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73 【秋道視点】

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泥だらけになりながら過酷な道のりを必死に着いてくるゆきの姿を見て、私が入る隙間はやはり無いのだと思い知らされる事になった。

でも、それでいい。どうせ諦めるならこれぐらい時継様に対するゆきの強い想いを見れたのだ・・・私も前を向いてこれからの人生を歩まねばなるまい。

ゆきがまだこの世界にいると知った時継様がどのような結果を選ばれるのかは正直私にも想像出来ない。ゆきと時継様を会わせるという事は千代様を裏切るという事にもなる。その事に対しては申し訳ないとは思うが・・・近々で知ったのだがゆきに怪我を負わせたのは元を辿れば千代様が関与していたのだ。自業自得とも言えなくもないなとは正直感じていた。

裏口から屋敷に入り、懇意のある手伝いにこそっと話しかけた。

『秋道様!ああ、よかった、無事だったのですね!急にいなくなったので心配しておりましたよ!』

『しっ!すまんが静かにしてくれ。私は無事だ、心配には及ばない。悪いがそなたに手伝って欲しい事があるのだ。』

『はい、なんでしょうか?秋道様の指示とあらばなんでもいたす覚悟でおります!』

『今は宴の最中だろう。悪いが時継様が御手洗いに立たれたらすぐに私に教えて欲しい。二人きりで少し話がしたい。それと・・・実はゆきも来ている。なんとか秘密裏にゆきを自分の部屋まで入れてくれないか?』

物陰に隠れていたゆきも姿を現した。

『まあ、ゆき様・・・。』

大声を出しそうになった手伝いは慌てて自分の口を自分で押さえた。

『かしこまりました、私にお任せください!ゆき様は今目立たない着替えをご用意しますので少しお待ちください。屋敷は広いですし、今は宴の最中で多くの者が庭に出払っています。私が誰にも会わない道筋でお部屋へとご案内します。秋道様は時継様が立たれるまでこちらの物置に一旦お隠れください!』

『かたじけない・・・頼りにしてるぞ。』

『何をおっしゃいます!本当に二人共無事で良かったです!』

そう言って手伝いは急いでゆきの着替えを取りにいった。

『秋道さん・・・。』

『大丈夫だ、彼女は信頼出来る。三人で出かける時も助けてくれただろう?』

辺りが少しずつ暗くなり、もうすぐ夜が来るだろう。なんとか当日には間に合ったが・・・。

『お待たせしました!ささ、ゆき様こちらでございます。ゆき様をお部屋に案内して参ります。秋道様は隠れていてくださいね!』

なんだかとても嬉しそうで楽しそうな手伝いにゆきは連れられて行った。とりあえず、まだ誰にもバレてはいない。これで無事に二人が会えるといいのだが・・・。
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