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・・・っ・・・・・・。
 
目が覚めて、少しずつ視界が定まってきた時目の前には木の床と黒い鉄の柵が見えた。

・・・・・!?

ゆっくりと起き上がった私の前には鍵が閉められた扉があった。

ここは間違いなく屋敷の牢屋の中、戻ってこれたんだ!!

『・・・お主、そこで何をしておる!』

ふいに呼ばれたその声には聞き覚えがあった。

『秋道さん・・・。』

『むむっ、何故私の名を知っておるのだ?不審者が出たぞ!であえであえ~!!!』

秋道さんの大声と共にダダダダと足音が増えていきお侍さん2号、3号という風に大勢のお侍さんがあっという間に集まってくる。この光景、一度見た事がある。

『今一度聞く。お主、一体何者だ!』

険しい顔をして聞いてくる秋道さんをよそに怖い気持ちなど一つもなく私の心臓はとてもドキドキしていた。

だってこの先には・・・。

『騒がしいな。何があったのだ!』

後ろの方かキラキラな着物を着た時継様が颯爽と現れた。

『時継様!今しがた小さな物音が聞こえたのでこちらに来てみると見知らぬ女が牢屋の中に入っておりました!』

『ほぅ・・・。』

時継様と目が合った瞬間瞳からはとめどなく涙が溢れた。

『時継様・・・。』

出会っていきなり号泣する私の姿を見て周りは引いているようだった。

『・・・どうして泣いておる?怖いのか?大丈夫だ、何もせん。安心してくれ。』

『は、はい・・・。』

相変わらず時継様は優しかった。興奮と混乱入り混じる中、私はなんとか落ち着きを取り戻し涙を止めた。

『そなた・・・なぜ私の名前を知っておるのだ?・・・まあいいだろう・・・おい、鍵をよこせ。』

『し、しかし時継様!』

『いいからよこせ。私の命令が聞けないのか?』

秋道さんは渋々時継様に鍵を渡し、扉が開けられた。そして時継様はゆっくりと私に近づいてきて腰を下ろした。

『そなたは・・・ここで何をしておる??』

そう聞かれてどう答えようか迷った瞬間足首に鈍い痛みが襲った。

『・・・っ、痛っ。』

何ヶ月ぶりかのぶよぶよの足首を見てこれも繰り返しなのかとため息がつく思いだった。

『怪我をしているではないか!おい!すぐに医者を呼べ!』

そう言うと時継様はさらっと私をお姫様抱っこして牢屋から出してくれスタスタ歩き出す。

『時継様、すみません、千代、千代はどこにいるんでしょうか?』

千代とは牢屋を出る時に初めてすれ違うはずなのにそこには千代の姿はなかった。

『・・・千代?』

『はい、千代です!』

『千代・・・とは一体誰の事だ?』

『え・・・あの・・・えっと・・・時継様の許嫁の千代です・・・もうすぐ祝言あげるんですよね?』

『・・・?私は独身だが千代という許嫁はいない・・・祝言を挙げる予定も今は特にないが・・・?』

千代が・・・いない?またやり直す・・・みたいな感じの事を言っていたのに・・・?

『そう・・・ですか。』

そこは同じ世界は同じ世界でも千代がいない世界になっていた。千代は千代自身が望んだ世界に行ってしまったという事なんだろうか・・・それとも。

私を軽々と運ぶ時継様の温もりに触れながらひとときの安心を得ていた。

大丈夫。私の知っている時継様なら必ず会うのが二度目だという今回の話だって信じてくれる。まず、どこから話始めよう?ちゃんと上手く話せるだろうか?

千代がいないという事は迫りくる祝言もない。いろいろ焦る事はないんだ。また一から時継様に好きになってもらえるように頑張ろう。そしてもう二度と落とし穴に落ちる事がないようにしなければ・・・。

そしてそこから時は流れ、あれから五年の月日が経とうとしていた。

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