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62 【秋道視点】

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『ありがとう・・・ありがとう秋道さん。こんなに何にもわかってない私なのに大切に想ってくれて、いつも見守って助けてくれて。確かに秋道さんと一緒になったら楽しい日々が待っているし、皆だって応援してくれる。頭では分かってるよ。この道を選んだ方が色々楽だって事。秋道さんは私を大切にしてくれるって事。』

儚げな瞳をしているゆきを見て、これから返ってくる答えはおおよそ予測出来ていた。

『でも、でもね・・・例えば大きく自分が傷つく事、大きく誰かを傷つけてしまう事これからだってあるかもしれない。それでもその痛みを負う事より今この想いに正直に生きなかったら・・・これからどんな結末になったとしても絶対後悔する。秋道さんが今私に真剣に伝えてくれたように、私も時継様とちゃんと向き合いたい。足らない所は沢山あるし皆に祝福してもらう事は無理だと思う。だけど・・・私の中で今一番大きな存在で側にいたいと思うのはやっぱり時継様だなって。』

ああ、聞きたくはなかったなと思った。

でもその一方では自分の想いを伝えられてよかったなと思ったし、ゆきの想いを聞けてよかったとも思った。

『ゆき・・・それはもうどんな事があっても変わらないのか?』

わかっていてももう一度念を押してみてしまう。

『・・・・・』

黙って困っているゆきの姿を見た時やっと自分の中では一つ区切りが出来たのかもしれない。私はずっと気になって考えてきた事を聞いてみる事にした。

『いや、いい・・・そうか・・・・・ゆき、一つだけ、どうしても聞きたい事があって。』

『?』

『もしその・・・時継様よりも先に私が積極的にゆきに想いを伝えていたら・・・ゆきが私を好きになってくれた可能性は少しでもあっただろうか?』

あの時勇気を出して伝えていたらゆきとの世界線は変わっていたのだろうか?

『あの・・・秋道さんと関わって・・・男性として魅力を感じた事はありました。時継様を好きなのは自分だけの想いで成就する事なんて無いと思ってたので。だからあの時の私が同じように秋道さんに言われてたら・・・正直自分がどう回答してたかは・・・よくわかりません。』

えぐられるような胸の痛みはあった。そうだったのか・・・なんで早々に言わなかったんだろうという後悔が頭を巡った。だが少しは私の事も男性として見てくれていたという話は素直に嬉しかった。

『そうか・・・悔しい気持ちもあるが・・・それがゆきから聞けただけでも良かったな!』

さて・・・ゆきの気持ちを聞いたわけだから・・・これから先私がしなくてはいけない事は。

とにかくゆきを時継様に会わせてあげる事だろうな。

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