パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由

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二話

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 「へ、陛下、一体何を? こんな平民が陛下の娘なわけ」
 
 「そこにいる娘、セラは正真正銘、私の娘だ」

 怒りが溢れんばかりの声でそう言った。

 「い、一体何を言っているんですか……? 陛下ご冗談もほどほどに」

 ヴィルは混乱していた。

 そしてそれは私の方もだ。

 私が陛下の娘? どういう事? もしかして私のことを助けようとしてくれているの?
 私が陛下の娘なんて信じられなかったから、きっと私を助けようとしてくれているんだと思った。

 「冗談などではない。私は、セラが生まれた時にセラを孤児院に棄てたんだ……」

 私を、捨てた?
 陛下の真剣な言葉を聞くとどうもその話が嘘には思えない。
 もし、もしそれが本当の事ならなんで私は捨てられたの? 

 「陛下、それは本当ですか?」

 「あぁ、全て本当の事だ。私はお前が生まれた時、ある事情があってお前を棄てた。
 事情があったからと言って許されるわけのない事をしてしまった。
 謝って済む問題ではないことはわかっている。だが、どうか謝らせてくれ。
 本当にすまなかった」

 陛下は私に深々と頭を下げた。
 一国の王が平民相手に頭を下げるなんてありえない。
 本当に私は……。

 「それなら棄てたままでもよかったんじゃないですか? 何故今になって?」

 「私もこのまま何事もなければ何もしないつもりだった。
 お前のことは部下によく調査をさせていたから良く知っている。そこのヴィル伯爵と婚約を交わしたことも知っていた。
 そのまま安定した幸せな人生を過ごせるならそれでよかった。
 だが、わざわざ婚約破棄をパーティー会場で突きつけ、それが平民だからなどというくだらん理由であったら口を出さないわけにはいかないだろう」

 「陛下、まさか本当に……?」

 ヴィルが陛下の真剣な雰囲気を見て本当に私が陛下の娘であると理解したらしい。
 
 「そもそも、自分から婚約を申し込んでおいて理不尽に破棄するなど我が娘でなくとも許される行為ではない。
 お前のような人間が貴族だとはな。少し考える必要がありそうだ」

 「そ、そんな陛下!  どうかお考え直しください!
 そもそもこんな小汚い娘が陛下の娘であるはずありません! きっと何かの間違いですよ!」

 ヴィルは陛下にすがりついた。

 陛下の怒りをかってしまったヴィルにはきっとなんらかの処分が下るんだろう。

 「セラ、少し別の部屋で話そうか」

 「は、はい」

 陛下は部下にすがりつくヴィルを取り押さえさせ歩き出した。
 何か話があるらしい陛下の後ろをついて行ってパーティー会場を出て応接室のような部屋に向かう。

 「私の息子たちも呼ぶように指示を出しておいたから直に来るだろう。
 息子たちも揃ったら話すことにしよう。
 私がお前を捨てた理由についてだ。これは話しておかなければならないことだろう」

 私が捨てられた理由。正直気になって気になって仕方ないので聞く以外の選択肢はない。
 だけど捨てられるほどの理由を聞くのは少し怖い。何故なら、その理由が私にある可能性があったから。

 私はなにを言われても大丈夫なように覚悟して話を聞くことにした。
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