。
あお
恋愛
エリスが学園のカフェテラスで人を待っていたら、見知らぬ男女がやってきて。
「お前と婚約破棄して、ユリアと結婚する。もう決めた事だ。ヴェラー伯爵には話をつけてある。ユリアを妻として、俺が婿養子に入るって事をな」
と婚約破棄を宣言した。
誰かとお間違えでないですか?
いや、でも女の方、面影があるわ。
お母様が亡くなった後、喪が明ける前に元父が連れ込んだ愛人の子。
ヴェラー家とは縁を切ったはずなのに、これはなんの嫌がらせかしら。
私は、アウリーデ公爵令嬢。
あなた達、こんな公衆の面前で、公爵令嬢を侮辱して、ただで済むとは思わないことね。
遅れてやって来たエリスの婚約者ルイス。
エリスを完璧にエスコートしながら、エリスに喧嘩を売った二人に格の違いを見せつけつつ誤解を解いていく。
元実家のトラブルに巻き込まれたエリスと、彼女の婚約者ルイス。愚かなお猿さんたちの話。
全7話完結。予約投稿済です。

自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない
蒼葉
恋愛
公爵家令嬢であるリリアローズは侯爵家長男のウィリアムと婚約を結んでいる。
父親同士が親友で、母親同士も気が合った為、両家に子供が出来たら婚約させる約束をしていた。
幼馴染であるウィリアムの優しさに惹かれていたリリアローズ。
このまま結婚まで順調なら進むと思われていたが、最近妙に公爵家に来ているはずのウィリアムと会わない。
不思議に思ったリリアローズはある日、姉の部屋にウィリアムが入っていくのを目撃してしまい・・・。
**********
たま〜に、自分で何を書いているか分からなくなり、よく分からない文章を書いている場合があります。
生暖かい目で見てやってください(泣)

虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m

上辺だけの王太子妃はもうたくさん!
ネコ
恋愛
侯爵令嬢ヴァネッサは、王太子から「外聞のためだけに隣にいろ」と言われ続け、婚約者でありながらただの体面担当にされる。周囲は別の令嬢との密会を知りつつ口を噤むばかり。そんな扱いに愛想を尽かしたヴァネッサは「それなら私も好きにさせていただきます」と王宮を去る。意外にも国王は彼女の価値を知っていて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる