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78 【千代視点】
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暗くなってきて空にはくっきりと綺麗な満月が見えてきた。その周りにも美しい星達が輝いており今日の宴を彩ってくれているようだ。
父上や母上が祝い酒に酔い楽しそうにしているのを見ながらとても幸せな気持ちになった。千代も時継様と父上や母上のようになれる時が来るのだろうか・・・そう考えてふと時継様の方を向くといつの間にか時継様がいなくなっていた。
『時継様はどうした?』
『御手洗いに行かれました。私も着いていきますとお伝えしたのですが今夜は無礼講だから気を使うな、一人で行くとおっしゃいまして・・・。』
『そうか・・・ではわらわも御手洗いに行ってこよう。付き添いはいらん、夫婦2人で話したい事もあるしな。』
一人で御手洗いに向かう廊下の途中に何気なく庭を見た。すると一瞬誰かの後ろ姿が見えた気がした。
・・・あれは・・・・・秋道??
そんな・・・まさかな。秋道がここにいるはずないのだし、私も少し祝い酒を飲み酔っているのかもしれない。きっと、見間違いだろう。そう思い目を擦った。
・・・・・。
でも、もし、見間違いじゃなかったら?
夜風が静かに頬を掠めた後、不思議とすごく嫌な予感がした。
御手洗いに着きどうしたものかと右往左往した。女が男の御手洗いに入るなどなんてはしたないことか・・・しかし、ここは背に腹はかえられない。
夫婦になったのだからと勇気を出して人生で初めて男の御手洗いに足を踏み入れた。
・・・・・誰もいないのか。
はて・・・では、時継様は何処に?
頭の中に先程の人影がよぎった。秋道・・・もし屋敷に秋道がいるとなればあの女も来ているんではないだろうか?だとしたら・・・!!
女の勘というべきか頭にピンときた場所があった。沢山の人が来ている屋敷の中で人目につかない場所はなかなかない。だが今は使われてない部屋があった。そう、元はあの女が使っていた部屋だ。
足早にその部屋に向かい襖に手をかけた時、丁度中から時継様の声が聞こえてきた。
『宴はすぐに止めさせよう。千代との祝言はなかった事にする。とにかくみんなに頭を下げてくる。千代には本当に酷な事で申し訳ないし謝るだけではどうにもならないかもしれない。屋敷のみんなについては信頼を裏切る結果になり・・・霧島家の繁栄が途絶えてしまう事も考えられる。だがゆきがここにいる今、千代と夫婦になっても私は千代を幸せにはしてやれない・・・それに私も・・・幸せにはなれないだろう。これについてはこれからどんな罰でも受けよう。全てを失い無一文になるかもしれない・・・それでもゆき、私の隣にいてくれるか?』
急に思いもよらない時継様の言葉を聞き、頭が真っ白になった。途端にドクドクと心臓の鼓動が身体中に鳴り響いた。
時継様・・・一体、何をおっしゃっているのですか?
『時継様・・・。』
中から聞こえてきたのはやはり一番聞きたくないあの声だった。わらわは混乱した。離れにいるはずのあの女が何故今ここにいるんだろうか?
『ゆき、愛している・・・。』
そしてその言葉を聞いてハッと我にかえった。
震える手をもう一方の手で支え、力を込めて襖を開けた。
父上や母上が祝い酒に酔い楽しそうにしているのを見ながらとても幸せな気持ちになった。千代も時継様と父上や母上のようになれる時が来るのだろうか・・・そう考えてふと時継様の方を向くといつの間にか時継様がいなくなっていた。
『時継様はどうした?』
『御手洗いに行かれました。私も着いていきますとお伝えしたのですが今夜は無礼講だから気を使うな、一人で行くとおっしゃいまして・・・。』
『そうか・・・ではわらわも御手洗いに行ってこよう。付き添いはいらん、夫婦2人で話したい事もあるしな。』
一人で御手洗いに向かう廊下の途中に何気なく庭を見た。すると一瞬誰かの後ろ姿が見えた気がした。
・・・あれは・・・・・秋道??
そんな・・・まさかな。秋道がここにいるはずないのだし、私も少し祝い酒を飲み酔っているのかもしれない。きっと、見間違いだろう。そう思い目を擦った。
・・・・・。
でも、もし、見間違いじゃなかったら?
夜風が静かに頬を掠めた後、不思議とすごく嫌な予感がした。
御手洗いに着きどうしたものかと右往左往した。女が男の御手洗いに入るなどなんてはしたないことか・・・しかし、ここは背に腹はかえられない。
夫婦になったのだからと勇気を出して人生で初めて男の御手洗いに足を踏み入れた。
・・・・・誰もいないのか。
はて・・・では、時継様は何処に?
頭の中に先程の人影がよぎった。秋道・・・もし屋敷に秋道がいるとなればあの女も来ているんではないだろうか?だとしたら・・・!!
女の勘というべきか頭にピンときた場所があった。沢山の人が来ている屋敷の中で人目につかない場所はなかなかない。だが今は使われてない部屋があった。そう、元はあの女が使っていた部屋だ。
足早にその部屋に向かい襖に手をかけた時、丁度中から時継様の声が聞こえてきた。
『宴はすぐに止めさせよう。千代との祝言はなかった事にする。とにかくみんなに頭を下げてくる。千代には本当に酷な事で申し訳ないし謝るだけではどうにもならないかもしれない。屋敷のみんなについては信頼を裏切る結果になり・・・霧島家の繁栄が途絶えてしまう事も考えられる。だがゆきがここにいる今、千代と夫婦になっても私は千代を幸せにはしてやれない・・・それに私も・・・幸せにはなれないだろう。これについてはこれからどんな罰でも受けよう。全てを失い無一文になるかもしれない・・・それでもゆき、私の隣にいてくれるか?』
急に思いもよらない時継様の言葉を聞き、頭が真っ白になった。途端にドクドクと心臓の鼓動が身体中に鳴り響いた。
時継様・・・一体、何をおっしゃっているのですか?
『時継様・・・。』
中から聞こえてきたのはやはり一番聞きたくないあの声だった。わらわは混乱した。離れにいるはずのあの女が何故今ここにいるんだろうか?
『ゆき、愛している・・・。』
そしてその言葉を聞いてハッと我にかえった。
震える手をもう一方の手で支え、力を込めて襖を開けた。
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