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70 【千代視点】
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やっと、やっと夢にまで見たこの時が来たのだな・・・。
婚礼用の着物に着替え紅を塗り、髪を整える。手鏡に映った自分は我ながら綺麗だった。これなら、時継様の隣にふさわしいだろう。
『千代、入っていいかしら?』
部屋の外で母上の声が聞こえた。
『はい、どうぞ・・・父上、母上。』
襖を開けて父上と母上と対面した。
『まあ・・・千代、とても綺麗だわ。ねぇあなた?』
『ああ、そうだな・・・こんなに立派に育って・・・。』
『父上、まだ泣くのは早いですよ。本番はこれからです。みんな無事に到着しなによりですわ。』
『それもそうだよな・・・いよいよか、なんだか寂しい気もするが・・・千代、幸せになるのだぞ。』
父上が優しく両手で私の手を包んだ。
『はい。父上、母上、今まで大切に育てていただき本当にありがとうございました。霧島家に嫁ぎ時継様の妻として恥ずかしくないようこれからも一生懸命精進致します。』
庭先を見渡すと神々しい程の眩しい光が降り注いでいた。雲一つない快晴はまさに今日という日にふさわしい。神様までもが私達を祝福している、そう思わずにはいられなかった。
父上、母上と別れてからわらわは時継様の元へと急いだ。
『時継様、千代です。失礼致します。』
この姿を見て欲しいというのもあったがそれと同時に正装をまとう時継様を見たかったのだ。
『ああ、千代か・・・綺麗だな。』
太陽の光に照らされた時継様はそれはもう美しかった。このお方の妻になれるなんて・・・わらわは幸せ者だなと思った。
時継様はあれから一切ゆきや秋道の事について触れて来なかった。毎日心ここに在らずという感じに見えた。しかし今日重要なのは大勢の目の前で時継様と千代が夫婦になったという事実を作る事。事実さえ作ってしまえば流石にもう時継様も後戻り出来ないだろう。気持ちなどは後からでよい、まずは今日一日を無事に終わらせるのだ。
『そんな・・・光栄すぎるお言葉・・・ありがとうございます。時継様、今日の祝言が無事に終わるよう精進致します。ではまた後で。』
深々とお辞儀をしてそそくさと部屋を出た。時継様は最後何か言いたそうではあったが知らないふりをした。嫌な予感がしたのだ・・・わらわが傷つく言葉の気配。長居は無用・・・今の時継様は千代が好きだった本当の時継様では無いのだから真摯に話しても時間の無駄だ。
太陽を背にして着物を正し、気合を入れる。
この時のわらわはまだ知らなかった。
今日という日がいかに波乱の日になるのかを・・・。
婚礼用の着物に着替え紅を塗り、髪を整える。手鏡に映った自分は我ながら綺麗だった。これなら、時継様の隣にふさわしいだろう。
『千代、入っていいかしら?』
部屋の外で母上の声が聞こえた。
『はい、どうぞ・・・父上、母上。』
襖を開けて父上と母上と対面した。
『まあ・・・千代、とても綺麗だわ。ねぇあなた?』
『ああ、そうだな・・・こんなに立派に育って・・・。』
『父上、まだ泣くのは早いですよ。本番はこれからです。みんな無事に到着しなによりですわ。』
『それもそうだよな・・・いよいよか、なんだか寂しい気もするが・・・千代、幸せになるのだぞ。』
父上が優しく両手で私の手を包んだ。
『はい。父上、母上、今まで大切に育てていただき本当にありがとうございました。霧島家に嫁ぎ時継様の妻として恥ずかしくないようこれからも一生懸命精進致します。』
庭先を見渡すと神々しい程の眩しい光が降り注いでいた。雲一つない快晴はまさに今日という日にふさわしい。神様までもが私達を祝福している、そう思わずにはいられなかった。
父上、母上と別れてからわらわは時継様の元へと急いだ。
『時継様、千代です。失礼致します。』
この姿を見て欲しいというのもあったがそれと同時に正装をまとう時継様を見たかったのだ。
『ああ、千代か・・・綺麗だな。』
太陽の光に照らされた時継様はそれはもう美しかった。このお方の妻になれるなんて・・・わらわは幸せ者だなと思った。
時継様はあれから一切ゆきや秋道の事について触れて来なかった。毎日心ここに在らずという感じに見えた。しかし今日重要なのは大勢の目の前で時継様と千代が夫婦になったという事実を作る事。事実さえ作ってしまえば流石にもう時継様も後戻り出来ないだろう。気持ちなどは後からでよい、まずは今日一日を無事に終わらせるのだ。
『そんな・・・光栄すぎるお言葉・・・ありがとうございます。時継様、今日の祝言が無事に終わるよう精進致します。ではまた後で。』
深々とお辞儀をしてそそくさと部屋を出た。時継様は最後何か言いたそうではあったが知らないふりをした。嫌な予感がしたのだ・・・わらわが傷つく言葉の気配。長居は無用・・・今の時継様は千代が好きだった本当の時継様では無いのだから真摯に話しても時間の無駄だ。
太陽を背にして着物を正し、気合を入れる。
この時のわらわはまだ知らなかった。
今日という日がいかに波乱の日になるのかを・・・。
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